労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  札幌明啓院 
事件番号  平成26年道委不第6号 
申立人  全国福祉保育労働組合北海道地方本部札幌明啓院分会 
被申立人  社会福祉法人札幌明啓院 
命令年月日  平成27年6月26日 
命令区分  一救 
重要度   
事件概要   被申立人法人が①法人の経営する救護施設Aで日勤の生活相談員として勤務していた組合員X2(男性)がAの施設長Y2に対し、利用者Bから第三者機関への苦情申出に係るあっせんに応じてほしい旨などを手紙で訴えたところ、X2を平成26年4月1日付けで夜勤のある生活支援員に配置転換したこと、②男性の生活支援員の配置については、申立人組合との間で「現時点では増員計画、配置計画は流動的であり話し合い等により決めていく」などとした24年10月の団交確認書が存在しているところ、組合が上記配置転換に抗議し、団交を申し入れたのに対し、団交において譲歩することなく、配置転換を強行したこと、③組合と一切協議することなく、職員会議において、お盆時期の墓参り等の際に行われていた職務専念義務の免除を廃止するという発表を行ったり、理事会において就業規則改正の承認を得たという発表を行った上で、これらを交渉事項とする組合からの25年10月9日付けの団交申入れに対し、「団交については、文書で報告のとおりであり、これ以上の回答はない」旨記載した回答書を交付し、団交を拒否したこと、④組合との26年2月の団交確認書で約束した25年度中の、就業規則改正の理由等を明記した文書の提示並びに就業規則改正及び職務専念義務の免除の廃止についての協議日程の提示をしなかったこと、⑤26年3月から4月にかけて、慣例化していた法人施設内の集会室での団交開催に応じず、事業場外での開催に固執するとともに、組合の参加人数を制限したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 北海道労委は、1 上記③の書面を交付することによる組合への支配介入の禁止、2 上記④の文書及び協議日程の提示をしないことによる組合への支配介入の禁止、3 上記⑤の行為による団交拒否の禁止、4 文書掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人の平成25年10月9日付け団体交渉申入れに対して、「団体交渉については、文書で報告のとおりであり、これ以上の回答はない」旨の書面を交付することにより申立人に対する支配介入をしてはならない。
2 被申立人は、平成26年2月26日付け団体交渉確認書で確認した、平成25年度中に、就業規則改正の理由等を明記した文書の提示をせず、また、就業規則改正及び職務専念義務の免除の廃止についての協議日程を提示しなかったことにより、申立人に対する支配介入をしてはならない。
3 被申立人は、被申立人施設内の集会室を開催場所とすることを拒否し、また、申立人の参加人数を制限することにより、団体交渉を拒否してはならない。
4 被申立人は、次の内容の文書を、縦1メートル、横1.5メートルの白紙にかい書で明瞭に記載し、被申立人が経営する救護施設札幌明啓院正面玄関の見やすい場所に、本命令書写し交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。
記(省略)
5 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件配置転換が不利益取扱いの不当労働行為に当たるか否かについて
 組合員X2が被申立人法人の施設長Y2に手紙で訴えた行為は、X2の独自の行為であり、「労働組合の行為」には該当しない。
 申立人組合は、本件配置転換により、夜間及び深夜時間帯における勤務が発生することなどの不利益が生じる旨主張する。しかし、X2の採用時の雇用通知書には宿直勤務等の記載があり、同人はそれらについて従前から一定程度予測していたといえることなどからすれば、上記主張は採用することができない。
 一方、本件配置転換には業務上の必要性が認められる。また、その前後に行われた団交及び事務折衝において、X2がY2及び法人の他の出席者に対して追及したことは証拠上認められないことなどから、本件配置転換は報復的行為とはいえない。
 よって、本件配置転換は、X2が上記の手紙で訴えた行為以外の組合活動又は組合員であるが故になされたとは認められない。
 したがって、本件配置転換は、労組法7条1号の不当労働行為に該当しない。
2 本件配置転換が組合に対する支配介入行為に当たるか否かについて
 平成24年10月の団交確認書は労働協約であるが、組合と法人の間では「増員計画、配置計画」のとらえ方が異なっており、これまで労使間でその意味についての協議は行われていない。また、25年8月に男性の支援員が採用されたときには、組合と法人は上記確認書に基づく協議を行っていないし、組合は異議を出していない。よって、法人が本件配置転換は「増員計画、配置計画」に該当する事項ではないと解したとしても不合理ではない。
 さらに、本件配置転換が発表された後には団交が行われており、事前に協議をしなかったことが労使の交渉を軽視し、組合の立場を著しく不安定にすることによって、組合を弱体化する行為とまではいえない。
 したがって、本件配置転換は上記確認書に反するとまではいえず、労組法7条3号の不当労働行為に該当しない。
3 25年10月9日の団交申入れへの対応について
 法人は、組合に対し、団交については文書で報告のとおりであり、これ以上の回答はない旨記載した回答書を、組合が申し入れた団交の開催予定日(10月24日)に交付したが、このことについて、団交申入書に「文書をもってご回答ください」との記載があることから、そうしたに過ぎず、団交に応じる意思はあり、開催予定の日時には待機していた旨主張する。
 しかし、仮に法人が団交の開催予定場所で待機していたとしても、上記回答書を交付している以上、組合に対し、団交の開催を明示的に伝達する必要があったといえる。本件では、法人が上記の日に団交を行う旨明示した事実は認められない。
 以上のことから、法人の上記回答書の交付は、団交申入れに対して文書回答のみで終わらせようとした行為であり、団交主体としての組合をないがしろにするものであり、組合の団結権を否認する行為である。よって、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。
4 就業規則改正の理由等を明記した文書の提示等を25年度中にしなかったこと等について
 26年2月の団交確認書も労働協約であり、法人が上記文書の提示をしなかったことはこれに違反するものである。
 法人は、Y2が組合の執行委員長X1に対し、組合側からも改正事項について具体的に異議ある事項等を示すよう申し向けており、組合の回答を待っていたため、年度を越えてしまった旨主張する。
 しかし、組合の回答がないことを理由に上記団交確認書記載の提示を行わないことは、社会通念上、相当性を欠く対応である。また、組合としては、就業規則の改正理由の説明を求めることの必要性は大きく、法人からの回答が期限までになされない場合の不利益は多大なものである。
 よって、法人が就業規則改正の理由等の提示を上記団交確認書の期限までに行わなかったことは、組合の団結権を軽視する行為であり、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。
5 法人施設内の集会室での団交開催に応じなかったこと等について
 法人は、団交の開催場所として法人施設内の集会室(100名程度の収容が可能)を利用することを拒否する理由について、集会室は特養施設及び救護施設の利用者のための施設である旨や利用者・地域住民がいつでも使える状態にしておく必要がある旨を主張する。しかし、団交が行われる夜間については集会室の利用を特段制限する理由は認められず、また、地域住民の利用を受け入れる目的で集会室を常に空けておくために団交の開催場所とすることを一切認めないというのは、社会通念上、相当性を欠く対応である。
 一方、法人が26年3月及び4月に組合に交付した書面には、事業場外の施設である地区センター会議室(10名以上収容可能)を団交の開催場所として提案した上、組合側の参加者について7名を限度とするようお願いする旨の記載がある。このことから、法人には組合側の参加人数を制限する意思が推認できる。
 しかし、本件では、組合側の参加人数が10名以上であったことにより、何らかの問題が生じたといった事情は認められないし、12,3名という参加人数が適正、円滑な団交を困難にさせるほどの多人数であるとは考えにくい。したがって、法人が団交の参加人数の制限に固執したことに正当な理由は認められない。
 以上により、法人は正当な理由なく団交の開催条件に固執し、団交を拒否したものと認められるため、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成27年(不再)第32号 一部変更 平成28年8月3日
東京地裁平成28年(行ウ)第466号 棄却 平成29年12月13日
 
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