労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  兵庫県労委平成25年(不)第4号 
事件番号  兵庫県労委平成25年(不)第4号 
申立人  X労働組合、X1(個人)、X2(同)、X3(同) 
被申立人  Y株式会社 
命令年月日  平成27年4月23日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①組合員X2が定年退職後も倉敷営業所の業務係としての再雇用を希望していたにもかかわらず、内勤サポーター職として再雇用したこと、②組合員X1及び同X3に対し、それぞれ尼崎営業所、四日市営業所から倉敷営業所への転勤を命じたこと、その後、元の営業所への再転勤を命じるまでの間、上記転勤命令に従わなかった両人を欠勤扱いとし、賃金等を支払わなかったこと等は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 兵庫県労委は会社に対し、1 X1に対する、上記②の転勤命令から再転勤命令までの間の賃金相当額の支払、2 同人に対する平成25年夏季賞与の支払等を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人X1に対し、平成25年3月1日から同年7月16日までの間の賃金相当額から神戸地方裁判所における仮処分決定に基づく支払済額を控除した金額を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人X1に対し、平成25年夏季賞与として90,000円を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人X1に対し、平成25年3月1日から同年7月16日までの間に欠勤がなかったものとして算定した日数で、平成26年年次有給休暇を付与しなければならない。
4 その余の申立ては棄却する。 
判断の要旨  1 組合員X2を倉敷営業所の業務係として再雇用しなかったことについて
 被申立人会社が、再雇用後も引き続き業務係で勤務することを希望している労働者に対し、その労働者が労働組合の組合員であること又は労働組合の正当な行為をしたことの故をもって賃金が大幅に減額される内勤サポーター職に従事させる場合には、労組法7条1号の不利益取扱いに該当すると解すべきである。
 会社は、①X2がタンクローリーを大破させる重大な事故を引き起こしたにもかかわらず、会社の推進する安全推進策に反する態度を取ったこと、②上記事故について同人に重大な過失があるにもかかわらず、同人が会社からの求償に応じないこと、③会社は安全運転の推進を図るため、全従業員に誓約書の提出を指示しているが、同人は事故後も提出に応じなかったこと、④同人の健康状態に不安があること等からすると、同人との再雇用契約において業務内容を業務係としなかったことには合理性があると主張する。認定した事実によれば、かかる主張には一応の理由があるといえる。
 次に会社の不当労働行為意思に関しては、確かに会社と申立人組合との間では不当労働行為事件や裁判所での民事事件が多数争われており、労使関係は厳しい対立状況にあると認められる。しかし、かかる厳しい対立状況は、会社が経営状況の改善を目指し、運送会社として当然に必要とされる安全走行の実現等の社会的責任を果たすために諸施策を実施しようとしているところ、それが労働組合の方針と一致しないことに起因した部分も多く、これだけから会社の組合嫌悪の意図を認めることは適切ではない。会社がX2に誓約書の提出を求めたり、相当の金額を求償したりすることも、こうした経営施策の一環であり、上記のように一応の合理性が認められることからすると、会社の要請に応じなかった同人を業務係につけなかったことを組合嫌悪の意図によるものと認めることは妥当ではない。
 以上のとおり、会社がX2を内勤サポーター職として再雇用したことは、同人の組合活動を嫌悪してなされた不利益取扱いとは認められず、したがって、組合に対する支配介入があったものと認めることもできない。
2 組合員X1及び同X3に対する転勤命令について
 本件転勤命令については、X1及びX3が組合又は組合分会の役職として組合活動を行っていることから、当該組合活動への影響があるといえるので、不利益性が認められる。
 会社は、各営業所における人員数のバランスをとるため及び中四国地区の配送体制の増強についての親会社からの依頼に応じるため、四日市営業所及び尼崎営業所からそれぞれ1人ずつを倉敷営業所に転勤させる必要性があったと主張するところ、かかる会社の判断には一定の合理性が認められる。
 会社はまた、X1及びX3を転勤対象者としてことについて、「扶養手当を申請している者」、「配偶者と同居している者」、「病気療養中の者」を対象者から除外し、さらに、「既に転勤に応じている別組合組合員及び非組合員」を除外するという基準を適用した結果であると主張する。
 このような人選基準には一応の合理性はあるものの、X1についてみると、同人が組合活動の中心人物であり、倉敷営業所への転勤が組合活動に重大な影響を及ぼすことが容易に予想されるのであるから、会社は転勤対象者の人選をする上でこうした組合活動への影響に配慮すべきであったといえる。かかる配慮をしないままX1を転勤対象者とした以上、これは同人が労働組合の中心人物であるが故の不当労働行為意思をもって転勤させたと判断せざるを得ない。
 他方、X3については、同人が組合活動の中心であったと認めるに足る疎明はなく、したがって、会社が同人の組合活動を嫌悪して転勤対象者としたとまでは認めることができない。
 以上によれば、X1に対する本件転勤命令は、会社の不当労働行為意思によりなされたものといえるので、労組法7条1号の不利益取扱いに該当する。また、組合の組合活動の弱体化を図ったものということもできるので、同条3号の支配介入にも該当する。
3 X1及びX3に対する平成25年夏季賞与の減額等について
 前記2で判断したとおり、X1に対する本件転勤命令は不当労働行為に該当するのであるから、それを拒否した同人を欠勤扱いにして、平成25年夏季賞与の減額及び平成26年年休の日数の削減をすることも不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神戸地裁平成27年(行ウ)第39号 一部取消 平成28年12月15日
大阪高裁平成29年(行コ)第22号 一部取消 平成29年10月31日
最高裁平成30年(行ヒ)第105号 上告不受理 平成30年7月12日
 
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