概要情報
事件名 |
三軌工業 |
事件番号 |
滋労委平成25年(不)第2号 |
申立人 |
びわ湖ユニオン |
被申立人 |
三軌工業株式会社 |
命令年月日 |
平成26年12月15日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
申立外会社Aの社員であったブラジル人X2は、申立外会社Bが被申立人会社から請け負った工事に従事していたが、Bと会社との請負契約が解約されて当該工事に従事できなくなった後、Aを退職した。X2は退職に先立ち、申立人組合に加入し、組合は会社に対し、X2に係る直接雇用義務違反、同人に対する人種偏見に基づく発言への謝罪などを協議事項とする団交を申し入れた。組合と会社との間で協議事項等についてのやり取りが数か月にわたって行われた後、会社は団交に応じない旨回答した。X2は、会社に直接雇用の申入れ等を求めるあっせんを神奈川県労委に申請したが、両者が合意するに至らず、あっせんは打ち切られた。
本件は、会社が①上記の団交申入れを拒否したこと、②上記のあっせんにおいて、X2が組合に加入していることを理由に直接雇用の申込みを行うことに抵抗があるとの回答をしたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
同労委は、上記①に係る申立てのうちX2に対する人種偏見に基づく発言への謝罪等の事項に係るものを却下し、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 申立人が被申立人に平成24年2月12日付け、同年3月2日付け、同月29日付けおよび同年4月6日付けで申し入れた団体交渉について、次の団体交渉事項に係る申立てを却下する。
(1)「当組合員に対しての人種偏見に基づく発言への対応」
(2)「サンファミリー及び誠和の社員に対して貴社社長が説明会を開いた際に皆さんには発報事象の責任は無いと言っておきながら止めてもらいますと発言された録音に基づいて貴社の責任について追及をいたします」
2 その余の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 組合員X2に対する人種偏見に基づく発言への謝罪等に係る申立てについて
本件救済申立てのうち、被申立人会社の社長の発言の責任問題等を団交事項とする団交に係る部分については、申立期間を徒過したものであり、却下するのが相当である。
2 会社が団交申入れに応じなかったことについて
(1)X2と会社との間に黙示の労働契約が成立していたか
X2と会社との間で明示の労働契約は締結されていないが、申立人組合は、黙示の労働契約が成立していることを理由として、会社は本件団交申入れにおける団交事項に関し、労組法7条の「使用者」に当たると主張する。
しかし、認定した事実によれば、会社がX2に対し、作業上の指揮命令のみならず、採用、配置、懲戒及び解雇等の人事管理を行っており、あるいは同人の賃金が会社によって事実上決定されているといった特段の事情は認められないことから、同人と会社との間に黙示の労働契約が成立していたものと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠もない。
(2)会社はX2の基本的な労働条件等について雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているか
本件団交申入れの団交事項は会社におけるX2の雇用を確保することを本旨とするものであるから、会社が「使用者」に当たるといえるためには、会社が就労に関する諸条件にととまらず、同人の雇用そのもの、すなわち採用、配置、雇用の終了等の一連の雇用管理に関する決定について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有している必要があると解される。しかし、本件についてみると、会社がX2に対し、これら一連の雇用管理に関する決定について雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な関与等をしたことを認めるに足りる証拠はない。
(3)結論
以上のとおりであるから、本件団交申入れにおける団交事項に関し、会社は「使用者」には当たらない。したがって、本件団交申入れを会社が拒否したことに対して救済を求める申立ては、その余の点を判断するまでもなく、理由がない。
3 あっせんにおいて、X2の組合加入を理由に同人の直接雇用の求めに応じなかったことについて
企業者は労働者の雇入れを自由に決定できることから、原則として労働者の直接雇用の申入れに関し、労組法7条1号の不利益取扱いを認める余地はないが、従前ないし将来において、企業者が労働者の労働契約上の雇用主ないしは前記2で述べた雇用主と同視すべき者と認められる事情がある場合には、不利益取扱いを論じる余地がある。
しかし、前記2の場合と同様の理由により、本件不利益取扱いに関しても、会社は「使用者」には当たらない。よって、本件不利益取扱いに対する救済を求める申立ては、その余の点を判断するまでもなく、理由がない。 |
掲載文献 |
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