概要情報
事件名 |
東海旅客鉄道 |
事件番号 |
静労委平成25年(不)第1号 |
申立人 |
ジェイアール東海労働組合、同静岡地方本部 |
被申立人 |
東海旅客鉄道株式会社 |
命令年月日 |
平成26年8月28日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が、静岡支社管内の4運輸区に設置されている申立人組合(地方本部)の掲示板に掲出された掲示物4枚を撤去したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
静岡県労委は会社に対し、文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人が、静岡支社管内の沼津、冨士、静岡及び浜松の各運輸区に設置されているジェイアール東海労働組合静岡地方本部の掲示板に掲出された別紙内容の掲示物計4枚を平成25年2月12日から翌日にかけて撤去したことは、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当することを確認する。
2 被申立人は、申立人らに対し、それぞれ下記内容の文書を速やかに手交しなければならない。
記(省略)
3 申立人らのその余の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件掲示物には、非公開である苦情処理会議において知り得た秘密が記載されているか。
認定した事実によれば、平成24年12月、申立人組合(地方本部)と被申立人会社静岡支社との間で、組合の執行委員長X2の年末手当の減額を議題として苦情処理会議が開催され、会社から当該年末手当の減額の理由が説明された。組合は、25年2月、その減額の理由を記載した掲示物を組合掲示板に掲出した。
組合と会社との間で締結された基本協約の第292条には、苦情処理会議の委員及び関係者は苦情処理に関して知り得た秘密を漏らしてはならない旨が規定されている。本件苦情処理会議で会社から説明された減額の理由は個別の社員の評価や査定項目にかかわる会社の人事情報であることは明らかである。このような会社の人事情報を公開するか非公開とするかは会社の経営方針にかかわる任意の事項であるところ、本件掲示物には、少なくとも会社が非公開としている人事情報が記載されていると認められることから、その記載内容が上記協約の規定にいう秘密でないとまではいえない。
2 本件掲示物は、会社の信用を傷つけ、又は職場規律を乱すといえるか。
本件協約には、組合の掲示物に関し、「掲示類は、会社の信用を傷つけ、政治活動を目的とし、個人を誹謗し、事実に反し、または職場規律を乱すものであってはならない」こと(第228条)及び「会社は、組合が前2条の規定に違反した場合は、掲示類を撤去し、掲示場所の使用の許可を取り消すことができる」こと(第229条)が規定されている。
会社は、会社が組合にのみ上記規定に違反する掲示物の掲出を認めるという差別取扱いをしたとして他の労働組合から誤認され、会社に対する信用が大きく傷つけられる事態も想定される旨主張する。しかし、この主張は、本件掲示物を撤去せずに放置するという会社の行為が信用を傷つけるという主張であって、本件協約第228条で規定している撤去要件に該当するという主張であるとは解されない。
また、本件掲示物の記載内容中、会社が減率適用事由として説明した非違行為については、社員に対して事前に業務用掲示などにより公にされているから、その一部が具体的に明らかにされたとしても、社員には当然のこととして受け止められると解することが相当であり、直ちに職場規律の乱れが生じるとは考えられない。
3 本件掲示物は、撤去の必要性があったか。
前記2で述べたとおり、本件掲示物は会社の信用を傷つけ、職場の規律を乱すものではなく、その他、本件協約第228条に規定する撤去要件に該当する事実も認められないから、会社に同第229条に基づき撤去すべき必要性は何ら認められない。
4 本件掲示物の撤去方法は、相当であったか。
本件掲示物の撤去に際し、その理由の説明が不十分であること、また、自主的撤去の猶予を与えたともいえないことから、会社は本件掲示物を労使関係上の配慮を尽くすことなく、一方的に撤去したものであって、その撤去方法は相当な手続・手順を踏んでいたとは認められない。
5 結論
以上のとおり、本件掲示物の記載内容は本件協約第228条に違反せず、同第229条を根拠として会社がこれを撤去したことはその要件を欠くものである。また、撤去の必要性はなく、撤去方法も相当性を欠くものである。なお、このような本件掲示物の撤去については、会社の不当労働行為意思を容易に推認し得るものである。
したがって、会社が本件掲示物を撤去したことは、組合の組合活動に対する不当な干渉であると認められ、労組法7条3号の支配介入に当たるものと判断する。 |
掲載文献 |
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