労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  静岡地裁平成26年(行ウ)第22号
東海旅客鉄道不当労働行為救済命令取消請求事件 
原告  X株式会社(「会社」)  
被告  静岡県(同代表者兼処分行政庁・静岡県労働委員会)  
被告補助参加人  z1労働組合(「z1」)
z1労働組合静岡地方本部(「z2」)(「z1」と併せて「組合」ら)  
判決年月日  平成28年1月28日 
判決区分  全部取消 
重要度   
事件概要  1 会社が、静岡支社管内の4運輸区に設置されているz2の掲示板に掲出された掲示物4枚を撤去したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 静岡県労委は会社に対し、文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
3 これを不服として、会社が、静岡地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、静岡県労委の救済命令を取り消した。 
判決主文  1 静岡県労働委員会が、静労委平成25年(不)第1号事件について、平成26年9月9日付けでした命令のうち、別紙1記載の主文第1項及び第2項を取り消す。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用は補助参加人らの負担とし、その余の費用は被告の負担とする。<  
判決の要旨  第3 当裁判所の判断
1 判断枠組み(本件撤去要件に関する一般論)について
(2)ア 掲示物が本件撤去要件に該当するかを判断するに当たっては、本件撤去要件に該当するかにつき、一般常識や社会通念に従って本件撤去要件の文言の一般的意味に即して判断すべきである。もっとも、本件各掲示板の利用は、組合らの組合活動のために必要な宣伝、報道、告知を行うことを目的として、本件基本協約が締結されているのであるから、本件撤去要件の文言を形式的、表面的に当てはめて判断することは相当とはいえない。なぜなら、組合活動に必要な情報伝達や主張の宣伝を含む掲示物には、使用者側に比べて取得する情報量が相対的に劣る組合が使用者の方策や対応等について言及する場合には、組合側の不正確な知識や誤解等により、記載されている事柄が厳密に見ると客観的事実に符合しないことや、自己の主張を強調し、使用者の方策や組合員への対応を批判するために、事実の一部について誇張、誇大とみられる表現等が用いられることもあるが、組合活動としての掲示物の掲示という事柄の性質上、そうしたことも一定程度想定されているところであり、そうである以上、本件撤去要件該当性の判断に当たっては、当該掲示物が全体として何を伝えようとし、何を訴えようとしているかを中心として、本件撤去要件該当性を実質的に充足するかどうかを考慮すべきであり、掲示物の記載を表層的に捉えて、細部若しくは個々の記述又は表現のみを取り上げ、あるいは本件撤去要件に該当する箇所の分量だけから、当該掲示物全体の本件撤去要件該当性を判断すべきものではないと解されるからである。
イ そうすると、「会社の信用を傷つけ、政治活動を目的とし、個人を誹謗し、事実に反し、または職場規律を乱す」という各要件については、一般常識や社会通念に従い、文言の一般的意味に即して実質的に判断した場合に、掲示物の記載内容が本件撤去要件に該当すると判断されるときは、当該掲示物を掲示することが正当な組合活動のために掲示板を使用する場合に当たらないものとして、本件撤去要件に該当するものと解すべきであり、したがって、会社がこれを撤去することは、原則として労組法7条3号所定の支配介入の不当労働行為には当たらないものと解すべきである。しかし、掲示物の記載内容の一部が形式的に本件撤去要件に該当するようにみえる場合であっても、当該掲示物の掲示が組合らの正当な組合活動として許容される範囲を逸脱し、会社の運営等を妨害し、あるいは個人の名誉を著しく毀損するなどしたかについて、その内容、程度、記載内容の真実性、真実でなかった場合に真実と信じるについて正当な理由(誤信相当性)があったか等の事情が総合的に検討されるべきであり、その結果、当該掲示物が全体として正当な組合活動として許される範囲を逸脱していないと認めるに足りる客観的事情が立証された場合には、実質的に本件撤去要件に該当しないものというべきであるから、会社に自己が掲示物を撤去することの認識がある限り、特段の事情のない限り、反組合的行為の意思が推認され、支配介入の不当労働行為に該当することになると解するのが相当である。
ウ なお、上記のとおり、本件基本協約が組合掲示板における掲示物について本件撤去要件を定めた趣旨は、会社は組合らの組合活動のために掲示板の使用を許可するが、掲示物が本件撤去要件に該当する場合には、当該掲示物を掲示することが正当な組合活動のために掲示板を使用する場合に当たらないことから、掲示板の使用を許さず、掲示物を撤去することができることを明示したものと解される。とするならば、本件撤去要件に該当する場合は、正当な組合活動のために掲示板を使用するものではないから、会社は、原則として直ちに掲示物を撤去することができるというべきであり、撤去方法の相当性及び撤去の必要性が個別の考慮要素となるものではないと解される。
2 本件掲示物の撤去は、不当労働行為に該当するか。
(1) [苦情処理会議に関する想定]291条、292条に該当すれば、直ちに本件撤去要件を満たすかについて
ア 291条、292条の該当性について
  前提事実のとおり、本件掲示物には、本件会議において会社が説明した年末手当の減率適用事由が記載されており、それは、会社が経営方針上非公開としている人事情報に当たるものであったことは争いがないところ、この点について、会社は、組合らは従前から苦情処理会議の内容を公開してはならないことを認識し、その認識を改めた事実もないことから、291条、292条に違反することを承知の上で秘密とされる人事情報を意図的に暴露したと主張しており、被告も、苦情処理会議に関して知り得た内容が少なくとも実質的に秘密に該当する場合は292条に基づき事後においても公開してはならず、本件掲示物の記載内容が同条の秘密でないとまではいうことができないと主張している(なお、組合らは、この点について、本件掲示物は292条の秘密に当たらない旨の主張をするが、当該主張は、被告の上記主張に反することから、失当である。)。したがって、本件においては、本件掲示物に記載された上記人事情報が292条の秘密でないといえず、同条に抵触することは、当事者間に争いがないことになる。
イ 上記のとおり、本件掲示物は、292条に抵触するものであるところ、会社は、本件掲示物が291条、292条に違反することをもって、会社の信用を傷つけ、職場規律を乱すものとして本件撤去要件に該当すると主張する。そこで、以下において、上記各条項に違反すれば、直ちに本件撤去要件を満たすかについて検討することとする。
  前提事実のとおり、苦情処理会議制度は、組合員が労働協約及び就業規則等の適用及び解釈について苦情を有する場合にそれについての解決を図るための制度であり、291条は、「会議は原則として非公開とする。」と定め、292条は、「会議の委員及び関係者は、苦情処理に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。」と定めているところ、それらの趣旨は、会議において、苦情を申告した者のプライバシーや人事上秘匿すべき事項が明らかになる可能性があること、また、委員や関係者がプライバシーや人事上秘匿すべき事項が明らかになることをおそれて自由に発言ができなくなり、苦情処理に支障が生ずるおそれがあること等から、会議を原則として非公開とし、苦情処理に関して知り得た秘密の漏えいを禁止しているものと解される。他方、[掲示物の掲示等に関する規定]228、229条が本件撤去要件を定めた趣旨は、上記のとおり、掲示物が本件撤去要件に該当する場合には、当該掲示物を掲示することが正当な組合活動のために掲示板を使用する場合に当たらないことから、掲示板の使用を許さず、掲示物を撤去することができることを明らかにするものと解される。以上によれば、291条、292条と228条、229条とは、それぞれ異なる趣旨に基づいて規定されたものということができ、各要件の充足性について判断するに際しては、それぞれの趣旨に基づきそれぞれの観点から検討が加えられるべきである。したがって、291条、292条に違反した事実が認められる場合であっても、それを理由に直ちに本件撤去要件を満たすということはできず、当該掲示物の本件撤去要件該当性について改めて検討すべきであると解される。そこで、以下において、本件掲示物の本件撤去要件該当性について検討する。
(4) 本件掲示物が「職場規律を乱す」ものといえるかについて
ア(ア) 上記(3)において検討したとおり、本件掲示物は、全体として、z2が、組合員が受けた年末手当の減率適用事由について不当なものであると訴え、当該組合員が本件専任社員制度において差別的取扱いを受けることを危惧し、更にこのような理不尽な取扱いが他の社員にも適用されるのではないかと危惧し、組合活動の一環としてこれに抗議するとともに今後も闘っていく決意を示すものであると認められる。
(イ) そこで、次に、本件掲示物が「職場規律を乱す」との本件撤去要件を充足するか否かについて検討するに、上記認定事実のとおり、本件掲示物には、「早着は重大な事故なのか??」、「再教育時間はボーナスカット理由になるのか!?」との見出しの下、ある組合員の主張として、「45秒早発させてしまった事象について『区分運転時分を確認しないまま運転を行い、1分の早着事故を発生させている』と、早発の事実以前の時系列をとりあけて事故だとカット理由にしている。」、「この早発での日勤教育8日間と、徐行の抜粋失念での教育2時間を、『注意指導を何度でも受けている』というカット理由の内容にしている。」との記載があるところ、本件各掲示板は、いずれも更衣室やトイレ等の付近に設置されており、社員等会社関係者以外の者が容易に閲覧できるような位置にはなかったことが認められる。したがって、本件掲示物の読者としては、組合らの組合員のほか、社員等会社関係者が想定されるところ、本件掲示物を読んだ者は、本件会議での会社の説明内容を知り得ない以上、会社が、早発の事実以前に1分の早着事故を発生させたことや早発及び徐行の抜粋失念により教育を受け注意指導を何度も受けたことを年末手当の減率適用事由としたと認識するものと解される。そして、このように、社員に対する具体的な減率適用事由が公開された場合、管理者としては、その後、社員との関係を悪化させたくないと考え、あるいは、社員から反発を受けることをおそれ、社員に対する指導や会社に対する報告等を躊躇するなど、管理者と社員との間で軋轢や不都合等が生じ、その信頼関係に影響を与えることは通常生じ得ることであり、それは、会社においても異ならないと解される。なお、本件撤去要件は、その文言から明らかなとおり、「職場規律を乱す」ものといえるか否かを問題とするものであって、当該掲示物によって現実に職場規律を乱したことまでの立証を要するものではないと解される(この点、甲12、乙82、93及び弁論の全趣旨によれば、本件掲示物によって、複数の管理者が何らかの心理的抵抗を感じたことがうかがわれる。)。
(ウ) また、苦情処理会議において開示された減率適用事由や同会議において話題に上った事柄が公開された場合、委員や関係者としては、その後、自由に発言することを控えるなどし、その結果、苦情処理に支障が生ずる可能性があり、労働協約等の適用及び解釈についての苦情については苦情処理会議制度で解決するという会社内における規律を乱すものといえる。なお、確かに、上記認定事実のとおり、本件掲示物において減率適用事由として取り上げられた早着の事実と再教育の事実は、会社が実際に適用した減率適用事由ではなかったことが認められ、その点において、本件掲示物は正確性を欠くものであったというべきである。しかしながら、本件掲示物には、会社が本件会議で減率適用事由として説明した、列車を45秒早発させた事象及び徐行箇所の抜粋を失念した事象が記載され、更に本件会議で同時に話題に上った早着や再教育等の事実も記載されていたのであるから、やはり、委員や関係者としては、自由に発言することを控えるなどし、萎縮効果を与える可能性があるといえる。したがって、本件掲示物に不正確な記載があることによって上記判断は左右されない。
(エ) 以上によるならば、本件掲示物は、職場規律を乱すものといえ、本件撤去要件に該当するというべきである。
イ(ア) 以上に対し、被告及び組合らは、減率適用事由は、公平・公正で、客観性・普遍性を有すべきものであり、公表されても支障は生じない、また、期末手当の減額が管理者による報告をもとになされることは周知の事実であるから、具体的な減率適用事由が明らかにされたとしても、軋轢等が発生するものではないと主張する。しかしながら、上記認定事実のとおり、会社は、291条、292条によって秘密性が担保されている苦情処理会議においてのみ、苦情申告のあった社員ごとに個別に減率適用事由を開示し、具体的な減率適用事由については、当該社員に対しても、管理者に対しても、明らかにしていなかったこと、また、会社は、勤務成績の評価及びその査定方法等を社員一般に開示していなかったことが認められ、これらの事実によるならば、職場において、社員に関する具体的な減率適用事由が明らかにされた場合に、上記のとおりの軋轢や不都合等が生じることを否定することはできないと解される。
(イ) また、被告及び組合らは、減率適用事由については、社員に対しては事前に業務用掲示などにより公にされており、期末手当は本件賃金規程145条で勤務成績により増減すると記載され、勤務成績が勤務実績、勤務態度等を総合的に勘案して行われることも周知の事実であると主張する。この点、確かに、上記認定事実のとおり、A1が列車を45秒早発させた事象は業務用掲示に「事故速報」等として掲示され、8日間の日勤教育を受けることは乗務員の勤務予定の確認表に記載され、徐行抜粋失念の場合に2時間の教育を受けることは事前に職場の業務用掲示に掲示されていたことが認められる。しかしながら、業務用掲示は、事故の再発防止及び注意喚起を目的としたものであり、当該事実が減率適用事由の対象となる非違行為として認定されたか否かを明らかにするものではなく、その他45秒の早発の事実及び徐行抜粋失念の事実が具体的な減率適用事由として公にされていたことを認めるに足りる証拠はない(前提事実、上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、A1自身も減率適用事由を明らかにしてほしいとして苦情申告をしたこと、組合らは、本件掲示物の目的として、本件会議で明らかにされた具体的な減率適用事由の周知や宣伝があることを自認していることが認められ、それらは、具体的な減率適用事由が一般に周知されていないことの証左であるともいい得る。)。
  また、確かに、本件賃金規程145条には、被告の指摘する記載があり、勤務成績が勤務実績、勤務態度等を総合的に勘案して行われることは、一般に知られた事実であるといえる。しかしながら、上記のとおり、会社は、291条、292条によって秘密性が担保されている苦情処理会議においてのみ、苦情申告のあった社員ごとに個別に減率適用事由を開示し、具体的な減率適用事由については、当該社員に対しても、管理者に対しても、明らかにせず、勤務成績の評価及びその査定方法等を社員一般に開示していなかったのであるから、職場において、社員に関する具体的な減率適用事由が明らかにされた場合に、上記のとおりの軋轢や不都合等が生じることを否定することはできないと解される。
(ウ) 以上によるならば、この点に関する被告及び組合らの主張を採用することはできない。
ウ(ア) そこで、次に、本件掲示物が組合らの正当な組合活動として許容される範囲を逸脱していないと認めるに足りる客観的事情があるか否か、すなわち、会社の運営等を妨害したかについて、その内容、程度等の事情を総合的に検討することとする。
 この点、確かに、本件掲示物には、会社が本件会議で説明した減率適用事由との関係で厳密に見れば、正確性を欠く部分があることが認められる。すなわち、上記認定事実のとおり、本件掲示物において、不当性を訴える減率適用事由として記載されているのは、会社が本件会議で説明した減率適用事由ではなくその周辺の事象として話題に上った早着と再教育時間である。しかしながら、一方で、本件掲示物には、会社が本件会議で説明した減率適用事由である列車を45秒早発させた事象及び徐行箇所の抜粋を失念した事象も記載されており、本件掲示物の読者としては、本件会議での会社の説明内容を知り得ない以上、会社が、早着を原因とする早発、早発及び徐行抜粋失念による教育を減率適用事由としたと捉え、早発以前の事象である早着を、また、早発及び徐行抜粋失念による教育をことさら減率適用事由としたことの不当性を訴えるものとして認識するものと解される。そして、上記検討結果のとおり、このような具体的な減率適用事由の公開は、社員と管理者との関係に軋轢等を与える点において、また、苦情処理会議制度の運用に支障を与える点において、「職場規律を乱す」要因となり、会社の運営等(職場規律)を妨害するものである(なお、上記のとおり、292条違反をもって直ちに本件撤去要件を満たすことにはならないが、本件掲示物に記載された減率適用事由及びその周辺事象は、292条において漏えいを禁止される、苦情処理会議において知り得る秘密のうち、付随的部分ということはできず、核心的部分に当たるというべきである。)。
  以上によるならば、本件掲示物に、会社が秘密と主張し、公開されると職場規律を乱すと主張する減率適用事由となる非違行為が記載されていないということはできず、この点に関する被告及び組合らの主張を採用することはできない。
(ウ) 次に、本件掲示物が会社の運営等(職場規律)に与える影響の内容及び程度について検討するに、上記認定事実のとおり、会社は、これまで、291条、292条によって秘密性が担保されている苦情処理会議においてのみ、苦情申告のあった社員ごとに個別に減率適用事由を開示することにより、苦情処理会議制度を運用し、職場規律を維持してきたものであるところ、本件掲示物によって具体的な減率適用事由が明らかとなれば、上記検討結果のとおり、管理者と社員との間で軋轢や不都合等が生じ、その信頼関係に影響を与え、また、苦情処理会議制度の運用に支障を与え、その結果、会社の運営等(職場規律)に及ぼす影響が小さいということはできない。
(エ)a 加えて、本件におけるその他の事情について検討するに、被告及び組合らは、会社が、本件専任社員制度の運用において、組合らの組合員に対して差別的・恣意的な運用を行っている旨主張するが、本件全証拠を総合しても、会社が、本件専任社員制度の運用において、組合らの組合員に対して差別的、 恣意的な運用を行っているとの事実を認めることは困難である。
 b また、被告及び組合らは、裁判の結果を待っていたのでは手遅れになり、直ちに異議を述べる必要があったとも主張するが、290条によれば、苦情処理会議の地方会議において不服がある場合は、更に中央会議に不服申立てをすることができるところ、本件全証拠を総合しても、組合らがその手続をとることができなかったことや裁判を起こすことでは目的を達することができなかったこと等を裏付けるに足りる事実を認めることはできない。
 c さらに、本件においては、上記認定事実のとおり、本件会議終了後、会社の静岡支社の人事課長代理は、z2の教宣部長に対し、291条、292条を遵守し、本件会議の内容を掲示物等により公開しないように通告したこと、組合らは、上記通告にもかかわらず、本件掲示物を掲示するに至ったとの経緯が認められる。
(オ) 以上のとおり、本件掲示物の記載内容、会社の職場規律に与える影響及び程度、その他の各事情についての検討結果を総合するならば、年末手当の減率適用事由の不当性を訴えることが組合活動の目的として正当なものであるとしても、組合らが具体的な減率適用事由及びその周辺事象を本件掲示物に記載して掲示したことは、正当な組合活動であったということはできず、他に本件掲示物の掲示が組合らの正当な組合活動として許容される範囲を逸脱していないと認めるに足りる客観的事情を裏付けるに足りる証拠は見当たらない。とするならば、本件掲示物が全体として正当な組合活動として許される範囲を逸脱していないと認めるに足りる客観的事情の立証がされたということはできず、本件掲示物は、実質的に本件撤去要件に該当しないということはできない。
エ 以上の検討結果によるならば、本件掲示物は、本件撤去要件に該当するといえ、組合らの本件掲示物を掲示する行為は正当な組合活動ということはできないから、会社がこれを撤去することは、労組法7条3号にいう支配介入には当たらず、不当労働行為には当たらないというべきである。  
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
静労委平成25年(不)第1号 一部救済 平成26年8月28日
東京高裁平成28年(行コ)第88号 原判決取消 平成29年3月9日
最高裁平成29年(行ヒ)第253号 上告不受理 平成29年9月12日
 
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