労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  東急バス(19~23年度) 
事件番号  中労委平成25年(不再)第18、20号 
再審査申立人  東急バス株式会社(「会社」) 
再審査申立人  全労協全国一般東京労働組合(「組合」) 、X1~X12(個人)
再審査被申立人  全労協全国一般東京労働組合(「組合」) 、X1~X12(個人)
再審査被申立人  東急バス株式会社(「会社」) 
命令年月日  平成26年7月16日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、組合員12名に残業扱いとなる乗務(以下「増 務」 という。)を割り当てるに当たり、他の乗務員に比べ差別的な取扱いを行ったことが、 労組法第7条第1号、第3号の不当労働行為に当たると して、 救済申立てが行われた事案である。
2 初審の東京都労委は、 組合員12名中11名に対して行われた会社による増務割当てについて、不当労働行為であったと認め、会社に対し、増務割当て差別の禁止、組合員11名に対するバックペイ、 文書交付及び同掲示等を命じたが、 残りの組合員1名に対する増務割当てについては不当労働行為に当たるとは認めず、 また、 1年間の申立期間を徒過した救済申立てについては却下する等したところ、 会社及び組合が、 それぞれ再審査を申し立てたものである。  
命令主文  初審命令の主文の一部(救済期間、救済金額)を変更し、組合員11 名に対する不利益分の支払を命じるほかは、 その余の各再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件救済申立てから1年遡った日から前の期間に係る増務割当て 差別は労組法第27条第2項の除斥期間に抵触するか。
 本件救済申立ては、20年12月15日に行われていることから、19年12月25日が残業手当の支給日となる同年11月分 の増務割当てについては、 労組法第27条第2項の定める申立期間内に申立てがなされたものとして、 適法というべきであるが、 同年10月分以前の増務割当てについては、同項の期間外に申し立てられた不適法な申立てである。
 したがって、本件救済申立てのうち、19年7月から同年10月までの増務割当て(支給月が同年8月から同年11月までのも の)に係る申立てについては、却下する。
2 会社が、増務の割当てにおいて、組合員12名を他の乗務員と差別して取り扱い、それにより組合員を不利益に取り扱った か、また、組合に対して支配介入したか。
(1) 不利益取扱いについて
 組合員11名は、所属する営業所の各平均残業時間を超えるような残業を実施したことがなく(うち1名の1か月を除く)、残 業実績値の平均時間が、いずれも上記各平均残業時間を大きく下回っていたこと、こうした状況は、一部組合員が営業所を異動し ても変わることはなかったこと、会社が、20年3月以降、一部組合員に割り当てるようになった休日出勤も、その時間は平均値 を下回るものにとどまっており、平日増務に至っては、限られた者だけが、わずかな回数、短時間の割当てを受けて実施していた にすぎなかったことが認められ、組合員には、4年3か月間という長期にわたり、常態的に他の乗務員に比して短時間の増務しか 割り当てられていなかったという実態があった。 会社と組合の間には、第1事件、第2事件という本件同様の増務割当て差別に係る争訟が存在する状態であったのに、会社は、このような問題のある状態で構わないと考えたか、 少なくとも、問題解決に向けた措置を講じようとはせず、むしろ、問題を放置する態度をとり続けていたという背景事情が存在し ていた。
 
 以上からすれば、 本件審査対象期間において、会社が、組合員であるが故に、 組合員11名に対する増務割当て差別を行い、不利益に取り扱ったこと、すなわち、会社による不当労働行為が行われたものと認めるのが相当である。
(2) 支配介入について
 会社が、残業を拒否しておらず、むしろ、残業の割当てを強く求めていた組合員12名のうち、その大半の11名について、組 合員であるが故に増務割当てについて差別し、経済的な不利益を与えた行為は、会社が、組合の弱体化を図ったものであるという べきであるから、支配介入に当たると認めるのが相当である。 特に、 本件は、 本件同様の増務割当て差別が問題となった第1事件及び第2事件の争訟の過程において、労働委員会及び裁判所により、会社は、増務の割当てを差別する不当労働行為を行ってい る旨の判断が示されていたにもかかわらず、会社として、同判断に沿って、これまでの対応を改める意思がなく、適切な対応を取 るつもりもないとの姿勢を鮮明にしつつ行われた事案であったから、本件において会社に組合弱体化の意図があったことは明らか であるといわざるを得ない。
(3) A営業所の組合員A1について
 A営業所の救済申立て組合員A1(以下「A1組合員」 という。)については、20年から23年までにおける残業実績値の平均時間が、同営業所の平均残業時間を下回っているものの、そこに著しいといえるほどの差があるとはいい 難い。 増務 (休日出勤)の割当て状況から、A1組合員に対する差別的取扱いがあったといえるほどの状況も見出し難く、証拠上、会社に同組合員を差別的に取り扱う意図があったと認定す ることもできないのであるから、A1組合員に対し、会社による増務割当て差別の不当労働行為があったと認定することは困難で ある。
3 増務の割当てに関して不当労働行為が成立する場合、 いかなる救済方法が相当か。
 会社は、 初審命令主文1項(「増務を割り当てるに当たって、組合員に対して、他の乗務員と差別して取り扱ってはならない。」 旨)につき、「いかなる措置を講じれば差別的な取扱いにならないかが不明確であるから違法である。」旨主張するが、 会社による不当労働行為が再び繰り返されるおそれがある場合には、労働委員会が、 将来の不当労働行為を予防するという観点から、命令の内容をどの程度具体化するかについては、その裁量に委ねられているというべきである。本件は、会社が、長期間にわた り、組合員にあえて平均値を大きく下回る程度の増務の割当てを続けていたという事案であり、初審命令の主文と理由を併せて読 めば、会社にとって、このような差別的な取扱いを禁止する内容の命令が理解困難なものであるとは考え難い上、会社が、営業所 において差別的な増務の割当てがなされていないかどうかを調査し、その割当ての調整を図ることは可能であると考えられること などからも、上記主文1項を履行することは可能であると考えられる。
 当委員会も、初審と同様に、営業所の平均残業時間と当該組合員の残業実績値との差を不利益分とする考え方については、 妥当であると考える。 ただ初審は、組合調査に基づくB営業所の3か月分の平均残業時間を、各営業所の50か月間の平均残業時間とみなし、これに基づき不利益分を算定しているが、当委員会におけ る証拠調べの結果、各年につき、営業所ごとに全乗務員での平均残業時間が個別具体的に判明しているので、当委員会において は、営業所ごとの各年の平均残業時間の数値に基づいて不利益分を算出することとする。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成20年(不)第89号 一部救済 平成25年2月19日
東京地裁平成26年(行ウ)第441号 棄却 平成28年12月21日
東京高裁平成29年(行コ)第20号 棄却 平成29年9月20日
最高裁平成30年(行ヒ)第17号 上告不受理 平成30年4月24日
 
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