概要情報
事件名 |
ソクハイ |
事件番号 |
都労委平成22年不第22号・第116号、同平成23年不第98号 |
申立人 |
連合ユニオン東京ソクハイユニオン |
被申立人 |
株式会社ソクハイ |
命令年月日 |
平成26年3月4日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
①団交における被申立人会社の対応、及び会社が②メッセンジャー(自転車による即配便業務に従事する会社の配送員)として就労していた組合員X2に対し、業務委託契約を解除したこと、③同じくメッセンジャーとして就労していた組合員X1及び同X3との業務委託契約を不更新としたこと、④営業所に防犯監視カメラを設置したことが不当労働行為に当たるか否かが争われた事案である。
東京都労委は会社に対し、1 団交への誠実な対応、2 上記②の業務委託契約に係る解約予告通知をなかったものとして取り扱うこと等、3 文書の交付・掲示、4 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人株式会社ソクハイは、申立人連合ユニオン東京ソクハイユニオンが、組合員と会社との業務委託契約の解除や不更新その他組合員の待遇に関わる事項について団体交渉を申し入れたときは、契約解除や不更新の理由を説明するなどして、誠実に対応しなければならない。
2 被申立人会社は、申立人組合の組合員X2との業務委託契約について、同人に対する22年10月4日付解約予告通知をなかったものとして扱い、同人が22年11月6日から23年8月31日まで稼働したものとし、この間に同人が受けるはずであった報酬相当額を支払わなければならない。
3 被申立人会社は、本命令書受領後1週間以内に、下記書面を申立人組合に交付するとともに、同一内容の書面を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
記(省略)
4 被申立人会社は、第2項及び前項を履行したときは、当委員会に速やかに文書で報告しなければならない。
5 その余の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 メッセンジャーの労組法上の労働者性について
本件申立て時において申立人組合と被申立人会社との間ではメッセンジャーが労組法上の労働者に当たるか否かが争われていたが、メッセンジャーは労組法上の労働者に当たるとの東京地裁判決が確定し、これを受けて会社はメッセンジャーが労組法上の労働者に当たることについては争わないと明言した。以下では、メッセンジャーが労組法上の労働者に当たることを前提に、不当労働行為の存否について検討する。
2 団交における対応について
認定した事実によれば、会社は平成22年2月25日に行われた団交において、メッセンジャーである組合員X4らに対する運送請負契約の解約の理由について説明は必要ないとの会社の方針を繰り返すのみで、組合の訴えには耳を傾けようとせず、人員の削減についても、メッセンジャーの配送に関する評価基準や解約対象者の選定基準等、組合との協議に必要な情報も開示しないままであったことが認められる。
同年10月25日の団交において会社は、X4に対する解約については一定の説明をしているが、組合員X2との業務委託契約を契約期間の途中で解除しようとすることについては、組合からの要求や質問には一切回答していないことが認められる。また、23年8月18日の団交における、個々のメッセンジャーの契約不更新の理由についての会社の回答は、説明ともいえない、常に結論だけを述べるものにすぎず、極めて不十分なものであった。
以上のとおり、組合が会社に申し入れた、メッセンジャーと会社との契約の解除及び不更新に関する事項について、3回の団交における会社の対応はいずれも明らかに不誠実なものであったと評価せざるを得ない。
3 X2に対する契約解除について
X2は15年1月から契約期間の定めのない運送請負契約により会社のメッセンジャーとして就労した後、22年8月10日、同年9月1日から23年8月31日までを契約期間とする業務委託契約を会社と締結したが、その約2か月後の22年10月4日付けで会社から同年11月5日をもって同契約を解除するとの通知を受けた。この時期に会社から契約を解除された者は同人以外にはいなかった。会社は、同人の契約解除の理由について、同人の稼働実績が少ないこと及び会社からの依頼事項のへの非協力的姿勢を挙げている。
しかし、業務委託契約締結後わずか2か月での契約解除は極めて不自然であり、会社の主張する解除理由も説得力はなく、X2の契約解除がなされた時期は労働委員会への申立てや裁判所への提訴などにより会社と組合との労使関係が緊張状態にあり、会社が組合の活動及びその副執行委員長である同人の言動を「非協力的な姿勢」と評価して嫌悪していたことが推認されることからすれば、本件契約解除については、組合の活動及び組合員を嫌悪した会社が業務や団交で積極的に発言する同人を排除するために契約期間の途中であえて解除したものとみるのが相当であり、かかる会社の行為は、同人から仕事を奪う不利益取扱いに当たるとともに、組合副執行委員長を職場から排除することにより、組合の弱体化を図ろうとする支配介入にも該当する。
4 組合員X1及び同X3に対する契約不更新について
会社はX1らの契約不更新の理由として、同人らは稼働予定の変更が多かったことを挙げている。23年1月から同年6月までの6か月間における変更件数をみると、X1は13ないし14件、X3は22件であり、これらは契約が更新されたメッセンジャー48名の同時期の変更件数の平均値約2.15件を相当数上回っていることが認められる。
会社がX1らとの契約を更新しなかった理由にはそれなりの合理性があり、かつ、同人らと同時期に他の16名のメッセンジャーも契約不更新となっており、うち4名はX1及びX3と同様の理由で不更新となっていることからすれば、同人らの組合活動の状況を考慮してもなお、同人らが組合役員であることが契約更新の結果を左右したとまではいうことができない。
したがって、X1及びX3と会社の業務委託契約が更新されなかったことは、同人らが組合役員であるが故の不利益取扱いには当たらない。
5 防犯監視カメラの設置について
会社は、22年1月から3月にかけて、各営業所に防犯監視カメラを設置しており、組合はそれらは組合監視目的で設置されたものである旨主張する。しかし、会社は部外者による犯罪行為や機密情報の流出等の問題発生防止のためと主張しているところ、会社の主張する設置目的が不自然であるとはいえない。
また、同カメラの設置により会社が組合活動を監視したことを裏付けるに足りる具体的事実の疎明はない。よって、同カメラの設置が組合活動への支配介入に当たるということはできない。 |
掲載文献 |
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