労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ソクハイ 
事件番号  中労委平成26年(不再)第26号 
再審査申立人  連合ユニオン東京ソクハイユニオン(「組合」) 
再審査被申立人  株式会社ソクハイ(「会社」) 
命令年月日  平成27年11月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 会社は、従前からの期間の定めのない契約を22年6月以降、1年間を期間とする業務委託契約に変更した。会社が、① メッセンジャーである組合員Aとの業務委託契約を期間途中の22年11月5日に解除したこと(「本件契約解除」)、② 同B及び同Cとの業務委託契約をそれぞれ23年7月末日及び同年8月末日の契約期間満了をもって終了とし、更新しなかったこと(「本件不更新」)、③ 22年2月25日以降の人員削減や解約撤回等を議題とする団体交渉を誠実に行わなかったこと、④ 営業所に防犯監視カメラを設置したことが、それぞれ不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事案である。
2 初審東京都労委は、上記1のうち①及び③が不当労働行為に該当するとして、会社に対し、組合員Aに対する解雇予告通知がなかったものとしての取扱い及び契約期間満了までの報酬相当額の支払、誠実団体交渉応諾並びに文書掲示等を命じ、その余の申立てを棄却したところ、組合は、初審命令の棄却部分(②④)の取消し及び申立てを認容した①に関する救済方法について、契約が更新されたものとして契約期間満了後の報酬相当額の支払を命じなかったことは不当であるとして、再審査を申し立てた。 
主文要旨   本件再審査申立ての棄却。  
判断の要旨  1 本件契約解除(争点1)及び本件不更新(争点2)について
 (1) 本件契約解除の相当性
 会社は、本件契約解除理由は、稼働数が著しく少ないこと及び非協力的姿勢であると主張し、確かに、22年6月から9月における組合員Aの平均報酬月額は、メッセンジャー全体の約62%であり、同人の稼働数は全体の平均を下回っていたものと推認されるが、① 同時期に稼働数を理由に契約解除されたメッセンジャーはおらず、会社は稼働数の多寡は会社には関係がない旨述べていることから、会社が契約継続のために稼働数を重視していたことをうかがわせる事情は存しない。また、② 22年8月の契約締結のわずか2か月後に契約を解除するほど顕著な稼働数の減少も認められず、③ 会社は、同人へのクレームなどはない旨を述べ、即配便業務に本件契約解除を余儀なくさせるような事情が生じたなどの事実も認められない。よって、同人の稼働数の少ないことを契約解除の相当な理由と認めることはできない。
 また、会社は組合員Aの「非協力的姿勢」に関し、配車係への苦情があったと主張し、確かに、組合員Aは配車係に手配の順番などについて質問や確認の電話をしたことがあったが、その頻度や業務への支障の程度は明らかでない。
 さらに、他事例の契約解除理由であるメール送信懈怠や稼働予定の不遵守が業務に支障を来し、事故多発、悪質走行の繰返し、顧客のクレームへの姿勢が対外的に問題となるのに対し、本件の理由は、対外的に問題となるとも、直ちに業務に支障を来すともいえず、他事例と比して不合理で不均衡、不自然といわざるを得ない。
 (2) 本件不更新の相当性
 会社は、本件不更新の理由として、直前及び繁忙日の稼働予定変更件数が多かったと主張し、確かに、組合員Bは契約期間中に41件、稼働予定日の前々営業日以降に31件、繁忙日に15件、同Cはそれぞれ32件、23件、11件の変更を行った。23年6月から9月までに契約更新された48名の同年1月から6月までの前々営業日以降の稼働予定変更は最多でも6件、平均2.15件に対し、組合員B及び同Cは、それぞれ18件、7件であり、他のメッセンジャーの件数に比しても多いといわざるを得ず、会社が上記理由により不更新としたことには相当性がある。
 (3) 本件契約解除及び本件不更新と組合員Aらの組合活動等との関連性
 21年10月から副執行委員長であった組合員Aは、労働委員会及び行政訴訟や団体交渉に出席し、22年2月25日の団体交渉において、協議事項である人員削減・経費削減に関し個々の解約理由や契約規定上の取扱いについて質問するなど、団体交渉においても中心的な役割を担っていた。また、同人による配車係への質問や確認の電話は、組合役員として労働条件改善を求める行動の一環とみることができるのに対し、上記団体交渉における会社の労働組合活動を揶揄ないし批判する発言や、同人の組合役員としての活動を非難する発言などからは、同人の活発な組合活動を嫌悪していたと認めるのが相当である。これに対し、組合員B及び同Cについては、本件不更新前に、活発な組合活動を行っていたとの事実や、会社が同人らの組合活動を嫌悪していたことを示す事実は認められない。
 (4) 不当労働行為の成否 
 上記のとおり、本件契約解除の理由は相当とはいえず、会社は、本件契約解除当時、組合員Aの活発な組合活動等を嫌悪していたと認められることから、本件契約解除は、労組法第7条第1号に当たり、また、同人を会社から排除することによって、組合の弱体化を企図したものと認められることから、同条第3号にも該当する。
 他方、本件不更新の理由に相当性があること、会社が組合員B及び同Cの組合活動等を嫌悪していたことを示す事実は認められないこと、同人ら以外に同時期に契約不更新とされた者が存在することなどから、同条第1号に該当するとはいえない。
 (5) 本件契約解除に関する救済方法の相当性
 組合員Aの契約期間満了時期に契約が更新された者は約7割にとどまり、また、会社の即配便の受注件数には減少がみられるから、同人の契約が当然に更新されたであろうとは必ずしもいえない。よって、契約期間満了までの報酬相当額の支払を命じた初審命令主文は相当である。
2 防犯監視カメラの設置について(争点3)
 会社は、22年1月から3月までの間にバイク便及び自転車便の営業所に順次防犯監視カメラを設置し、当該営業所においては出入口に向けて設置されていたことからすると、防犯目的で設置したとの会社主張が不自然とはいえず、会社が組合監視を目的として設置したとはいえないことから労組法第7条3号に該当しない。 
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成22年(不)第22号・東京都労委平成22年(不)第116号・東京都労委平成23年(不)第98号 一部救済 平成26年3月4日
 
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