概要情報
事件名 |
詫間港運 |
事件番号 |
香労委平成24年(不)第3号 |
申立人 |
全日本港湾労働組合四国地方香川県支部 |
被申立人 |
詫間港運株式会社 |
命令年月日 |
平成26年2月10日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
①被申立人会社が組合員に対し、仕事の配分差別を行ったこと、②会社の社長が申立人組合との団交を欠席し、組合が要求する資料を提出せず、これ以上交渉しないと表明するなどしたこと、③組合と会社との間でユニオン・ショップ協定が結ばれているところ、会社が従業員を招集して開催した説明会などを契機に組合員の組合からの脱退が相次いだことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
香川県労委は会社に対し、1 平成23年夏季一時金等について誠実に団交を行うこと、2 組合の運営に対する支配介入の禁止、3 組合員に対する、通常の業務を行った場合に支払われたであろう賃金額と休業手当の既支払額との差額の支払、4 文書掲示、5 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人に対し、平成19年度以降の貸借対照表及び損益計算書等の財務資料を提示し、その内容を説明するとともに、権限を有する代表者が出席した上で、以下の事項について、申立人と誠実に団体交渉をしなければならない。
(1) 平成23年夏季一時金
(2) 平成23年冬季一時金
(3) 平成24年4月以降の賃上げ
(4) 平成24年4月以降の夏季・冬季一時金
(5) その他上記事項に関連する事項
2 被申立人は、組合員に対し、会社の経営状況に関する従業員に対する説明会や仕事配分について組合員以外の従業員と差別的取扱いをすることなどにより、申立人の組織の弱体化を図り、運営に支配介入してはならない。
3 被申立人は、別表記載の申立人の当時の組合員(以下「別表組合員」という。)が、別表記載の日において、通常の業務を行い休業が命じられなかった場合に支払われたであろう賃金と別表組合員に支払われた休業手当の既支払額との差額相当額を別表組合員に対して支払わなければならない。
4 被申立人は、本命令書の写しの交付の日から1週間以内に、次の内容を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、明瞭に認識することができる大きさの楷書で記載した上で、被申立人会社内の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
年 月 日
全日本港湾労働組合四国地方香川県支部
執行委員長 X1 様
詫間運送株式会社
代表取締役 Y1
当社が行った下記の行為は、香川県労働委員会において、(1)については労働組合法第7条第1号及び第3号に、(2)ないし(4)については労働組合法第7条第2号及び第3号に、(5)及び(6)については労働組合法第7条第3号に、それぞれ該当する不当労働行為であると認められました。
今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
記(省略)
5 被申立人は、第2項を除く前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
6 その余の申立てを棄却する。
別表(省略) |
判断の要旨 |
1 組合員に対する仕事の配分差別について
認定した事実によれば、被申立人会社が組合員とその他の従業員に配分した業務量には大きな較差があり、その他の従業員に対しては原則的に休業の割当てが行われず、また、休業が開始された後に申立人組合を脱退した者に対しては仕事が配分されるなど明らかに組合員差別をする事態が生じており、他方では組合員は会社から休業を余儀なくされ、賃金が減少するという不利益を受けた。
しかし、会社は平成23年3月頃から大口取引先の不祥事の影響で業務量総体が相当程度減少していたことが窺えるものの、業務遂行に必要とされる職務上の資格や能力に関して組合員とその他の従業員との間で仕事の配分について差別をしなければならないような特段の理由は存在しなかった。
よって、組合員に対する仕事の配分差別及びその結果としての賃金差別があったものと認定し、労組法7条1号の不当労働行為に該当するものと判断する。
2 団交における会社の対応について
会社の社長Y1は、平成23年4月の団交で組合から非組合員の雇用問題や最低賃金協定の違反問題を追及された後、自らは団交に出席せず、会社の顧問Y2や代理人弁護士を出席させて対応してきた。当委員会での審問におけるY1の証言等からすれば、同人は同年5月17日の団交以降、意図的に団交に欠席したものと判断される。
会社は、組合からの24年5月25日付け及び6月22日付けの団交申入れに応じなかったことについて、Y1の身体の安全が確保できない状態であり、警察の助言を得たことを理由に挙げ、その正当性を主張する。しかし、警察に相談したのはY1が団交に出席しなくなった23年5月から半年以上も経過した後のことであり、仮に単独で出席すれば身体に危険が及ぶ可能性があるのであれば、Y2や代理人弁護士とともに団交に臨めばよいはずであるから、会社の主張には合理的な理由がなく、会社は意図的に団交を拒否したものと判断される。
会社は、23年の夏季・冬季一時金交渉において、経営状況が悪く支払余力がないとの理由で夏季一時金をゼロ、冬季一時金を一律5万円とする回答を行い、経営状況を示す資料として「人件費計算書」等を提示した。しかし、それらの資料の内容は一面的かつ断片的であり、十分に信頼性あるものとなっておらず、また、会社の対応や説明も誠実さを欠くものと判断される。
会社は、24年7月13日の団交においてY1から事業閉鎖を示唆する発言があったことに関して、「社長の職を辞する意味であった」と主張し、また、審問においてY1は「雑談であった」と発言している。しかし、これについては、Y1が真意に反して意図的に事業閉鎖を示唆する発言をすることにより、組合に不安を生じさせて団交を有利に進めようとしたものと推測され、不誠実団交であったと判断される。
以上のとおり、会社の団交拒否、不誠実団交があったものと認定し、労組法7条2号の不当労働行為に該当するものと判断する。
3 従業員を対象とする説明会における代理人弁護士等の発言について
会社が、ユニオン・ショップ協定を定めた本件労働協約の改訂を事前に組合に申し入れもせず、組合が中止を求めたにもかかわらず開催した23年10月19日の説明会において、代理人弁護士が同協定は無効であり、組合への加入・脱退は自由である旨の発言を行ったことは、組合に対し、その活動について非難するものであり、また、組合の組織・運営に対して重大な影響を及ぼすものであるから、同協定の有効・無効にかかわらず、明らかに支配介入に該当すると判断される。
また、24年3月29日の説明会においてY1が、会社の経営状態がおもわしくなくなったときは組合が面倒をみてくれる旨の約束ができていると説明し、組合の組合員は組合が引き取ってくれる旨発言したことは、当時、既に別組合が結成されている状態の下で、組合との合意が成立していないにもかかわらず、組合の組合員のみを組合に引き取ってもらうとの発言をすることは同組合員にのみ退職(転職)を要請することになり、明らかに労働組合間の差別的取扱いによる支配介入に該当すると判断される。
以上のとおり、会社の組合に対する支配介入があったものと認定し、労組法7条3号に該当する不当労働行為であると判断する。 |
掲載文献 |
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