労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  詫間港運(執行停止申立) 
事件番号  高松地裁平成26年(行ク)第1号  
申立人  詫間港運株式会社(「会社」) 
相手方  香川県(処分行政庁・香川県労働委員会) 
決定年月日  平成26年5月21日 
決定区分  却下 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、会社に加入している従業員で全日本港湾労働組合四国地方香川県支部(以下「組合」)の組合員に対し、仕事の配分差別を行ったこと、会社のB1社長が、団体交渉を欠席し、組合が要求する資料を提出しないこと、ユニオン・ショップ協定が結ばれているところ、会社が従業員を招集して開催した説明会などを契機に、その後、組合員の脱退が相次いだことなどが不当労働行為に当たるとして争われた事件である。
2 香川県労委は、会社に対して、①平成19年度以降の貸借対照表及び損益計算書等の財務資料を提示し、その内容を説明するとともに、権限を有する代表者が出席した上で、組合と誠実に団体交渉をしなければならないこと、②会社の経営状況に関する従業員に対する説明会や仕事配分の差別的取扱いなどによる支配介入の禁止、③通常の業務を行い休業が命じられなかった場合に支払われたであろう賃金と休業手当の既支払額との差額相当額の支払、④文書掲示、⑤履行報告を命じ、組合のその余の請求を棄却した(本件救済命令)。
3 会社は、これを不服として、高松地裁に行政訴訟(本案事件)を提起するとともに、行訴法25条2項に基づき、本案事件の判決確定まで本件救済命令主文中、上記①、③及び④の各項について、執行停止を申し立てた。高松地裁は、本件執行停止申立てを却下した。  
決定主文  1 本件申立てを却下する。
2 申立費用は申立人の負担とする。  
決定の要旨  (1) 本件救済命令主文1項について
ア 会社は、 本件救済命令の効力が維持されると、組合による〔脱退して別組合に加入した者に対する〕脱退勧奨を助長し、会社の従業員間で混乱が生じるなど会社の業務に重大な支障が生じて、会社が重大な損害を被るおそれがあると主張する。
 しかし、同主張は、抽象的な可能性を指摘するものにとどまり、損害の発生が切迫しているとの点につき疎明されているということはできず、処分の効力によりそのような損害を招くのかも疑問である。
イ また、会社は、貸借対照表及び損益計算書等の財務資料を組合に提示すれば、本件競合会社が会社の内部資料を入手して、会社が重大な損害を被るおそれがあると主張する。
 しかし、会社は、監査役設置会社であるところ、貸借対照表及び損益計算書等は、定時株主総会に提出、提供しなければならず、本件救済命令主文1項において提示が命じられている財務資料の性質に照らせば、同資料を組合に提示することによって、原状回復や金銭賠償によるてん補が不能であるとか、社会通念上、容易若しくは相当でないとみられる程度に達する損害が発生すると認めることはできない。
(2)  本件救済命令主文3項について
 会社は、組合が、事実と異なる内容を記載した組合の機関紙を、会社の取引先に持参し、会社との取引を本件競合会社に切り替えるよう働きかけたことなどから、会社が同項を履行すれば、組合がそれを曲解した機関誌を発行することにより、会社に対する社会的評価や経済的信用が著しく毀損され、会社が重大な損害を被るおそれがあると主張する。
 しかしながら、上記の働きかけについては、その経緯や具体的な内容を認めるに足りる疎明資料は提出されていない。また、会社の上記主張を前提としても、本件救済命令主文3項は、既に支払った休業手当との差額の支払を命ずるものであるところ、その履行により、社会的評価や経済的信用の著しい毀損が生ずるとは到底いえず、会社の主張は理由がないことが明らかである。
(3) 本件救済命令主文4項について
 会社は、前記(2)の事情に加え、同項が明らかな事実誤認に基づき、処分行政庁が認定していない事実を含み、組合が救済を求めていないものについても記載したものであることなどから、組合がそれを曲解した機関誌を発行することにより、会社に対する社会的評価や経済的信用が著しく毀損され、会社が重大な損害を被るおそれがあると主張する。
 しかし、本案事件における審理の結果、本件救済命令が取り消された場合には、本件救済命令の違法性が明らかとなるのであるから、社会通念上、社会的評価や経済的信用の回復は十分可能であると認めるのが相当である。また、会社が認定判断についての誤りを指摘する点は、同項の違法性を主張するものであるところ、上記同様本案事件の審理において判断されるべき事項であり、本件救済命令の効力の停止を求める理由たり得ないというべきであるし、その余の主張については、前記(2)のとおりである。  
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
香労委平成24年(不)第3号 一部救済 平成26年2月10日
高松地裁平成26年(行ク)第4号 緊急命令申立て認容 平成27年1月15日
高松地裁平成26年(行ウ)第4号  棄却 平成27年12月28日
 
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