労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  全日本手をつなぐ育成会 
事件番号  都労委平成19年不第95号、21年不21号、22年不71号、23年不63号 
申立人  ユニオン東京合同 
被申立人  社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会 
命令年月日  平成26年1月21日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   ①団交における被申立人法人の対応及び法人が第21回団交後、団交に応じていないこと、②申立人組合が労働協約であると主張する第2回団交の議事録を法人が廃棄する旨組合に通告したこと、③法人が組合員X3に対し、「雇用契約終了の予告通知」を行ったこと及び同人に労災認定があったことを知った後も同通知を速やかに撤回しなかったこと、④法人が組合員X4に対し、同人が東京都労委に証人として出頭したことによる不就労を理由として、同人の賃金等を控除又は減額して支給したこと、⑤法人がX4に対し、けん責処分を行ったことは不当労働行為に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労委は法人に対し、文書の交付・掲示及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人ユニオン東京合同に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、被申立人法人の職員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
年  月  日
  ユニオン東京合同
  執行委員長 X1 殿
社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会
理事長 Y1
   当法人が、①平成19年に開催された貴組合との団体交渉において貴組合の組合員X2に対する事務局長解任の撤回をしない理由について具体的説明を行わなかったこと、②21年8月20日開催の団体交渉後、貴組合の申し入れた団体交渉に応じていないこと、③同組合員X4に対し、東京都労働委員会における審問出頭につき不就労として賃金等の減額措置を行ったこと、及び④同氏に対し、23年6月7日付けん責処分を行ったことは、いずれも東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
   今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
   (注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)

2 被申立人法人は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
3 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 団交における被申立人法人の対応等について
 平成19年に開催された第1回から第8回までの団交のうち第5回以降の団交において、法人は、義務的団交事項である組合員X2の法人事務局長解任を撤回しない理由について、解任の前提となった特別監査報告書(法人が設置した特別監査チームによるもの)の記載に関して何らの具体的な応答もせず、解任撤回要求に応じないことについて理由を示して説明することもなかったことが明らかであるから、この点について不誠実な対応があったといわざるを得ない。
 また、21年に開催された第20回及び第21回の団交において、法人側の団交員の発言を巡り議論が紛糾し、法人は以後、組合が法人側の一部団交員を交渉員として認めず、その発言を妨害しているなどとして、このような組合の態度を改めて謝罪し、発言を妨害するようなことをしない旨の誓約をしない限り団交はできないとの回答を繰り返し、組合の40回以上にわたる団交申入れに一切応じていない。
 しかし、上記の団交において組合側の発言や態度等に行き過ぎはあったといえるが、それらは法人の理事らが組合から発言を求められても沈黙を続け、何も答えなかったことなど法人側の対応に触発された感は否めず、組合の言動には無理からぬ事情があったと認められる。したがって、法人に団交を拒否する正当な理由がある場合とは認め難い。むしろ、法人は組合の言動を奇貨として、組合が謝罪や誓約をしなければ団交に応じないなどと、組合の受け入れ難い条件を付したまま、団交の開催を一切拒否してきたものと認めるのが相当である。
 以上のとおりであるから、法人が組合の交渉態度を理由に第21回団交後、団交に応じていないことは、正当な理由のない団交拒否に当たるといわざるを得ない。
2 第2回団交の議事録を破棄する旨通告したことについて
 第2回団交の議事録には、就業規則の変更に係る事前協議制が合意されたともとれるような記述があり、組合は同議事録は事前協議条項についての労働協約であると主張している。しかし、同団交での法人の発言をみると、労使が事前協議制の合意に達したとみることは到底できず、事前協議条項に係る労働協約が成立したと認めることは困難である。
 そして、その後の団交で組合が上記議事録の一部は事前協議制についての労働協約であると主張したため、法人は労働協約としての効力を有していないことを明確にするために「破棄通告書」によってその旨を組合に意思表示したものと解するのが相当である。
 以上の経過から、第2回団交の議事録に対する法人の破棄通告は、組合の運営に影響を及ぼそうとしたものとみることはできない。
3 組合員X3に対する解雇予告通知及び解雇予告の撤回について
 組合員X3が平成20年4月以降、腰痛のため欠勤していたところ、法人は21年2月、主治医との面談を行い、X3が就業できる状態にはないと判断し、同人に対し、同年3月末の雇用契約期間満了に際し、契約の更新はしない旨通知した。しかし、法人は3月27日になってX3に対する労災認定の詳細を知ることができたことから、30日に上記通知を撤回した。よって、法人はX3の腰痛等が労災によるものであると判断し得た時点である3月27日から、社会通念上、相当期間内に通知を撤回したと認められる。そして、他に同人に対する本件雇止め予告通知の撤回を組合の団結をき損する意図をもって遅らせたような事情を認めるに足りる疎明もない。
 したがって、法人が21年3月30日まで本件雇止め予告通知を撤回しなかったことをもって、組合の運営に対する支配介入に当たるということはできない。
4 組合員X4の審問出頭に対する賃金等の減額について
 組合員X4は、平成19年不95号事件及び21年不21号事件の審問において、平成21年5月から22年9月まで、当委員会に7回、証人として出頭したところ、法人は、同人の不就労時間について賃金等の減額を行った。法人はこれについて、就業規則の不利益変更の合理性、公民権行使等に係る不就労の場面における賃金の取扱いという契約内容の問題及び給与規程の解釈の問題であって、不当労働行為性について問題となるものではないと主張する。
 そこで、法人が賃金等の減額を行った時期における労使関係についてみると、法人は労使の対立が激化した直後にX4の給与から不就労時間分を控除して減額し、他方、控除をしなかった証人出頭回については、1年も経過した後に給与の返還請求や調整的減額を行うなどしており、給与規程が給与支給の都度に厳密に適用されていた形跡は認められない。また、X4が法人のいう減額根拠である現行の就業規則の規定と旧就業規則の規定との整合性を認めることはできないなどと、就業規則の不利益変更を問題として法人に抗議したのに対して、法人は「旧就業規則を不利益に変更したものではありません」などという通り一遍の回答をして取り合わなかったが、かかる回答は不誠実なものといわざるを得ない。これらの法人の対応からは、証人として活動したX4に対して不利益を課そうとする意図が推認される。
 したがって、法人がX4の賃金等の減額をしたことは当時の労使関係に鑑みれば、組合が不当労働行為救済申立てをし、同人が証人として活動したことに対して不利益を課すとの意図によるものとみざるを得ず、報復的不利益取扱いに当たるといわざるを得ない。また、X4の組合活動の妨害を意図した、組合の運営に対する支配介入にも該当する。
5 X4に対するけん責処分について
 法人の懲戒処分決定通知書によれば、X4に対する処分の理由は、組合が22年10月15日に法人事務局に無断で立ち入り、事務局長の机上に団交開催要求書を置き、写真撮影し、それを制止しようとした女子職員に対し複数人で暴言を吐き恫喝したが、X4はこれら一連の行為を制止せずに、誘導若しくはほう助する形で加担したことが就業規則に定める処分事由に当たるというものである。
 しかし、法人は21年8月20日の第21回団交後、団交に一切応じない状況が続いたのであるから、22年10月15日に組合が法人を訪れ、団交開催要求書を提出したのにはやむを得ない事情があったというべきであり、X4に組合の行動を制止する義務があることを当然の前提とすることはできない。また、制止しなかったことをもって、組合の行為の誘導若しくはほう助に当たると認めることは困難である。むしろ、法人はX4が本組合活動のメンバーのうち唯一の職員であるから、あえて同人に対して懲戒処分を行ったものとみることができる。
 また、処分事由に係る上記の組合活動が行われた当時における労使の深刻な対立関係及びX4の活発な組合活動に鑑みれば、法人が組合及びX4に対して嫌悪の情を抱いていたものと容易に推認することができる。
 以上を併せ考えれば、本件けん責処分はX4の組合活動を嫌った不利益取扱いに当たるとともに、同人を処分することにより組合活動を制約することをねらった支配介入にも当たるということができる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成26年(不再)第17号 一部変更 平成27年9月16日
東京地裁平成27年(行ウ)第668号 棄却 平成28年10月26日
東京高裁平成28年(行コ)第403号 棄却 平成29年4月26日
最高裁平成29年(行ツ)第265号・平成29年(行ヒ)第307号 上告棄却・上告不受理 平成29年10月17日
 
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