労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  東和交通 
事件番号  愛労委平成22年(不)第7号 
申立人  東海合同労働組合 
被申立人  東和交通株式会社 
命令年月日  平成25年3月18日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①文書により代理人選任の通知をすることについての申立人組合の求めに応じなかったこと(このため、団交が開催されなかったこと)、②タクシー乗務員として勤務する組合員X2らに生活協力金を支給しないこと及びX2に最低賃金補償制度に基づく不足額を支給しないこと、③公休出勤現金支払制度の改正を組合員に適用したこと、④X2に対する乗務禁止指示に係る組合からの損害回復要求に応じなかったこと、⑤主に夜間に乗務していたX2らを昼間の乗務に異動させ、出勤時間を変更する指示をしたこと、並びに⑥組合からの春闘妥結回答書の提出時等における会社の役員等の対応及び発言は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 愛知県労委は会社に対し、1 上記⑤の出勤時間の変更指示をなかったものとして取り扱うこと等、2 文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、平成23年1月13日に申立人の組合員X2に対し行った出勤時間の変更指示をなかったものとして取り扱い、今後、出勤時間の変更指示について、申立人の組合員を他の乗務員と差別して取り扱ってはならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記内容の文書を本命令書交付の日から1週間以内に交付しなければならない。
  当社が為した、平成22年10月度からの公休出勤現金支払制度の改正を貴組合の組合員に適用する際の貴組合への対応は、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であること、また、当社が、平成23年1月13日に組合員X2に対し、同月14日に組合員X3に対し、それぞれ為した出勤時間の変更指示は、同条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であることが愛知県労働委員会によって認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
年 月 日
  東海合同労働組合
   執行委員長 X2 様
東和交通株式会社
代表取締役社長 Y1

3 その余の申立ては棄却する。 
判断の要旨  1 団交が開催されないことについて
 申立人組合は、被申立人会社が代理人選任の通知を行わないことで団交を拒否している旨主張するが、一般に、当事者が交渉権限を第三者に委任した場合、受任者が相手方に委任状を提示するか、委任者が相手方に受任者を明示して委任した旨を通知すれば足りるものといえ、組合と会社との間でこれと異なる合意や慣行があったことを認めるに足りる疎明はない。本件においては、事前折衝の場で、受任者たる弁護士Aが委任状の写しを組合側に渡そうとしたこと、会社の相談役Y2が同人及びAらが社長から委任を受けている旨述べたことが認められ、会社の手続に問題とされる点はないものといえる。
 そうすると、平成22年7月20日以降、団交が開催されなかったことは、主として、代理人選任通知等に固執する組合の態度によるものとみるのが相当であり、会社による正当な理由のない団交拒否に当たるとはいえない。
2 生活協力金及び最低補償額の不支給について
 組合は、生活協力金及び最低賃金補償制度について妥結する旨記載した春闘妥結回答書を平成22年11月5日、社長Y1に提出したことをもって、これらについては妥結した旨主張するが、会社がこれらの制度を新たに実施した同年7月時点においては妥結していたとはいえない。したがって、会社は、生活協力金については、組合と妥結していなかったことから、組合員X2らに支給しなかったものである。また、最低賃金補償制度に基づく不足額(最低補償額)については、X2が制度上、支給対象者に該当しなかったため、支給していないことが認められる。
 以上から、これら生活協力金等の不支給は、組合員に対する不利益取扱いであるとも組合運営に対する支配介入であるともいえない。
3 公休出勤現金支払制度の改正について
 会社は、平成22年10月から公休出勤現金支払制度の改正を乗務員全員を対象に実施したことが認められ、組合員を差別的に取り扱ったものと認めることはできない。
 しかし、同制度の改正については、同年8月に行われたX2と会社の取締役との話合いにおいて、これを凍結すること及び団交で更に協議することについて合意したものとみることができる。それにもかかわらず、会社は当該話合いの後、組合に対して協議を申し入れたり、通知したりすることなく、同年10月から当該改正を実施することを乗務員に通知したことが認められる。このような会社の対応は、組合との合意を反故にするものであり、組合を無視・軽視する支配介入であるといえる。
4 X2に対する乗務禁止指示について
 平成22年11月25日、X2が営業所内の別労組の掲示板を撮影していたところ、別組合の副委員長を務めている、会社の運行管理責任者Y3がX2に対し、撮影データの消去を求め、言い争いになった末、Y3がX2に当日の乗務禁止を指示したこと及びその翌日、組合が会社に対し、当該乗務禁止指示による損害(欠勤扱い)の回復を求めたが、会社がこれに応じなかったことが認められる。
 組合は、会社がX2に対して調査を行わず、Y3の報告のみから本件乗務禁止指示を正当と判断し、損害回復請求を認めなかったことは組合への差別的取扱いであり、組合員に対する不利益取扱いに当たると主張する。
 しかし、会社は、X2が興奮しており運転中に事故を起こしたりする危険が高いと判断した旨のY3の報告を聞いて、本件乗務禁止指示を組合活動とは関係のない運行管理責任者の通常業務として行われたものと認識していたとみるのが相当である。したがって、上記のような会社の対応は組合員に対する不利益取扱いに当たるとも、組合運営に対する支配介入に当たるともいえない。
5 X2らに対する出勤時間変更指示について
 会社が減車措置に伴い車両の効率的な運行を図るため、営業収入額が低い乗務員を昼間の乗務に異動させることとしたことには一定の合理性が認められる。しかし、実際にはX2よりも営業収入額の順位が低い乗務員が昼間の勤務に限定されていないことが認められ、異動対象者の人選が会社の基準どおりになされたとはいえず、X2らを人選したことが合理的であったとまではいえない。
 また、出勤時間の徹底がなされていない中で、会社がX2らに対してのみ出勤時間の変更を厳格に守らせようとしていたことに合理性は認められない。
 よって、本件出勤時間変更指示は、組合員であるが故の不利益取扱いといえ、また、会社で就労する組合員2名とも対象にしていることからすると、組合活動を牽制することを企図した支配介入に当たるものとみるのが相当である。
6 春闘妥結回答書提出時における会社役員の言動等について
 X2が春闘妥結回答書を提出した時の社長Y1の対応は、従前の会社の対応と異なってはいるが、同人は回答書を受け取っている。また、組合と会社との関係が従前と異なっていたため、慎重になったということができ、Y1の対応をもって組合を無視するものとはいえない。よって、それが組合運営に対する支配介入に当たるとはいえない。
 さらに、その時、X2と言い争いをした会社の営業部長の発言については、語調に乱暴な面が見受けられるものの、X2を威圧、威嚇するものとも、組合を嫌悪し、組合活動の妨害を意図したものとも認められない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
名古屋地裁平成25年(行ウ)第32号 一部取消 平成27年3月25日
名古屋高裁平成27年(行コ)第28号、同第31号 原判決一部取消・棄却 平成28年2月10日
最高裁平成28年(行ツ)第173号・平成28年(行ヒ)第187号 上告棄却・上告不受理 平成28年7月27日
 
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