労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  吹田市 
事件番号  中労委平成23年(不再)第55号 
再審査申立人  衛都連吹田市職員労働組合現業評議会(「評議会」) 
再審査申立人  大阪衛都連吹田市職員労働組合現業合同支部(「支部」、評議会と併せ「組合ら」) 
再審査被申立人  吹田市(「市」) 
命令年月日  平成25年4月3日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、①市が21年度の校務員の人員配置について、組合らと吹田市教育委員会(「市教委」)との間で締結された小中学校の校務員の配置基準に関する協定書等(「14年協定」)及び幼稚園の同協定書等(14年協定と併せて「本件協定」)を遵守せず、本件協定に定められた職員配置をしなかったこと、②評議会が、市に対し、21年6月19日付けで14年協定に基づく人員補充等を議題とする団体交渉を申し入れたところ(「本件団体交渉申入れ」)、市が、市教委が交渉当事者として対応すべき事項であるとして拒否したこと、が不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、上記②に関する支部の申立てを却下し、①②に関するその余の救済申立てを棄却したところ、組合らはこれを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文  1 本件団体交渉申入れに対する市の対応に係る評議会の申立てを棄却した部分の取消
2 評議会からの団体交渉申入れに対する誠実応諾
3 その余の本件再審査申立ての棄却 
判断の要旨  1 市が、21年度の校務員の人員配置について、本件協定の配置基準のとおりに行わなかったことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たらない(争点①)
ア 地公労法のもとで、地方公務員である職員の定数及びその配置に関する事項は同法第7条但書きの管理運営事項に当たり、その当否自体は団体交渉事項には当たらないが、管理運営事項であっても、これが労働条件に関連する限り、その関連する労働条件については団体交渉の対象となり、かつ労働協約締結の対象となると解するのが相当である。
 本件協定は、校務員の配置という管理運営事項だけではなく、これに関連する校務員の職務内容等の労働条件についても協定したものといえるから、校務員の配置に関連する労働条件の履行をめぐる問題に関しては、労組法第7条第3号の不当労働行為の成否は問題となり得る。
イ 21年度校務員配置をめぐる労使交渉の経緯等からすると、組合側の提示した問題点に関する対策や変更の必要性、校務員の職務内容等の労働条件に対する影響などについて説明をするべきであるから、市ないし市教委の対応は必ずしも十分であったとはいえない。他方で、市の計画大綱等に関する取組状況からすると、市は自治体の財政健全化を図る必要性に基づき、全庁的な職員体制の再構築を図るべく職員数の削減計画を進めていたものであり、21年度の校務員配置に関しても再任用職員等の活用を進めていたものと認められる。
ウ 上記労使交渉の経緯及び市の計画大綱等に関する取組状況を併せ考えると、21年度校務員配置に至る間の市ないし市教委の対応が組合らの組織及び運営に対する妨害若しくは組合弱体化の意図に基づくものとまでみることはできない。
エ 以上のとおりであるから、争点①については労組法第7条第3号の支配介入の不当労働行為に当たらないとした初審判断は相当である。
2 本件団体交渉申入れに対する市の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる(争点②)
ア 本件団体交渉申入れに記載の交渉項目のうち、校務員の配置自体は管理運営事項に当たるが、交渉項目に挙示された14年協定では、校務員の「職務範囲」や「新たな職務内容」にも言及し、また本件団体交渉申入書では、「職場環境の整備」の履行を要求し、「労働協約を履行できる権限を有する」市長に団体交渉を求めている。そうすると、本件団体交渉申入れでは、これらの労働条件に関する事項についても団体交渉を申し入れていると解するのが相当である。
イ 本件団体交渉申入れは、評議会が市教委との交渉では不十分であるとして、市を相手方として行ったものであり、市は下部機関である市教委に所属する校務員に対して労組法上の使用者に該当する。よって、本件団体交渉申入れにおける団体交渉の当事者は、市であって市教委ではない。
なお、市は市教委に所管の権限がある旨主張するが、当該地方自治体内部で行われる事務分配により、具体的な管理及び執行の権限が市から独立することとなったに過ぎず、市の本件団体交渉申入れにおける当事者性を否定することはできない。また、本件団体交渉申入れに対して、市が市教委の職員をして交渉を担当させたことを認めるに足る証拠は存在しない。
ウ たしかに、本件救済申立ての後、組合側と市教委の間で22年度ないし24年度の校務員配置に関する組合協議は行われているが、市はこれらを「組合協議」としているものであり、そもそも団体交渉とみることはできない。
 また、組合らと市教委は、本件団体交渉申入れより前の21年2月16日及び同年3月2日に21年度校務員配置体制に関する組合協議を行っているが、これらは団体交渉とみることはできず、協議の状況をみても、正規職員の配置人数の変更に関連する校務員の業務体制や職務内容等の労働条件について行われたとはいえず、本件団体交渉申入れの時点で既に交渉する必要性が失われていたと認める特段の事情も存在しない。
エ 上記判断のとおり、本件団体交渉申入れに対する市の対応は正当な理由のない団体交渉拒否であり、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
3 救済方法について
 本件団体交渉申入れに関して、正規職員の配置人数を変更した理由やその必要性について、市の職員体制再構築計画(案)との具体的関連性を含めて明らかにするなどして、団体交渉を行う必要性は現時点においても存在する。市は、この変更に関連する校務員の業務体制や職務内容等の労働条件について交渉に応ずるべきである。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成21年(不)第66号、同(不)第80号 却下、棄却 平成23年8月2日
東京地裁平成25年(行ウ)340号 棄却 平成26年11月17日
東京高裁平成26年(行コ)第486号  棄却 平成27年5月14日
 
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