概要情報
事件名 |
吹田市 |
事件番号 |
東京地裁平成25年(行ウ)340号 |
原告 |
吹田市(「市」) |
被告 |
国(処分行政庁・中央労働委員会) |
被告補助参加人 |
衛都連吹田市職員労働組合現業評議会(「評議会」、支部と併せて「組合ら」) |
判決年月日 |
平成26年11月17日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 市が、①21年度の校務員の人員配置について、組合らと吹田市教育委員会(「市教委」)との間で締結された小中学校の校務員の配置基準に関する協定書等(「14年協定」)及び幼稚園の同協定書等(14年協定と併せて「本件協定」)を遵守せず、本件協定に定められた職員配置をしなかったこと、②評議会が、市に対し、21年6月19日付けで14年協定に基づく人員補充等を議題とする団体交渉を申し入れたところ(「本件団体交渉申入れ」)、市教委が交渉当事者として対応すべき事項であるとして拒否したこと、が不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった。
2 初審大阪府労委は、上記②に関して支部は当事者にあたらないとして支部の申立てを却下し、①②に関するその余の申立てを棄却したところ、組合らはこれを不服として、再審査を申し立てた。組合らは、これを不服として中労委に再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令中、②について協議会の申立てを棄却した部分を取消し、市に対し評議会からの団体交渉申入れに対する誠実応諾を命じ、その余の再審査申立てを棄却した。
3 市は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、市の請求を棄却した。
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判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
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判決の要旨 |
1 争点1(協議会が労組法上の労働組合といえるか)について
(1) 協議会の労働組合としての独立性について
協議会は、〔市の職員団体である市職労の組合員のうち〕 地公労法が適用又は準用される者を構成員とする組織であって、 地公法57条に規定する単純労務職員等を含む(なお、市職労には、市職労の組合員のうち、幼稚園、小中学校、下水処理場等に勤務する者で組織された労働組合である大阪衛都連吹田市職員労働組合現業合同支部(「支部」)があり、ここでは、協議会及び支部を総称して「組合ら」という。)。市職労及び協議会は、それぞれ別個の規約と執行機関を有し、協議会は、昭和49年には独立して市教委との間で協定を締結しており、市職労等とともに、14年協定等を締結している。これらの事情に照らせば、協議会は、労働組合としての独立性を有しているものと認めることができる。市職労及び協議会の規約の定めをもって、協議会に労働組合としての独立性がないとする市の主張は理由がない。
(2) いわゆる混合組合である協議会の労組法上の労働組合性について
ア 混合組合の労働組合性について
現行法は、混合組合の存在を許容しているというべきである。混合組合は、組合員に適用される法律の区別に従い、地公法の職員団体及び労組法上の労働組合の複合的な性格を有しており、労組法適用組合員との関係では、不当労働行為救済制度の下で保護された団結権の保障を全うさせるという観点から、救済命令についての申立人適格を有するものと解するのが相当である。
イ 市の主張について
(ア) 協議会の構成員のうち単純労務職員は、一般職の地方公務員に該当し、地公法の適用も一部受けているため、職員団体へ加入する自由が保障され、職員団体を通して勤務条件に関する事項等について地方公共団体の当局と交渉をすることもできるが、労組法の適用が認められている単純労務職員について不当労働行為救済制度による救済を受ける必要がないといえないことは明らかであって、市の主張は採用できない。
(イ) 労組法上の労働者の労働条件等を交渉事項とする場合には労組法上の労働組合として取り扱えば足りるのであって、労組法又は地方法のいずれが適用される組合員の問題であるかによって峻別することが不可能とはいえないし、日々の対応の中で直ちに混乱や紛議が生じるともいえない。この点に関する市の主張は理由がない。
(ウ) 市職労が労働組合として活動することが予定されていないことを裏付ける事情は見当たらないし、協議会が独立した職員団体として活動することが予定されていないとも認められないのであって、市の主張はその前提を欠き、失当である。
2 争点2(市が本件団交申入れを拒否したか)について
(1) 本件団交申入れの拒否の有無について
本件団交申入れは、それまでに行われた組合らへの説明の場でも、市教委が、具体的な説明を十分にしていない状況においてされたものである。本件団交申入書の文面には、市教委のこうした対応への不満を述べ、市において善処を求める趣旨であることが明らかにされていることを考慮すると、交渉事項が市教委の職務権限にするものであるとはいえ、市長において交渉当事者が市教委である旨を案内するのみでは、市の対応としては不十分というほかなく、市は本件団交申入れを拒否したものと認めるのが相当である。
(2) 市の主張について
市教委は、本件団交申入れの前においては、協議自体に応じているとはいえ、正規職員数の削減に伴う労働条件や安全衛生等の問題については、具体的な説明を十分にしているといえないし、本件団交申入れの対象が平成21年度の配置体制に限定されているものでもないから、これをもって本件団交申入れに係る団体交渉の必要性がなかったということはできない。また、 本件団交申入れの後に協議が重ねられているが、団体交渉事項である正規職員の配置人数の変更に関連する校務員の業務体制や職務内容等の労働条件について説明及び協議が尽くされたものとはいい難く、これによって団体交渉の必要性が失われ、中労委命令の第2項掲記の内容を市に命じる必要性が減殺されたということもできない。
3 争点3(本件団交申入れの拒否につき、正当な理由があったか)について
(1) 地公労法の下では、地方公務員である職員の定数及びその配置に関する事項は、同法7条ただし書の管理運営事項に当たるから、それ自体は団体交渉事項に当たらないというべきである。もっとも、管理運営事項の内容が労働条件に関連する場合には、当該労働条件について団体交渉事項となると解するのが相当である。
(2) 本件団交申入れは、市に対し、14年協定に基づく欠員補充だけでなく、校務員の配置の変更に伴う職務範囲や職務内容、職場環境の整備等について団体交渉を申し入れているものと解するのが相当である。そして、本件団交申入れに係る事項のうち、欠員補充自体は管理運営事項であって、団体交渉の対象とすることは許されないというべきであるが、その余の事項には管理運営事項に当たらず、職員の労働条件に関する事項に該当するものを含んでいるから、団体交渉の対象となり得る事項であり、かつ、市が団体交渉応諾義務を負う事項であるというべきである。
(3) なお、市は、正規職員の配置が14年協定等と異なるものであったとしても、①配置人員の総数には変動がないこと、②シルバー従事者〔シルバー人材センターの者〕の活用等による校務員の負担軽減を図っていることなどを挙げて、労働条件への具体的な影響はない旨を主張するが、配置人員の総数に変更がないとしても、正規職員の配置数が減じるとともに再任用短時間勤務職員の配置数が増えることによって、正規職員の職務範囲や職務内容に影響が及ぶことは避け難いというべきであるから、そのために市が校務員の負担軽減策、労働安全衛生対策等が講じられたほか、結果的に校務員の労働時間や安全衛生について悪影響がみられないとしても、そのことによって直ちに団体交渉応諾義務が否定されるものとはいえず、この点に関する市の主張は理由がない。以上によれば、市による団体交渉拒否には、正当な理由があるとはいえない。
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その他 |
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