労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  エクソンモービル(賃金補償打切措置等)  
事件番号  中労委平成16年(不再)第44号  
再審査申立人  スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合(以下「組合」)  
再審査被申立人  EMGマーケティング合同会社(以下「会社」)  
命令年月日  平成25年2月20日  
命令区分  棄却  
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、業務災害による疾病(以下「本件疾病」)に罹患したX組合員に対し、①就業規則の規定により行っていた賃金補償の打切りを決定し(以下「本件賃金補償打切措置」)、それに基づき、②X組合員の療養を理由とした休業分について、賃金から減額を行い、それを継続していること(以下「本件賃金控除措置」)、③X組合員の本件賃金控除措置に関する団体交渉における対応がそれぞれ不当労働行為に当たるとして、東京都労働委員会に救済を申し立てた事件件である。
2 初審東京都労働委員会は、いずれも不当労働行為に該当しないとして棄却した。組合は、これを不服として再審査を申し立てた。  
命令主文  本件再審査申立てをいずれも棄却する。  
判断の要旨  1 本件救済申立てが申立期間内に行われたものか否かについて
ア 会社は、業務上疾病の療養に伴う休業補償として就業規則に基づき行っていた毎月の賃金補償を労基署長による労災保険給付の不支給決定がされたことを理由に打ち切る旨を決定した(本件賃金補償打切措置)のであって、この会社の行為が一回限りの行為であることは明らかである。
イ そして、会社は、前月における実休業時間分を翌月の賃金から減額して支払うという措置(本件賃金控除措置)を採っていたのであるから、本件賃金控除措置は、本件賃金補償打切措置から独立した行為であることはもとより、それぞれ月例賃金の支払時において完結する独立した行為であると解される。
ウ そうすると、本件賃金補償打切措置及び本件賃金控除措置が、労組法第27条第2項の「継続する行為」に該当すると認められる余地はないので、本件賃金補償打切措置及び本件救済申立ての1年以上前に行われた本件賃金控除措置を対象とする救済申立ては、それぞれ同項に定める期間の経過後にされたものとして却下を免れない。
エ また、X組合員の本件賃金控除措置に関する団体交渉は、組合からの要求が行われ、これに対応して会社が拒否回答を行って、いずれもその都度決裂状態になったものと認められ、団体交渉としてはその都度一旦区切りがついているといえるので、これらの各団体交渉は、組合の各団体交渉要求に基づいて行われた別個の団体交渉と評価すべきものである。したがって、本件救済申立ての1年以上前(7年4月29日以前)に決裂した団体交渉に関する救済申立ては、それぞれ労組法第27条第2項に定める期間の経過後にされたものとして却下を免れない。
2 本件賃金控除措置が不当労働行為に該当するかについて
ア 本件賃金控除措置は、就業規則の規定に則った措置であるということができ、また、会社は、長きにわたって、X組合員の本件疾病について相応の配慮を行っており、さらに、会社は、X組合員の本件疾病に関する同人の休業、賃金補償、業務量等の各議題について、組合との団体交渉に応じてきている。
イ 以上のことからすると、本件賃金控除措置は、給与規則上の賃金控除規定を口実として、あえて形式的かつ画一的処理を行い、X組合員が組合員であるが故に不利益な賃金控除を実施したということはできず、また、本件賃金控除措置が、組合を嫌悪するあまり、その弱体化を企図して行われたとの組合による具体的な立証はなく、それを推認させる事実もうかがわれない。
ウ よって、会社が、同措置によって、X組合員が組合員であること等の故をもって不利益な取扱いを行ったということはできず、また、組合を殊更に無視し、組合の団結権を侵害する支配介入であるということもできない。
3 団体交渉における会社の対応が不当労働行為に該当するかについて
ア 最初の本件賃金控除措置以降に行われた団体交渉においては、会社は、本件賃金控除措置については譲歩できないとして一貫して組合の要求を受け入れず、これに対して組合が繰り返して要求を行っていたものであるが、本件賃金控除措置を議題とする交渉については遅くとも5年11月12日開催の団体交渉において膠着状態となり、決裂していたということができる。そして、会社は、X組合員の本件疾病に関する議題のうち、譲歩できるものは譲歩していたということができるのであるから、会社の対応に特段問題視すべき事実はうかがわれない。
イ 上記のような経緯を経て行われた申立期間内における団体交渉については、本件賃金控除措置について双方の主張が平行線のままとなり、もはや団体交渉を重ねても進展する見込みがない状態であったものというべきであるから、会社が組合の要求を受け入れなかったとしても、そのような会社の対応が不誠実であったと評価することはできない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地労委平成 8年(不)第28号 棄却(命令主文が棄却のみ又は棄却と却下) 平成16年6月15日
東京地裁平成25(行ウ)第566号 却下・棄却 平成27年12月25日
東京高裁平成28年(行コ)第29号 棄却 平成28年5月17日
最高裁平成28年(行ツ)第284号・平成28年(行ヒ)第330号 上告棄却・上告不受理 平成29年6月27日
 
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