概要情報
事件名 |
阪急交通社
|
事件番号 |
中労委平成23年(不再)第71号
|
再審査申立人 |
株式会社阪急交通社(「会社」)
|
再審査被申立人 |
全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合(「本部」)
|
再審査被申立人 |
全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合HTS支部(「支部組合」)
|
命令年月日 |
平成24年11月7日
|
命令区分 |
棄却
|
重要度 |
|
事件概要 |
1 会社は、その旅行事業に関し、申立外株式会社阪急トラベルサポート(HTS)から、労働者派遣法に基づき、添乗員の派遣を受けていた。本件は、本部及び支部組合が、旧会社に対し20年2月25日及び同年3月7日付けで、旧会社を分割承継した会社に対し同年5月21日付けで、それぞれ団体交渉を申し入れたところ、会社がこれを拒否したことについて、不当労働行為であるとして、救済が申し立てられた事件である。
2 初審東京都労委は、本件団交申し入れの団交事項のうち、旧会社及び会社が労働時間管理に関する議題に応じなかったことは、不当労働行為に該当すると判断し、さらに、旧会社の不当労働行為責任は会社が承継したとして、会社に対し誠実団交応諾及び文書交付を命じたところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てた。
|
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。
|
判断の要旨 |
1 本件団交申入れのうち、旧会社及び会社が労働時間管理に関する議題に応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。
ア 労組法第7条にいう「使用者」は、必ずしも労働契約上の雇用主に限定されるものではないが、労働者派遣法上の派遣先事業主は、同法の立法趣旨としては、原則として労組法第7条の使用者には該当しない。しかし、労働者派遣法第44条のみなし規定により派遣先事業主が責任を負うべきものと解される措置を行っておらず、かつ、労働者の基本的な労働条件等に対して、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有している場合には、その限りにおいて労組法第7条の「使用者」になると解すべきである。
イ 本件団交申入れ事項のうち、労働時間管理に関する要求事項について、会社は、添乗業務につき労働基準法第38条の2第1項の事業場外みなし規定の適用があるものとして、労働時間管理を行っていない。
しかしながら、本件においては、添乗員の添乗業務の遂行については会社が提示する詳細かつ具体的な旅程に従うことが原則となっており、これを大きく変更する場合に会社の指示を直ちに仰ぐ仕組みが整っており、帰国後は添乗員に詳細な報告書及び日報を提出させていたのであり、会社はこれらの管理手段を用いることにより、各企画旅行の添乗業務につき相当に正確に労働時間を把握することが可能であったものと認められることから、事業場外みなし労働時間制が適用される状況にあるとはいえず、会社は、労働基準法の規定に反して、労働時間管理を行っていなかったものと認めるのが相当である。そして本件団交申入れ事項のうち、労働時間管理に関する要求事項は、労働者派遣法のみなし規定により、派遣先事業主が特別の責任を課されている事項であると認められる。
ウ 支部組合員は、HTSから会社に派遣され、同社の企画した旅行の添乗業務に従事したのであるが、その実態において、就業の日時、時間、場所、内容といった就業の諸条件について、HTSの指示によることなく、会社から現実的かつ具体的な指示を受けていた。
これらの事実からすれば、会社は、支部組合員の添乗業務等につき、就業に関する諸条件を自ら決定し、また、必要に応じて、これらを変更することができる地位にあったことが認められる。
以上によれば、会社は、本件団交事項のうち労働時間管理に関する要求事項を含む就業に関する諸条件という基本的労働条件につき、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたものと認めるのが相当である。
エ したがって、旧会社及び会社が、本件団交事項のうち、労働時間管理に関する要求事項に応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
2 旧会社が不当労働行為責任を負う場合、同社から旅行事業に関する権利義務を吸収分割により承継した会社は、旧会社の不当労働行為責任を承継するか。
旧会社は、本件吸収分割により、その旅行事業に関する権利義務を会社に承継させて中間持株会社に移行し、同事業の主体ではなくなっているのであり、他方において、会社は、当該分割契約等の定めに従い、旧会社から旅行事業に関する権利義務を承継し、同事業に主として従事する従業員の労働契約関係を当然に承継するとともに、労働者派遣契約上の地位及び派遣就業関係をも旧会社から承継したと解される。そしてまた、上記各団交申入れに係る団交事項は、会社が会社分割により旧会社から承継したこれらの労働者派遣契約上の地位や派遣就業関係の運営にかかわる問題であるから、これにより、会社は、上記各団交申入れに係る団交事項に関する労組法第7条の使用者としての地位及び旧会社による不当労働行為状態を除去、是正して正常な労使関係を回復すべき地位を承継したというべきである。
|
掲載文献 |
|