労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  阪急交通社(緊急命令申立) 
事件番号  東京地裁平成25年(行ク)第62号 
申立人  中央労働委員会 
被申立人  株式会社阪急交通社 
決定年月日  平成25年12月5日 
決定区分  緊急命令申立の認容 
重要度   
事件概要  1 会社は、その旅行事業に関し、申立外株式会社阪急トラベルサポート(HTS)から、労働者派遣法に基づき、添乗員の派遣を受けていた。本件は、本部及び支部組合が、旧会社に対し①20年2月25日及び②同年3月7日付けで、旧会社を分割承継した会社に対し③同年5月21日付けで、それぞれ団体交渉を申し入れたところ、会社がこれを拒否したことについて、不当労働行為であるとして、救済が申し立てられた事件である。
2 初審東京都労委は、本件団交申し入れの団交事項のうち、旧会社及び会社が労働時間管理に関する議題に応じなかったことは、不当労働行為に該当すると判断し、さらに、旧会社の不当労働行為責任は会社が承継したとして、会社に対し誠実団交応諾及び文書交付を命じたところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てた。中労委は会社の再審査申立てを棄却した。
これを不服として、会社が東京地裁に行政訴訟を提起したため、中労委が緊急命令の申立を行ったのが本件である。
決定主文  1 会社を原告、中労委の所属する国を被告とする当庁平成24年(行ウ)第868号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決の確定に至るまで、中労委が中労委平成23年(不再)第71号事件について発した命令によって維持するものとした東京都労委平成20年(不)第37号事件について、東京都労働委員会がした平成23年9月20日付け命令の主文第1項に従い、会社は、全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合及び全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合HTS支部が、平成20年2月25日付け及び同年3月7日付けで当時の株式会社阪急交通社に、並びに同年5月21日付けで会社に申し入れた団体交渉事項のうち、労働時間管理に関する団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 申立費用は会社の負担とする。  
決定の要旨  1 本件救済命令の適法性
本件救済命令は、会社に対し、全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合(以下「本件労組」という。)及び全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合HTS支部(以下「本件支部」という。)が平成20年2月25日付け及び同年3月7日付けで当時の株式会社阪急交通社(以下「旧会社」という。)並びに同年5月21日付けで会社に対して申し入れた団体交渉事項のうち、労働時間管理に関する団体交渉に誠実に応じることを命じるものである。
 旧会社及び会社が前記各団体交渉の申入れに対し、自らが本件労組及び本件支部との団体交渉に応じる立場にない旨を述べて団体交渉に応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるといえ、また、会社は、平成20年4月1日の旧会社の吸収分割により、旧会社から、その旅行事業に関する権利義務とともに、労働組合法7条の使用者たる地位を承継したというべきであるから、本件救済命令は適法であると認められる。
2 緊急命令の必要性
(1) 中労委が平成24年11月7日付けで本件命令を発し、本件命令書が同月29日に会社に交付された後も、会社が本件救済命令を履行しておらず、会社には自発的に本件救済命令を履行しようとする意思がないこと、本案事件の判決の確定に至るまで本件救済命令の不履行の状態が継続した場合、本件労組及び本件支部の組織及び活動に著しい侵害を及ぼすことが一応認められる。
(2) この点につき、会社は、①本件支部組合員は、株式会社阪急トラベルサポート(以下「HTS」という。)の従業員であって、会社は、本件支部組合員との関係では労働者派遣法上の派遣先事業主であるところ、本件労組及び本件支部は、事業場外みなし労働時間制の適用問題については、派遣元事業主であるHTSとの間で団体交渉を行っているのであるから、緊急命令を発しなければ、会社によって侵害された団結権の回復が困難となることなどない旨、②仮に、緊急命令が発せられ、会社がそれに従って本件労組及び本件支部との団体交渉に応じることとなれば、それは実質的に本件救済命令が意図するところが実現されることを意味することとなるが、そうすると、会社は本件救済命令を不当としてその取消しを求める訴えの利益を喪失することになり、その後に本案訴訟で勝訴したとしても原状回復が不能又は著しく困難となる可能性が高い旨を主張する。
 しかしながら、前記①については、労働者派遣法44条2項により、派遣労働者の労働時間管理は、派遣先事業主である会社の責任において対応すべき事項であるから、本件労組及び本件支部が事業場外みなし労働時間制の適用問題についてHTSとの間で団体交渉をしているとしても、そのことにより、前記(1)の判断が左右されるものとはいえない。
 また、前記②については、本件救済命令の履行を命じる緊急命令の発出自体によって、当然に本件命令の取消しを求める本案訴訟の訴えの利益が失われるものとはいえないし、本件救済命令に係る団体交渉における交渉事項が、労働者に対する影響が大きなものであり、本件救済命令の不履行による本件労組及び本件支部の組織及び活動に対する侵害も大きいものであることを考慮すれば、前記②により緊急命令の必要性が左右されるものとはいえない。
(3) よって、緊急命令の必要性が一応認められる。  
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成20年(不)第37号 一部救済 平成23年9月20日
中労委平成23年(不再)第71号 棄却 平成24年11月7日
東京地裁平成24年(行ウ)第868号 棄却 平成25年12月5日
 
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