労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  田中酸素(21年冬季賞与団交等)  
事件番号  中労委平成23年(不再)第89号  
再審査申立人  田中酸素株式会社(「会社」)  
再審査被申立人  田中酸素労働組合(「組合」)  
命令年月日  平成24年10月3日  
命令区分  棄却  
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①営業所の休憩所に関して組合と合意した事項を履行しないこと、②21年10月22日付け労働協約(「本件労働協約」)に反し、団体交渉に決定権限を有していない者を出席させたこと、③本件労働協約及び21年12月19日の団体交渉で合意した事項(「本件合意事項」)に反し、賞与・昇給に係る会社側からの団体交渉申入れ及び十分な資料提示を行うことなく、21年冬季賞与、22年1月昇給及び同年夏季賞与を支給したこと、④22年1月26日及び同年3月22日に組合が申し入れた団体交渉を正当な理由なく拒否したことがそれぞれ不当労働行為に当たるとして、組合が山口県労働委員会(「山口県労委」)に救済申立てを行った事件である。
2 山口県労委は、上記1③のうち、21年冬季賞与及び22年1月昇給に係る会社の対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、会社に対し、組合との間の今後の賞与又は昇給に関する団体交渉において、本件労働協約を遵守し、必要な資料を提示して、会社の主張の根拠を具体的かつ合理的に説明し、誠実に対応することを命じ、その他の申立てを棄却したところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。  
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 会社の対応は、本件労働協約に反し、不誠実なものといえるか
①21年冬季賞与に係る会社の対応について
 本件労働協約では、賞与について、会社が売上げ・利益、査定資料及び組合員の査定結果を提出することとされている。
 しかし、会社は、自ら21年12月14日に21年冬季賞与等を議題とする団体交渉を申し入れながら、また、支給日の5~6日前には支給額を確定しなければならないにもかかわらず、支給予定日の3日前の同月19日の団体交渉において、組合員の賞与支給額すら分からないと回答し、売上げ・利益についても回答しなかった。そこで、別途説明日を設けることとなった(本件合意事項)が、当該説明日においても必要な資料提示は行われず、かかる会社の対応は本件労働協約に定める団交ルールを履践しているとはおよそいえず、不誠実なものであったといえる(下記(2)参照)。
 よって、21年冬季賞与に係る会社の対応は、本件労働協約に反し、不誠実であるといえる。
②22年1月昇給に係る会社の対応について
 本件労働協約では、昇給について、会社は決定次第、組合に団体交渉を申し入れることとされ、また、団体交渉は昇給の支給以前に行うこととされている。
 しかし、会社はこれを行わず、また、組合の22年1月昇給に係る団体交渉申入れに対しても、別件再審査事件の準備が忙しいとの理由をもって延期を申し出て、結局、支給日以前に団体交渉を開催していない。加えて、会社は同月昇給につき、組合に通知することなく、支給日当日の朝礼で全従業員に対し職能給について昇給しないことを口頭で通知しており、かかる会社の対応は組合を無視するものであったといえる。
 よって、22年1月昇給に係る会社の対応は、本件労働協約に反し、不誠実であるといえる。
2 会社の対応は、本件合意事項に反し、不誠実なものといえるか
 本件合意事項では、会社は、21年12月21日に、①21年冬季賞与の賞与総額の根拠を示す資料、②売上げ・利益、査定資料及び組合員の人事考課表を提示して説明することとなっていたが、会社は、同日に行った説明では、①については、21年夏季賞与と同額であるという内容の回答にとどまり、②については、提示した資料は、組合員の人事考課表のみであった。
 そうすると、本件合意事項の①については、21年夏季賞与と同額であるという内容の回答では求められた回答とは言えず、また、同②については、会社が提示した資料は組合員の人事考課表のみであり、売上げ・利益についての資料の提示がなされたと認められる証拠はない。
 よって、21年冬季賞与に係る会社の対応は、本件合意事項に反し、不誠実であるといえる。
3 以上のとおりであるから、21年冬季賞与及び22年1月昇給に係る会社の対応は、本件労働協約及び本件合意事項のいずれにも反し、不誠実であったと認められるので、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
山労委平成22年(不)第1号 一部棄却 平成23年12月8日
東京地裁平成24年(行ウ)第783号 棄却 平成26年1月20日
東京高裁平成26年(行コ)第63号 棄却 平成26年6月25日
 
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