労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ネオ 
事件番号  広労委平成21年(不)第8号 
申立人  株式会社ネオ 
被申立人  福岡市 
命令年月日  平成23年12月27日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①申立人組合の執行委員長X1を解雇したこと、②書記長X2を降格したこと、③副執行委員長X3を降格し、解雇したこと、④団交に応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 広島県労委は、会社に対し、上記3名の降格及び解雇をなかったものとして取り扱い、原職復帰及びバックペイの措置を講じることを命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、ネオ労働組合の執行委員長X1に対する平成21年8月1日付け解雇、同組合の書記長X2に対する同年6月15日付け降格、並びに同組合の副執行委員長X3に対する同年10月1日付け降格及び同月31日付け解雇をなかったものとして取り扱い、次の措置を講じなければならない。
(1) X1、X2及びX3を原職又は原職相当職に復帰させること。
(2) 前記降格及び解雇がなければ同人らが受けるはずであった賃金相当額を支払うこと。
  ただし、X1及びX3に対して本命令交付の日までの間については、同人らが受けるはずであった賃金相当額の半額を控除して支払うこと。
2 申立人のその余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 申立人組合執行委員長X1の解雇について
 X1は、本件解雇に先行してスーパーバイザー(SV)から一般社員に降格された後、被申立人会社の業務管理サイトから個人情報を取得して組合勧誘を行うなどの非違行為をしたことが認められる。しかし、当該非違行為は会社の業務に大きな影響を及ぼすものではないから、X1を指導的立場から外す降格に加えて、更に解雇を行うに値する理由があったとまではいえず、本件解雇は合理性を欠く扱いといわざるを得ない。また、SVから一挙に一般社員に降格させ、その2か月後に解雇するという取扱いは、タイムカードの不正打刻を行った他のSV(非組合員)に対する処分との対比において著しく均衡を欠くものである。さらに、解雇より先にまずは軽度の懲戒処分等により警告・注意を促すことが求められるところ、このような措置がとられていない。
 以上のとおり、本件解雇はその理由に合理性を認めるのは困難であるばかりか、非違行為の程度に比べ過重なものであり、また、解雇に至る会社の対応をみてもその悪意や性急さが認められ、解雇に相当性を認めることができない。
 次に、不当労働行為意思の存否についてみると、X1の降格及びこれと同時期に行われた組合の結成後、会社と組合との対立が日ごとに深刻化していた。こうした中で会社は組合の勧誘活動について記載した店舗通達を各店の従業員に発したが、これは組合への不信感を煽る内容のものであったとみることができる。また、会社の取締役の発言から、会社がX1を排除しようとする意思と組合への相当な嫌悪感をもっていたことが認められる。前述のとおり、X1に対する一連の処分は、非組合員に対するものに比べ著しく均衡を欠くものであり、そこにはX1に対する強い嫌悪の存在が認められる。
 以上を総合すると、本件解雇は会社がX1及び組合活動への嫌悪を決定的動機として、同人を会社から排除しようとしたものであると判断するのが相当であり、労組法7条1号の不当労働行為と認められる。
2 組合書記長X2の降格について
 X2は店長職としていくつかの点で問題があると認められる非違行為を行っているが、そのほとんどは会社が適切な注意や指導を行っていれば解決できたものと考えられ、また、会社の業務に重大な影響を及ぼしたという事情も認められないため、いずれも降格の理由となり得るほどの非違行為とはいえない。また、店長から一般社員への降格は、タイムカードの不正打刻を行った他の従業員(非組合員)に対して行った措置と比べ著しく均衡を欠く取扱いと認められる。さらに、降格に当たり、本人にその理由などを説明して納得させるなどの手立てを尽くすことなく、唐突に異動を発令しており、こうした会社の対応には問題があるといわざるを得ない。
 一方、会社の代表取締役らのX2に対する発言等にみられるように、会社は組合活動が活発化していくことに関して、相当な危機感を抱いていたことが認められる。会社がX2の降格理由の1つに挙げているパワハラ行為等についても、以前は放置していたものであって、組合結成後、にわかに降格理由として持ち出されたものと認めるのが相当である。
 以上を総合すると、本件降格は、会社のX2及び組合活動への嫌悪を決定的動機として行われたものと判断するのが相当である。
3 組合副執行委員長X3の降格及び解雇について
 X3の降格については、それ以前に処分の理由となり得るほどの非違行為があったとは認められず、合理性を欠くものといわざるを得ない。降格後の処分事由のうち解雇の決定的な原因となったものは、X3の発言がパートの集団退職につながったということであると認められるが、この集団退職は会社の労働条件等に原因があった可能性も否定できず、同人の発言は端緒となったに過ぎないと解されるから、十分な事実確認をしないまま解雇にまで及んだ会社の対応は妥当なものとはいえない。その他の非違行為も解雇の理由となり得るほどの重大なものとは認められない。
 また、本件解雇は明らかに懲戒の意図をもって行われたものであるが、X3への通告は電話連絡の際に解雇理由書が読み上げられただけであって、十分な弁明の機会が与えられていたとはいえない。
 以上のとおり、解雇にまで及んだことはX3の非違行為の程度に比べて不当に重い処分であり、解雇に至る会社の対応にも問題があるため、処分に相当性を認めることはできない。
 本件降格や解雇が行われた時期には、既にX1が解雇され、X2についても降格後は顕著な組合活動が認められなくなっており、積極的に組合活動を行う人物はX3ただ一人になっていた。会社は、このような事情の下でX3を解雇すれば、組合に大きな打撃を与えることを十分に認識していたと判断できる。そして、前述のとおり同人の処分理由に合理性及び相当性が認められないにもかかわらず、あえて処分に及んだことを併せ考慮すれば、会社には不当労働行為意思があったといわざるを得ない。
 以上から、本件降格及び解雇は、会社が従来から反組合的な意思を有していたという事情の下でX3及び組合活動への嫌悪を決定的動機として行われたものと判断するのが相当である。
4 団交拒否について
 組合は、第1回団交の席上で第2回団交の申入れを行ったと主張するが、組合から第2回団交の申入れを行ったことについての十分な疎明がない。また、本件救済申立ての後、第2回団交が会社からの申入れによって行われた。組合はこれを受け、本件団交拒否に係る申立ての取下げを検討しており、その後は会社に対し団交の開催を要求していない。そうすると、現時点においては、団交拒否に係る救済の利益は存しないというべきであるから、団交応諾を命じる必要は認められない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
広島地裁平成24年(行ウ)第5号 棄却 平成26年2月4日
広島高裁平成26年(行コ)第4号 棄却 平成26年8月29日
最高裁平成27年(行ツ)第439号・平成27年(行ヒ)第485号 上告棄却・上告不受理 平成27年9月29日
 
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