概要情報
事件名 |
ダイワボウレーヨン株式会社 |
事件番号 |
島労委平成21年(不)第2号 |
申立人 |
X(個人) |
被申立人 |
ダイワボウレーヨン株式会社 |
命令年月日 |
平成23年12月1日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が申立外組合の益田支部長であった申立人Xに対して、不当な配置転換を行い、解雇を示唆するなどして関連会社への転籍を強要することにより、同人を会社から退職させたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
島根県労委は、会社に対し、①Xの退職をなかったものとして取り扱い、退職前の職務に復帰させること、②文書掲示を命じた。
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命令主文 |
1 被申立人は、申立人の平成20年12月20日付け退職はなかったものとして取り扱い、同人を退職前の職務に復帰させなければならない。
2 被申立人は、下記内容の文書を、縦55センチメートル、横80センチメートルの大きさの白紙に楷書かつ大きな黒色の文字で明瞭に記載し、板に貼り付けた上、本命令書受領の日から1週間以内に被申立人の益田工場正門のそばの見やすい場所に30日間掲示しなければならない。
記
年 月 日(掲示する初日を記入すること。)
X 様
ダイワボウレーヨン株式会社
代表取締役 Y1
Xさんの平成20年12月20日付け退職は、当社による労働組合法第7条第1号違反の不当労働行為であると島根県労働委員会において認められました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
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判断の要旨 |
1 本件退職・転籍は、被申立人会社による不利益な取扱いと言えるか。
申立人Xは、退職・転籍すれば、①長年行ってきた業務と異なる業務を行わなければならず、そのために必要な資格を取得する必要があること、②自宅で行っていた母の介護ができなくなること、③給料が約20%下がること、④勤務先が自宅から車で2時間半程度かかること、⑤本件退職により申立外組合の組合員でなくなることが認められ、同人にとって不利益であると認められる。
また、Xが本件退職・転籍を自ら希望する合理的理由がなく、同人の自由意思に基づくものとも言えず、会社による不利益な取扱いと言える。
2 Xが主張する事実は、会社の不当労働行為意思を推認させるものであるか。
平成20年7月25日、組合本部の定期大会において役員の信任投票の結果、委員長Aが不信任とされたが、その直後の同月28日及び29日、Xが勤務していた益田工場の工場長Y3は、組合員でもある同工場の係長・主任スタッフ全員に対する訓示の中で、「ダイワボウレーヨンには、A委員長が重要な人物であり、支持していきたい」などと話したことが認められる。この訓示は、組合の委員長人事に対する介入的発言であり、会社の反組合的な意思を推認させる事実である。
会社の取締役Y2は、20年8月に開催された組合の臨時集会に出席した際、自らの労働運動観を説き、その考え方をもとに組合支部三役に対し、「対決行動に持っていくのなら、あなたがたは労働組合の後継者ではない」と発言したが、これは支部三役の組合活動及び発言に圧力を与え、自らの労働運動観を押しつけているのであり、それ自体介入に当たる。
Xら3名に対する配置転換について、会社の副部長Y4は「申立人ら3人は会社に対して不当労働行為が疑われる行為があったと指摘しているから、そういう人物が指揮命令を行う場にいると、(中略)そういう状態を解消するために申立人らの配置転換を行う必要があった」という趣旨の証言をしている。これは、Xら支部三役の組合活動を原因として同人らを配置転換したことを自認しているものである。また、配置転換後、Xには特に決まった仕事はなかったことなとが認められ、本件配置転換はXらを閑職の状況に追い込むという制裁的なものであったと解さざるを得ない。さらに、会社は、Xが退職した後までも、同人を会社から排除し続けたことが認められる。
以上のことから、会社の不当労働行為意思が十分推認される。
3 本件退職・転籍は、Xの正当な組合活動を理由に行われたか。
会社は、支部三役が定期大会においてAを排除するような行動をとり、組合との協調的関係を壊そうとしているとして、Xを排除しようとしたと認められる。そして、AとともにXらの中央執行委員会等における言動を追及し、解雇を示唆し、配置転換を行い、Xを追い込み、結局退職届を出さざるを得ない状況を作出したことが認められる。以上のとおりであって、会社が正当な組合活動を理由に退職を事実上強要したのは不当労働行為以外の何ものでもない。
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掲載文献 |
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