概要情報
事件名 |
大阪府労委平成21年(不)第65号・第78号 |
事件番号 |
大阪府労委平成21年(不)第65号・第78号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
株式会社Y、有限会社Y2 |
命令年月日 |
平成23年2月28日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が①組合員Dの業務を、入社以来従事してきた業務から変更したこと、②Dが待機していた倉庫内にカメラを設置したこと、③組合公然化以後、Dに土曜日の就業をさせなくなったこと、④上記①及び③の問題を議題に含む団体交渉に誠実に対応しないこと、⑤Dの労働条件等の提示を、組合を通さず直接本人に行っていること等は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は、被申立人会社Y2に対する申立てを却下し、被申立人会社Yに対し、Dが上記③により就業しなかった土曜日に係る賃金を支払うとともに、今後、他の従業員と同様に土曜日に出勤する機会を与えること及び申立人組合への文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人有限会社Y2に対する申立てを却下する。
2 被申立人株式会社Yは、申立人組合員Dに対し、平成20年11月29日から本命令交付日までの間の土曜日について、他の従業員の平均出勤日数から同人が出勤した日数を差し引いた日数分の賃金相当額を支払うとともに、今後、他の従業員と同様に、土曜日に出勤する機会を与えなければならない。
3 被申立人株式会社Yは、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X 労働組合
執行委員長 A 様
株式会社Y
代表取締役 B
当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、(1)については労働組合法第7条第1号及び第3号に、(2)及び(3)については同条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
記
(1) 貴組合員D氏に対し、貴組合加入後、土曜日の出勤をさせなかったこと。
(2) 平成20年11月27日、当社企画室長Eが、貴組合員D氏に対し、貴組合を誹謗中傷する発言を行ったこと。
(3) 平成20年11月27日、当社取締役Fが、貴組合員D氏に対し、組合加入の経緯を聞き取りしたこと。
4 被申立人株式会社Yに対するその他の申立てをいずれも棄却する。 |
判断の要旨 |
1 被申立人会社Y2は、組合員Dの労組法上の使用者に当たるか。
Dは被申立人会社Yの社員であり、Yの業務に従事していると認められるが、申立人組合が主張するように同社とY2が実質的に一体の会社であるということはできず、また、DがY2の業務に携わっていたとまでみることもできないから、Y2はDの労組法上の使用者に当たるとはいえない。
2 Dの業務が変更されたとすれば、同人が組合に加入したことを理由として行われた不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。
Dの担当業務の一部がなくなったことは確かであるが、それは同人の組合加入を理由とするものとはいえず、また、同人が倉庫内にいることを余儀なくされているともいえないことから、不当労働行為には当たらない。
3 カメラが倉庫内に設置されたことは、Dに対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。
Yには盗難予防のための対策を行う必要があったといえ、また、Dが不快に感じたのであれば自らの意思で倉庫での待機をやめられる状況にあったと考えられるから、カメラが倉庫内に設置されたことは不利益取扱い及び支配介入に当たるとはいえない。
4 Dの勤務について、土曜日が休日とされたことは同人が組合に加入したことを理由として行われた不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。
当時Yと組合との間には裁判所において係争中の事件があり、両者の関係は決して良好であるとはいえない状態であったと推測できることから、YがDの組合加入公然化直後から土曜日の出勤をさせなくなったのは、Dの組合加入を嫌悪したことによるものといわざるを得ず、またYにおける組合員であるDを不利益に取り扱うことにより組合活動への圧力を加えたとみることができることから、かかる行為は労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為に当たる。
5 組合の団交申入れに対する被申立人らの対応は不当労働行為に当たるか。
Yは組合が説明を求めた事項に対する説明を一定程度行っていることなどから、その対応が不誠実であったとまではいえない。
6 Dの労働条件等の提示を、組合を通さず直接本人に行っていること等は組合に対する支配介入に当たるか。
平成15年に組合とYとの間で締結された協定書がDの組合加入時点で有効に存続していたとは認められないことから、Yに組合との事前協議に応じる義務はなく、したがってYの対応は組合を無視ないし軽視したものとはいえない。 |
掲載文献 |
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