労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  京都淡路交通 
事件番号  京都地労委昭和40年(不)第45号 
申立人  個人A 
被申立人  京都淡路交通株式会社 
命令年月日  昭和44年 9月 4日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要  1 会社が、経歴詐称等を理由に組合活動家を懲戒解雇したことが、不当労働行為に当たるとして、京都地労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審京都地労委は、原職復帰とバックペイを命じ、バックペイからの中間収入の控除を認めなかった。
命令主文   被申立人は、申立人Aを原職に復帰させるとともに、昭和40年11月26日から原職復帰に至るまでの間、同人がうけるべきはずの諸給与相当額を支払わなければならない。
判定の要旨  1 組合活動について
 Aは入社時からX組合京都地方連合会(以下「地連」という。)の組合員であり、40年春闘ごろより分会の班長をつとめ、その後は、しばしば欠勤していた役員に代って事実上、分会のリーダー格となって活動し、特に組合分裂後の淡路分会役員の補充選挙では書記に選ばれ、その後は、機会あるごとに分会交渉の申入れをし、かつ団交にも出席して、その内容を記録するなど次第に淡路分会の中心となって行動していた事実、さらに同人は地連の闘争委員会をはじめ、地連の統一行動にも積極的に参加していた事実等からすれば、同人の活動は継続的で、活発であったことが認められる。
2 解雇について
(1) 組合事務所の件について
 Bが部屋(会社の休養室)を借りたいきさつは、当時分会長であった同人が、春闘中組合用務のため、また通勤に不便である等の事情によるものであり、同人が宿泊に使用する一方、分会長として組合用務を行なうため、部屋の入口に組合事務所の表示をし、組合の事務用品、備品等を保管し、ポスターも貼付されており、組合員は同部屋を組合事務所として自由に出入りし、さらにたまには団交も同部屋にて開催していたのであって、事実上組合事務所として使用していたとみられ、会社としてもこれを知りながらなんらの異議を申し述べた形跡もなく、従って、すくなくとも暗黙の承認をしていたものと判断し得るばかりでなく、支配人も明示の承認を与えているのである。
 なお、会社は、Bが退職と同時に同部屋の賃貸借関係は消滅したにもかかわらず、Aが同部屋を組合事務所と称して鍵を所持し、会社からの返還に応ぜず、そのために使用できなかったと主張するが、すでに組合事務所としての使用を認めた以上、Bの退職と同時に同部屋の返還を求めようとするのは分会の都合を無視した行為であり、他面、淡路労組に対しては、貸借申入れに即刻部屋を提供し、同労組がこれを組合事務所として使用することを承認して便宜を供与していることを合わせ考えると、対照的な差別待遇と言わざるを得ないのであり、従って、Aが同部屋を組合事務所として使用中であることを理由として鍵の返還をしなかったことをもって解雇理由としたことは首肯し難い。
(2) 経歴詐称について
 確かにAが提出した履歴書には前歴に一部記載もれがあったことは事実である。しかし、会社においては、従来から就業規則に経歴詐称についての規定をおいていたにもかかわらず、履歴書に不実の記載をした者もあり、中には入社後2年ほどしてから履歴書を提出した者もあるような事実に徴すれば、会社としても、その履歴をさほど重視していたとも思われない。
 しかしてAの記載もれのことは、昭和21年8月から同24年8月まで市交通局に勤務していたことおよび同局をレッドパージによって解雇された部分を指すものであるが、本来ハイヤー・タクシー業界において会社が運転者に期待するものは、自動車の運転技術およびその経験が主となるものと考えられ、前記のような経歴の詐称、特に本件のごとき20年前の古いことなどをことさら取り上げて解雇理由としたことは、社会通念上その合理性を見出すことができない。
 そこで、会社のA解雇の真の理由について考えるに、会社における淡路労組結成のいきさつ、その他淡路分会に対する労働条件の差別の事実、Aが淡路分会のリーダー格となって積極的に活動を行なってきた事実に、前述のように解雇理由の首肯し難いことを合わせ考えると、会社は、同人の組合活動を嫌悪して企業外に追放し、ひいては、淡路分会の弱体化を意図し、口実をもうけて本件解雇に出たものと推認せざるを得ない。
 以上総合考察すれば、本件解雇は明らかに労組法7条1号に該当する不当労働行為であると判断せざるを得ない。
3 給与相当額の遡及支払いについて
 労働委員会における不当労働行為による救済は、使用者のなした不当労働行為を排除することによって労働者を不当労働行為がなかったと同じ状態に使用者をして回復させることにあるのであるから、その手段として給与相当額の支払いを命ずるに当っては、使用者が解雇しなければ当然負担したであろう金額の支払いを命ずべきである。
 労働者は解雇されれば生活困窮を防止するためにもやむを得ず収入を他に求めなければならないことは当然予想されるが、たとえ労働者が解雇期間中他所から収入を得ていたとしても、上記制度の趣旨から考えてそれを給与相当額から当然控除すべきものではない。
その他  

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
京都地裁昭和44年(行ウ)第33号 一部取消 昭和49年 3月15日
大阪高裁昭和49年(行コ)第17号・第18号 棄却 昭和49年10月30日
最高裁昭和50年(行ツ)第30号 上告棄却 昭和52年 5月 2日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約197KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。