労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  モービル石油(組織外通告) 
事件番号  中労委平成14年(不再)第20号 
再審査申立人  スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合 
再審査被申立人  エクソンモービル有限会社 
命令年月日  平成22年6月2日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①平成9年の組織の見直し、合理化のための早期退職支援制度を実施するに当たり、組合との団交を誠実に行わなかったこと(労組法7条2号)、②組織変更を実施した際に、組合の大阪支店支部の組合員4名全員を新組織の枠外として配属したこと(同法7条1号)、また、当該組織変更の実施に関して組合との団交を誠実に行わなかったこと(同法7条2号)、が不当労働行為に当たるとして申し立てられた事件である。
2 初審大阪府労委は、本件申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として、再審査を申し立てた。
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。
判断の要旨  1 支部組合員4名を組織外として本件配属をしたことが不利益取扱いに当たるか(争点1)について
(1)合理化の合理性について
①合理化による人員削減措置を実施する場合、高度の経営上の判断からの「戦略的合理化」も不当とはいえないこと、及び②当時の石油元売り各社は何れも大幅な利益の減少傾向にあり、リストラが実施されていたことからすれば、会社の合理化自体に必要性、合理性がなかったとまではいえない。
(2)支部組合員の組織外扱いについて
①会社は全社的に支部組合員が従事するクラーク職(160名中15名)を削減対象としたこと、及び②新組織では大阪支店のクラーク職は3名分とされ、8名が組織外とならざるを得ない事情があったことからすると、支部組合員4名全員が組織外とされたことは直ちに不当とまでは認められない。
(3) 「組織外」の選考について
①選考基準と選考手続について、会社は2回の団交で説明しており、その内容も仕事に対する責任度等の5項目について考慮したもので概ね信用でき、不合理とは認められないこと、及び②実際の選考も、支部組合員4名の直前の業績評価が最低ランクであり、組織内とされた他のクラークと比べ勤務成績・勤務態度に遜色ないとの組合の概括的立証がないことから、会社の選考が合理性・公平性に欠けるとまではいえない。
(4)本件配属先における業務内容等について
①「組織外」とされた支部組合員4名に対して命じられた業務は、臨時的な業務であったが、総務的、事務的業務等が命じられていたこと、②当該4名の配置も隔離したものとはいえないこと、及び③組織外とされた前後で当該4名の勤務地、賃金、労働時間等の基本的な労働条件に変更はなかったこと等から、本件配属をもって不当な取扱いをしたとはいえない。
(5) 不当労働行為の成否
以上の(1)~(4)に加え、本件当時、会社が組合を嫌悪していたとみるべき事情は立証されていないことからすれば、会社が不当労働行為意思に基づき、支部組合員4名について本件配属をしたとみることはできない。従って、この点に関する申立てを棄却した初審命令の判断に誤りはない。
2 本件団交における会社の対応が団交拒否ないしは誠実交渉義務違反に当たるか(争点2)について
(1)早期退職支援制度及び組織変更に関する団交について
 早期退職支援制度及び組織変更に関する団交は、それらの措置の撤回や事前協議等を求める組合の主張に正面から会社が反論する中で、交渉は平行線をたどって膠着状態となり、組合の救済申立て後は、支部組合員4名に対する組織外通告及び本件配属に関する団交に収斂していったもので、会社の対応を誠実交渉義務違反とか、実質的な団交拒否とはいえない。
(2)組織外通告及び本件配属に関する団交について
 団交で、①会社は、組織外とされた支部組合員4名の業務内容、処遇について相応の説明をしていること、②支部組合員全員の組織外への配置等を根拠に組合間差別と主張する組合と会社の見解が対立し、双方の主張が平行線で膠着状態になっていたこと、③事前協議約款や、その他会社が組合と事前協議をなすべき特段の事情もないのに、組合は、組織外通告及び本件配属は組合と事前協議の上合意がなければ実施できないのだから、制度を停止ないし撤回して協議すべきとの頑なな姿勢を取っていたことからすれば、会社の対応を誠実交渉義務違反とか、実質的な団交拒否とはいえない。
(3)以上のことからすれば、この点に関する申立てを棄却した初審命令の判断に誤りはない。

以上のとおりであるから、組合の本件再審査申立てには理由がない。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪地労委平成9年(不)第44号・第73号 棄却 平成14年4月23日
東京地裁平成22年(行ウ)第747号 却下・棄却 平成25年2月20日
東京高裁平成25年(行コ)第99号 棄却 平成25年7月30日
 
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