労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ゼンショー 
事件番号  中労委平成21年(不再)第43号 
再審査申立人  株式会社ゼンショー 
再審査被申立人  東京公務公共一般労働組合 
命令年月日  平成22年7月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、アルバイト従業員の未払時間外割増賃金等を議題とする平成19年1月17日付け団交申入れに応じないことは労組法7条2号の不当労働行為に当たるとして申し立てられた事件である。(なお、組合が都労委に提出した同日付けの「不当労働行為救済命令申立書」によれば、組合が本件において救済を申し立てる事実は、会社が本件団交申入れを拒否したこと(都労委の認定)ではなく、会社が救済申立時まで本件団交申入れに応じないことと解するのが相当である。)
2 初審東京都労委は、会社に対し①団交誠実応諾、②文書交付及び③履行報告を命じたところ、会社はこれを不服として再審査を申し立てた。
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。
判断の要旨  1 組合の申立適格(争点(1))について
 会社は、組合が組合員の大半が労組法上の労働者でない、いわゆる合同労組であり大衆運動ないし一時的集団にすぎない、政治活動を主たる目的とする団体である等の事情から、労組法2条の要件を満たしておらず申立適格を欠くと主張するが、組合は当委員会の資格審査において、同法2条及び5条2項規定の労働組合資格要件に適合する旨決定されたもので、申立適格を有すると認められる。
2 本件団交申入れは「雇用する労働者」に関する申入れか(争点(2)ア)について
 会社は、本件団交申入れ時、会社と使用従属関係にある者が組合に所属していたか否かは明らかでないと主張する。しかし、Xら10名が18年11月に組合に加入しており、本件団交申入れ時に全員が脱退していたことを認めるに足りる証拠はないから、Xら10名は、本件団交申入れ時に組合に加入していたと推認される。
 また、会社は組合員Xらは業務委託契約で、労働契約関係にないとも主張するが、業務マニュアル、労務管理状況、時給制等から、労働契約関係であることは明らかである。
 よって、本件団交申入れは、「雇用する労働者」(労組法7条2号)に関するものと認められる。
3 会社が本件団交申入れに応じないことに「正当な理由」はあるか(争点(2)イ)について
 会社が以下の理由で本件団交申入れに応じないことに「正当な理由」(労組法7条2号)は認められない。
ア 交渉事項が特定されていなかったとの点(不応諾理由1)について
 本件団交申入れにおいて、組合は、交渉事項を①未払時間外割増賃金の支払、②組合員への差別的な勤務時間制限(シフト差別)としていたところ、会社は、組合員の氏名、時間外割増賃金を支払うべき労働時間や金額等を組合が明らかにしなかったと主張する。しかし、本件団交申入れの前月に、組合はXら10名の未払時間外割増賃金の支払及びシフト差別の是正を求め、これに対し、会社がXらへのシフト差別はないと回答していたのであるから、本件団交申入れがXら10名に関することは、会社が容易に認識し得たというべきである。また、実労働時間に関する資料は使用者側が保有していることに照らせば、時間外勤務の具体的内容は、団交を通じて特定されれば足り、団交申入れ時に労働組合側が特定できなくとも、団交拒否は許されないというべきである。
 よって、本件団交申入れにおいて団交に応じることを困難ならしめる程度に交渉事項が特定されていなかったということはできず、交渉事項が特定されていないとする会社の主張は、本件団交申入れに応じない「正当な理由」に当たらない。
イ 青年ユニオン(組合の下部組織)は労組法上の労働組合たる資格を欠いていたとの点(不応諾理由3)について
 会社は、本件団交申入れの主体を青年ユニオンと認識し、青年ユニオンは労組法2条の要件を具備する独立した労働組合でないと主張するが、組合と青年ユニオンが本件団交申入れ及びその前後の要求等も一貫して連名で行っていたこと等から、会社は、本件団交申入れの主体に組合が含まれることを容易に認識し得たというべきである。
 よって青年ユニオンが労組法上の労働組合たる資格を欠くとの会社主張は、その前提において合理性を欠き、本件団交申入れに応じない「正当な理由」に当たらない。
ウ 組合が組合員名簿を開示しなかったとの点(不応諾理由4)について
 会社は、組合の組合員が現在お会社と使用従属関係を有するか、組合員に会社の利益代表者が含まれていないかを確認するため、組合員名簿の開示を求めたが、開示されず、組合員を団交の当事者たり得るか判断できなかったと主張する。しかし、会社は、本件団交申入れがXら10名に関するものであると容易に認識し得たのであるから、組合員に加入する従業員を特定するために組合員名簿を閲覧する必要はなかった。また、会社は、組合に利益代表者が加入していることを疑うべき根拠を明らかにせず、組合による資格審査決定書提示後も同主張を繰り返しており、会社の対応に合理性は見い出し難い。
よって、組合が組合員名簿を開示しなかったとする会社の主張は、本件団交申入れに応じない「正当な理由」に当たらない。
エ 組合が違法な活動を行ったとの点(不応諾理由5)について
 会社は、組合が街頭で横断幕を掲げて行進し、営業中の会社の店舗内で従業員にビラを手渡す等の営業妨害により自ら円満に交渉する機会を放棄したと主張する。しかし、組合の街宣活動等は、会社が本件団交に応じない状況の下で行われ、その目的が労組法に反するとはいえず、内容もXら10名の申告を根拠とし、態様も実力行使により使用者の管理権を排除するほど強度のものではないから、街宣活動等が一件明白に正当性を欠くとはいえず、団交開催の支障になるとはいえない。また、組合の報道機関への対応や労働基準監督署への申告等が違法であるとはいえない。
 よって、街宣活動等を理由に本件団交申入れに一貫して応じないことは許されないというべきで、組合が違法な活動を行ったとの会社の主張は、本件団交申入れに応じない「正当な理由」に当たらない。
オ 会社が組合の求める交渉事項(未払残業代の支払及びシフト差別の解消)に応じる理由はないとの点(不応諾理由6)について
 会社は、Xら組合員は労働基準法上の管理監督者であり、時間外割増賃金の支払義務はないと主張するが、使用者が労働組合の要求に応じる意思がなくとも、団交の場で説明し理解を得るよう努力すべきで、要求に応じる意思がないことを理由に団交を拒否することは許されないというべきである。また、時間外労働を推奨するかのごときシフト差別の解消に応じる必要はないとも主張するが、組合が組合員にも他の従業員と同様、公平に残業の割当てを求める場合にまで一切交渉に応じない態度は不当である。
 よって、交渉事項に応じる余地はないとする会社の主張は、本件団交申入れに応じない「正当な理由」に当たらない。
4 まとめ
 以上の次第であって、組合が申立適格に欠けるところはなく、会社が本件団交申入れに応じないことは労組法7条2号の不当労働行為に当たるというべきであるから、本件救済申立てには理由がある。そして、初審命令は、これを維持するのが相当である。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成19年(不)第39号 全部救済 平成21年10月6日
東京地裁平成22年(行ウ)第537号 棄却 平成24年2月16日
東京高裁平成24年(行コ)第106号 棄却 平成24年7月31日
 
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