概要情報
事件名 |
論創社 |
事件番号 |
中労委平成19年(不再)第44号 |
再審査申立人 |
有限会社論創社 |
再審査被申立人 |
東京・中部地域労働者組合 |
命令年月日 |
平成21年1月21日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、[1]平成17年3月31日をもって組合員A(以下「A」)の雇用を打ち切ったこと(本件雇止め)、[2]組合の申し入れたAの雇用問題等に関する団体交渉(本件団体交渉)に誠実に応じず、その後同問題に係る団体交渉を拒否したこと、[3]組合員を脱退させたり、インターネットの掲示板に組合を誹謗・中傷する書き込みを行う等、組合の活動に介入したことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、会社に対し、[1]Aの新たな雇用条件について合意するまで、従前と同様の雇用条件が継続していたものとして取り扱うこと、[2]同人の雇用問題等に関する団体交渉に誠実に応じること、[3]これらに関する文書手交を命じ、その余の救済申立ては棄却した。
会社はこれを不服として再審査を申し立てた。
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命令主文 |
初審救済命令を取り消し、これに係る救済申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) 本件雇止めの労組法7条1号及び3号該当の有無
ア Aの本件雇用は17年3月末までの期間に限定するという合意があったか。同年4月以降正社員とする約束があったか。
[1]大学の任期制助手であるAの就労申し出当時の希望は助手の期間におけるアルバイト先の確保であったこと、[2]本件雇用はその期限を17年3月末とするものであったこと、[3]同人の報酬は正社員の給与に比べ著しく低い額であったこと、[4]他方で大学から任期制助手の報酬として給与が支払われていたこと等の事情を併せ考えると、本件雇用に関する会社とAとの合意は、助手の任期中のアルバイトとして17年3月まで就労することを内容とするものであったと認められる。また、本件雇用に係る労働契約の締結に際して、会社とAの間に助手任期満了後は同人を正社員にする約束があったとみることはできない。
イ 会社社長は、16年12月28日の面談においてAに本件雇止めを告知したか。
(ア) 上記アのとおり、本件雇用は17年3月までの大学の助手任期中のアルバイトとしてのものであったと認められるから、雇用期間の終了約3か月前の面談において、会社社長が本件雇用の終了の確認を行ったとすることに不自然なところはない。また、同年2月2日付け組合ビラにおいても、本件雇用の契約解除を意味するとみられる記載や、Aが退社勧奨を受けていたことを示す記載がある。さらに、本件団交において、会社社長は、「12月28日の面談で来年3月で期限が切れることは話した」などと述べているところ、この発言が事実に反するという趣旨の組合からの反論、異議はなされていない。
(イ) そうすると、12月28日の面談において、会社社長は、Aに17年3月一杯で辞めて欲しいといい渡し、併せて、4月以降雇用する考えのないことを伝達したものと認められる。
ウ 本件雇止めは、組合所属を理由としたものか。
[1]Aらが組合に加入したのは16年11月9日であるとされているが、会社が17年1月5日の組合加入通告以前にAの組合加入を認識していた事情はうかがえないこと、[2]本件雇用はAの大学における助手任期中のアルバイトとしてのものであり、その期限は17年3月末までのものであったこと、[3]会社社長は同年1月5日のAの組合加入通告以前の16年12月28日にあらかじめ17年3月末で本件雇用の期間が満了するため、会社を辞めるように告げていること等からすると、本件雇止めは、Aが組合の組合員であることないし組合活動を行ったことの故をもって行われたものではないから、労組法7条1号及び3号には該当しない。
(2) 本件団交における会社の対応及びその後の団交不応諾の労組法7条2号該当の有無
ア 本件団交の過程において、会社は組合の要求に対する回答と本件雇止めの理由を率直に述べている。本件団交では、いずれもAの雇用は17年3月末までとする会社の主張と同年4月以降も継続すべきであるとの対立状態で推移して交渉が進展せず、膠着状態で推移しており、この点は本件団交の最終となった第5回団交においても同様であり、組合からは新たな提案等もなされていない。このような状況にかんがみると、同団交は、第5回団交においていわゆる行き詰まり状態に至っていたとみるのが相当であり、会社社長が本件団交の打ち切りを示唆する言動を行ったことには正当な理由がある。
したがって、本件団交におけるAの雇用問題に対する会社の対応を、不誠実団交あるいは正当な理由のない団交拒否であるとまではいえない。
イ 会社は、17年4月以降組合が申し入れたAの雇用問題について団交に応じていないが、上記のとおり、本件雇止め当時本件団交は行き詰まり状況となっていたこと、会社及び組合が対立している点については、本件救済申立てにおいて争点として争われており、この争点を棚上げにしての交渉の進展は望めないこと、組合からAの雇用問題に関し新たな提案がある等事情の変化がうかがわれないこと等を併せ考慮すると、会社が同問題に関する組合の団交申入れに応じていないことには正当な理由がある。
ウ したがって、本件団交におけるAの雇用問題に関する会社の対応及びその後の会社の団交不応諾は労組法7条2号には該当しない。
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掲載文献 |
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