概要情報
事件名 |
協和出版販売 |
事件番号 |
中労委平成17年(不再)第85号 |
再審査申立人 |
協和出版販売株式会社 |
再審査被申立人 |
日本出版労働組合連合会・協和出版販売労働組合 |
命令年月日 |
平成18年10月18日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
1 会社は、就業規則を改定し、定年年齢を55歳から60歳に引き上げたが、これに伴い55歳以降の組合員の賃金額を55歳直前に比し大幅に引き下げた。そこで、組合は会社に対し、団体交渉において55歳以降の組合員の賃金について、組合の要求する計算書類を開示して具体的に説明するよう求めたが、会社はこれに応じなかった。 本件は、上記団体交渉における会社の対応が労組法第7条第2号に該当するとして救済が申し立てられた事件である。 2 初審東京都労働委員会は、会社に対し、(1)55歳に達した組合員の賃金について、団体交渉における説明を求められた場合は賃金決定の具体的根拠を説明する資料を提示するなどして誠実に応じること、(2)(1)に関する文書交付等を命じたが、救済申立て時より1年前に行われた団体交渉に係る申立ては却下した。 これを不服として、会社は、救済部分の取消しと、これに係る救済申立ての棄却を求めて、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
(1) 初審命令が却下した部分を取り消す。 (2) 本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) 本件審査対象等について 組合らの本件救済申立書等によれば、本件の審査対象となる申立事実は、組合が平成12年6月1日付けで、55歳以降の賃金の根拠を明らかにするため、計算書類を提示し誠意をもって団体交渉で説明するよう求めたのに、会社が上記資料を提示せずその根拠を具体的に説明しなかったことである。そうすると、組合らの当該申立事実は、労組法第27条第2項で規定する申立期間の範囲内にあることは明らかであり、初審命令が救済申立ての一部を却下したことは相当でない。 (2) 団体交渉における会社の対応について ア 本件救済申立てに係る団体交渉までの事情をみると、定年延長後の従業員の賃金については、再三協議・交渉が行われているが、同賃金を185,000円とすることについては、会社の経営状態が厳しいことを理由とするものの、その具体的な説明を行っていない。当該会社の対応は、定年延長後嘱託社員となる55歳以上の者の賃金が55歳直前の賃金に比して4割程度減少し労働条件が大きく変動するものとなるにもかかわらず、会社がこのことについて誠意をもって説明し、組合の理解を得ようとしたものとは到底いえない。しかも、会社は、定年延長に伴う就業規則改定に当たっては、組合に知らせないまま別組合の委員長の意見を付して届け出を行っており、組合の存在を無視したものであった。 イ こうした中にあって組合は、改めて本件救済申立てに係る要求を行ったが、会社は、団体交渉については「従来どおりルールにのっとり誠意をもって対応する。」と回答するのみで組合の計算書類の開示要求には応えず、また、団体交渉では売上げが厳しいと応えるのみで、組合の具体的説明の求めや資料要求を拒否するなど、会社の対応は何ら従前と変わるものではなかった。 ウ 会社は、朝礼及び会議等で組合員は会社の経営状態を知ることができるから計算書類を開示する必要はないと主張するが、このことをもって団体交渉における資料提供に代置できるものではない。また、会社は、計算書類を開示すれば、会社の経営・信用に悪影響を与える虞があると主張するが、組合がそれまで配布したビラが会社の機密を暴くような内容を含んでいたとの事実はない。 エ 以上のように、嘱託社員の労働条件が55歳直前に比べ大きく変動することになった事情に鑑みると、組合らが経営状況を具体的に示す計算書類を提示して説明を求めることは首肯できる。また、会社の嘱託社員の賃金に関する説明は総論的・抽象的なものであり、会社が組合の理解を得ようとする真摯な努力を行ったとは認め難い。さらに、会社が計算書類を開示するよう求める組合らの要求に応じないことにつき会社が掲げる理由が合理的なものとは認められない。会社としては、定年延長後の組合員の賃金に関する提案内容について、資料を示してより具体的に説明すべきであり、そのためには組合が開示を求める計算書類のうち同提案内容の説明に必要な書類ないしはそれに代わる資料を開示すべきである。これを行わない会社の対応は不誠実なものといえ、このことは労組法第7条第2号に該当する。 オ 本件救済申立て後、会社は経営状態について説明を行っているが、従前と同様総論的・抽象的な説明しか行っていない。また、会社は、貸借対照表及び損益計算書の一部を模造紙に手書きして提示したが、開示した項目は限定的かつ概括的なものであって、これらの資料からは組合らが説明を求めている会社の経営を圧迫している要因や経費に占める人件費の割合等が読み取れないものであるから、このことをもって会社が誠実に対応したともいえない。 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集136集《18年9月~12月》1098頁 |