事件名 |
東海旅客鉄道(東京運転所) |
事件番号 |
東京地労委 平成 9年(不)第65号
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申立人 |
ジェイアール東海労働組合新幹線地方本部 |
申立人 |
ジェイアール東海労働組合新幹線地方本部東京運転所分
会 |
申立人 |
ジェイアール東海労働組合 |
被申立人 |
東海旅客鉄道株式会社 |
命令年月日 |
平成13年 2月 6日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含
む) |
重要度 |
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事件概要 |
①東京運転所長が、JR東海労の組合活動を批判、抗議、警告するビ
ラを全所員に配布したこと、②添乗員指導中の指導助役が、組合員に対し脱退勧奨をしたこと、③組合員X1に対し、列車遅通等
についての虚偽報告を理由に減給処分とし、運転業務から外したこと、④列車遅通に関わる労使協議に応じなかったことが争われ
た事件で、①組合員X1の減給処分がなかったものとして取り扱い、バックペイ及び通常業務への復帰、②文書手交を命じ、その
余の申立てについては棄却した。 |
命令主文 |
主 文
1 被申立人東海旅客鉄道株式会社は、申立人ジェイアール東海労働組合らの組
合員X1に対し、次の措置を講じなければならない。
(1) 平成10年3月5日付減給処分がなかったものとして扱い、同処分が
なければ得られた賃金相当額を支払うこと。
(2) 速やかに通常の運転業務に従事させること。
2 被申立人会社は、申立人組合らに対し、本命令書受領の日から1週間以内に、
下記内容の文書を手交しなければならない。
記
年 月 日
ジェイアール東海労働組合
中央執行委員長 X2 殿
ジェイアール東海労働組合新幹線地方本部
地方執行委員長 X3 殿
ジェイアール東海労働組合新幹線地方本部東京運転所分会
分会執行委員長 X4 殿
東海旅客鉄道株式会社
代表取締役社長 Y1
当社が、(1)貴組合員X1氏に対し、平成10年3月5日付で減給処分にし
たこと及び通常の運転業務に従事させていないこと、並びに(2)貴組合から
平成9年10月9日などに申入れのあった「ひかり48号」の遅通に係わる協
議要求に応じなかったことは、いずれも不当労働行為であると、東京都地方労
働委員会において認定されました。
今後このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を手交した日を記載すること。)
3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告
しなければならない。
4 その余の申立を棄却する。 |
判定の要旨 |
2620 反組合的言動
所長ビラは、一部問題点はあるものの、所長自ら確認した列車遅通の事実経過などを踏まえて、東京運転所の責任者としての立場
から、組合ビラを正常な業務を遂行するうえで、見過ごすことのできないものと捉えて作成、配布したもので、その動機において
やむを得ないものといえ、全体として未だ許容される範囲内にあるといえ、支配介入とはいえないとされた例。
2620 反組合的言動
3700 使用者の認識・嫌悪
会社が、列車遅通の責任の一端が助役にあるにもかかわらず、組合員のみに負わせている真の意図は、組合と厳しい労使関係にあ
るなか、組合がビラを配布、提示したことに嫌悪感を増大させた結果、組合員X1を見せしめ的に扱うことによって、組合の活動
に影響を与え、組合員らの動揺を誘うことにあったとみることができ、会社のX1に対する減給措置、運転業務外し等の措置は、
支配介入に当たるとされた例。
2620 反組合的言動
3020 組合活動への制約
会社の組合掲示ビラの撤去通告は、所長が、組合ビラの内容が、自ら確認した事実関係と著しく異なっていると捉えて、また、不
穏当な表現を用いているとして行ったものであり、威圧的な対応であった点において問題があったとしても、支配介入とはいえな
いとされた例。
2901 組合無視
会社が、組合からの列車遅通に関する協議開催要求に全く応じなかったことは、列車遅通の事実関係の解明や所長ビラ等に関する
説明がなされたとはいえないこと等からすると、組合活動に影響を与え、組合の弱体化を企図したものであり、支配介入に当たる
とされた例。
2621 個別的示唆・説得・非難等
組合員X5が事故を起こして、その後、組合を脱退した事実は認められるが、申立人らが主張する会社の脱退強要についての申立
ては、申立人らが、具体的な疎明を行っていないとして棄却された例。
2620 反組合的言動
乗務員待機室に置かれていた組合の所有物であるサークルファイル類を所長が持ち去ったことは、所長が同組合員に取りに来るよ
う伝えるなどして返却していること等から、組合の活動に対する支配介入に当たらないとされた例。
2901 組合無視
他の組合の乗務員待機室のレイアウト変更は、組合別とみられる面も存するが、会社が各区画を別組合に利用していたことを認識
していたのかについ明らかでないこと等から、組合差別に当たらないとされた例。
2621 個別的示唆・説得・非難等
東京運転所の助役らが組合の組合員らに電話をかけた際の発言は、だれがだれに行ったのかなど具体的に明かにされておらず、ま
た、所長の命令の下に行われたとの疎明がないことから、支配介入に当たらないとされた例。
2900 非組合員の優遇
東京駅業務応援者について発令した組合別人数比は、組合員に極端に偏ったものとなっているが、地本と新幹線本部との東京駅業
務応援に関する労使協議において、どのような取り決めがなされているのかが明らかでないことからすれば、組合別の人数比のみ
を持って不当労働行為であるとはいえないとされた例。
2900 非組合員の優遇
組合は、東京駅の副駅長や総務科長らが、業務応援者全員に対する個別の面談において、組合所属による不利益をちらつかせるな
どの言動を行った旨主張するが、これらに関する立証はなく、また、労使協議における、業務応援に関する取り決めの内容につい
て何らの疎明もされていないことから、個別面談の事実をもって会社に不当労働行為があるとはいえないとされた例。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集119集232頁 |
評釈等情報 |
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