概要情報
事件名 |
朝日火災海上保険 |
事件番号 |
東京地労委昭和58年(不)第103号
東京地労委昭和59年(不)第18号
東京地労委昭和59年(不)第70号
東京地労委平成 1年(不)第76号
東京地労委平成 3年(不)第72号
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申立人 |
X1 外18名 |
被申立人 |
朝日火災海上保険株式会社 |
命令年月日 |
平成 8年 1月23日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が<1>申立人らの全損保朝日火災支部の定例大会に向けて行う出席代議員の選出等の組合活動に介入したこと、<2>申立人ら17名を配置転換したこと、<3>申立人らの時間内組合活動休暇を承認しなかったこと、<3>申立人X2に対し全損保大阪地方協議会定例委員会出席のための組合活動休暇を承認せず賃金カットを行ったこと、<5>申立人ら19名の昭和56年から平成3年までの間の賃金及び賞与並びに昇格について差別を行ったことがそれぞれ不当労働行為であるとして争われた事件である。 東京地労委は、<1>については、支配介入の禁止、<2>については、X3ら6名の配置転換に関し、原職または原職相当職への復帰、<3>及び<4>については、支配介入及びX2に対する賃金カットの支払い、<5>については、差別の是正を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人朝日火災海上保険株式会社は、申立人らが申立外全日本損害保険労 働組合朝日火災支部の定例大会にむけて行う各分会からの出席代議員の選出等の 同支部の組合活動に関し、支配介入してはならない。 2 被申立人会社は、申立人らの時間内組合活動休暇を承認しないことによって 、同支部の組合活動に関し、支配介入してはならない。 また、被申立人会社は、X2に対する昭和59年3月16日の全損保大 阪地方協議会定例委員会出席に関する時間内組合活動休暇を承認しなかったこと に伴う、同年5月分賃金からカットした金276円を同人に支払わなければなら ない。 3 被申立人は、申立人らの配置転換について、次のとおり措置しなければなら ない。 <1> X3を昭和58年12月1日付で、本店自動車業務部の原職または 原職相当職に復帰させること。 <2> X4を昭和58年4月1日付で、本店東京営業本部の原職また は原職相当職に復帰させること。 <3> X5を昭和57年10月25日付で、本店東京営業本部の原職また は原職相当職に復帰させること。 <4> X6を昭和58年4月1日付で、大阪支店の原職または原職 相当職に復帰させること。 <5> X7を昭和58年8月5日付で、大阪支店の原職または原職相当 職に復帰させること。 <6> X8を昭和58年4月1日付で、千葉営業所の原職または原職相当職 に復帰させること。 4 被申立人会社は、申立人らの賃金・賞与・昇格の差別を是正するために、次 の措置を行うこと。 <1> 昭和58年10月以降平成3年度までの賞与について、人事考課査定 がD査定以下のものを、査定の中間評価であるCとして再査定して昇給させ、既 支給分との差額を支払うこと。 ただし、X9の58年を除く。 <2> 昭和58年12月以降平成3年度までの賞与について、人事考課査定 がD査定以下のものの査定部分を、査定の中間評価であるCとして再査定し、既 支給分との差額を支払うこと。(基礎となる賃金は<1>で是正した金額を基準 とする)。 <3> 昇格については各人(X2を除く)の職能資格格付けを、平成 3年6月1日以降、申立人ら各人の同年同期入社者に遅れないように取り扱うこ と。 5 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、55センチメートル ×80センチメートル(新聞紙2頁大)の大きさの白紙に下記の内容のとおり楷 書にて明確に黒色で書き、本社の正面入り口付近の従業員の見やすい場所に10 日間掲示しなければならない。 記 平成 年 月 日 (申立人全員の指名を掲記) 殿 朝日火災海上保険株式会社 代表取締役 Y1 当社が、貴殿らの、全日本損害保険労働組合朝日火災支部の定例大会にむけ て行う出席代議員の選出等の組合活動に介入したこと、時間内組合活動休暇を 承認しなかったこと、X2氏に対して全損保大阪地方協議会定例委員会 出席に関する時間内組合活動休暇を承認せず賃金をカットしたこと、X3氏 ・X4氏・X5氏・X10氏・X6氏・X7氏・X8氏・X9氏を配置転換 したこと、そして、賃金・賞与・昇格の差別をしたことは、不当労働行為で あると東京都地方労働委員会において認定されました。 今後このような行為を繰り返さないよう留意します。 (年月日は掲示の日を記載すること。) 6 第2項後段、第3項、第4項および第5項を履行したときは、すみやかに当 委員会に文書で報告しなければならない。 7 申立人らの配置転換に関するその余の申立、昭和56年から58年9月分ま での昇給にかかる賃金および昭和58年6月期以前の賞与に関する申立てを却下 する。 8 申立人らのその余の申立を棄却する。 |
判定の要旨 |
3104 別組合利用・別組合員宅訪問
組合の定例大会に向けて行う出席代議員の選出において、対立する候補者に投票することを組合員に働きかけるよう会社の課所長会議で決めたこと等が支配介入であるとされた例。
5200 除斥期間
組合員17名の配置転換について、それぞれの配転は別々の人物に対して行われたそれぞれ一個の独立した行為としてなされたものであり、配転発令から一年を経過した9人については申立期間を徒過しているとして却下された例。
1300 転勤・配転
組合員8名の配置転換が、A派としての組合活動等を嫌い、これを困難にするために行われた7条1号及び3号に該当する組合活動上の不利益扱いであるとともに支部に対する支配介入であるとされた例。
1600 休暇の取扱い
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
A派に属する組合員に労働協約による時間内組合活動休暇を承認しなかったことは7条1号及び3号に該当する組合活動上の不利益であるとともに支部に対する支配介入であるとされた例。
1202 考課査定による差別
組合員19名の賃金・賞与・格付け等の他社員との格差は公平な人事考課によるものではなく、A派としての組合活動を嫌悪したものであるとして7条1号及び3号に該当する不当労働行為とされた例。
4418 継続する行為を認めた例
賃金及び賞与についての不利益取扱いが毎年行われている場合には、労働者がその都度使用者に対して抗議し、会社がその是正をできたにもかかわらずそれを毎年繰り返している場合には「継続する行為」として捉えるべきであるとされた例。
5008 その他
賃金・賞与の是正については、その差別の行われた人事考課を正当なものに改めさせるのが適切であるが、その方法として各人がそれぞれ高位又は低位の評価を受けるであろうと推認できる格別の立証もないので、本件ではその中間値の評定に改めて是正措置を講じさせるのが相当であるとされた例。
4413 給与上の不利益の場合
職位に関しては、具体的にどの職位に任命するかについては会社の人事権に属しその裁量に負うところが大きく、また、組合員と管理職の地位との関連も否定できないとして、職能資格の格付けについては、組合員を各人の同年同期入社者に遅れないように取り扱うこととされた例。
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業種・規模 |
金融業、保険業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集104集36頁 |
評釈等情報 |
 
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