事件名 |
芝信用金庫 |
事件番号 |
中労委平成 1年(不再)第66号
|
再審査申立人 |
芝信用金庫 |
再審査被申立人 |
芝信用金庫従業員組合 |
命令年月日 |
平成 4年 8月 5日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
|
事件概要 |
金庫が、(1)金庫施設の貸与に当たり別組合と差別したこと、
(2)永年勤続表彰を組合員のみ他の職員と別個に行ったこと、(3)職員慰安旅行などの金庫実施行事に組合員を参加させな
かったこと、(4)平和条項締結を条件に傷病扶助制度等に関する協定申入れを拒否したこと、(5)組合員21名を昇進・昇格
させなかったことが争われた事件で、(1)については、別組合との差別取扱いの禁止及び文書掲示(社内報掲載を含む。以下同
じ)を、(2)については、他の職員と同一条件での実施及び文書掲示を、(3)については、組合員の参加できる職場環境の整
備及び文書掲示を、(4)については、平和条項締結を協定締結の条件とすることの禁止及び文書掲示を、(5)については、昇
進・昇格の実施、バックペイ及び文書掲示を命じ、併せて履行報告を命じた初審命令のうち、申立期間を経過した部分を却下し、
その他その一部を変更して組合の救済申立てを棄却したほかは、初審命令を支持し、再審査申立てを棄却した。 |
命令主文 |
主 文
I 初審命令主文第2項を次のように変更する。
2 再審査申立人は、再審査被申立人組合員の永年勤続表彰を他の職員と区別することなく、すべて同一条件で行うことができ
るよう早急に職場環境整備に努めなければならない。
II 初審命令主文第3項を次のように変更し、同項に係るその余の再審査被申立人の救済申立てを棄却する。
3 再審査申立人は、職員慰安旅行に再審査被申立人組合員が参加できるように積極的に職場環境整備に努めなければならな
い。
III 初審命令主文第5項及び第6項を次のとおりに変更し、これらの項に係るその余の再審査被申立人の救済申立てを棄却す
る。
5 再審査申立人は、再審査被申立人の組合員X1、同X2及び同X3を昭和61年
6月18日付けで店舗長代理又は店舗長代理待遇の推進役に昇進したものとして取り扱わなければならない。
6 再審査申立人は、再審査被申立人の組合員X4、同X5、同X6、同X7、同X8、同X9、同X10、同X11、同
X12、同X13、同X14、同X15及び同X16を昭和61年
6月18日付けで係長又は係長待遇の推進役に昇進したものとし、さらに、同年10月15日付けで店舗長代理又は店舗長代理待遇の推進役に昇進したものとして取り扱わなけれ
ばならない。
但し、X6については昭和62年 7月 4日までとし、X14については同年 7月20日までとする。
IV 初審命令主文第7項を次のように変更し、第8項を削り、これらの項に係るその余の再審査被申立人の救済申立てを棄却す
る。
7 再審査申立人は、再審査被申立人の組合員X17、同X18、同X19及び同X20を昭和61年
6月18日付けで係長又は係長待遇の推進役に昇進したものとして取り扱わなければならない。
V 初審命令主文第9項中、「、第7項および第8項」を「及び第7項」に改め、同項を第8項とする。
VI 初審命令主文第10項中、「被申立人」を「再審査申立人」に、「X2」を「X8」に、「東京都地方労働委員会」を「中
央労働委員会」に改め、「、歓送迎会、新年会、忘年会等」及び「昇格、」を削り、同項を第9項とし、同項に係るその余の再審
査被申立人の救済申立てを棄却する。
VII 初審命令主文第11項中、「第10項」を「第 9項」に改め、同項を第10項とする。
VIII 再審査被申立人の昭和61年 6月17日以前の昇進に係る救済申立てを却下する。
IX X21に係る初審命令を取り消し、同人に係る再審査被申立人の救済申立てを却下する。
X その余の本件再審査申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
1200 降格・不昇格
従組員X1ら3名及びX6ら14名は店舗長代理又は店舗長代理待遇の推進役に昇進させなければならないところ、従組員のみが
係員のままに据え置かれていることが不当労働行為に当たるとされた例。
1200 降格・不昇格
従組員X1ら4名を副参事に昇格させず、その結果店舗長代理に昇進させないことが不当労働行為に当たるとした初審命令を変更
した例。
1200 降格・不昇格
従組員X1ら4名を係長又は係長待遇の推進役に昇進指せないことが不当労働行為に当たるとされた例。
1601 福利厚生上の差別
金庫の永年勤続表彰の実施に当たり、従組員の式の開催時間、出席者について差別したことが不当労働行為に当たるとされた例。
1601 福利厚生上の差別
職員慰安旅行について従組員のみが除かれていることが不当労働行為に当たるとされた例。
1601 福利厚生上の差別
金庫における新年会、忘年会、歓迎会等の開催が個人的な領域を越えて、職場としてどの程度計画的、組織的に行われたかの疎明
はなく、これらの開催が金庫の行為と断定できず、不当労働行為に当たるとはいえないとされた例。
1601 福利厚生上の差別
金庫が、傷病扶助制度及び人間ドック制度を従組員に適用する前提条件として平和条項の締結を提案し、従組がこれを拒んだこと
を理由に両制度の適用を拒否したことが不当労働行為に当たるとされた例。
2901 組合無視
3020 組合活動への制約
従組から貸与の申入れのあった第一分室の会議室を別組合には貸与しながら従組には貸与しないことが支配介入に当たるとされた
例。
4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
すでに金庫を退職したX6及びX1については退職日までの間は救済を求める利益があるので、その職位にあったものとして取り
扱うことが必要であるとされた例。
4415 賃金是正を命じた例
従組員X1ら3名及びX6ら14名への付与すべき職は、店舗長代理又は店舗長代理待遇の推進役とすることが相当であり、店舗
長代理に限定される理由はないとして、初審命令主文の当該部分を変更した例。
5142 申立意思の放棄
従組がX1について救済申立てを取り下げる旨の文書を提出したことは、従組が同人に係る救済申立てを維持する意思を放棄した
ものと認め、その部分の申立てを却下した例。
5201 継続する行為
昇進については、その決定行為がなされた時点で完了し、継続する行為とは認められないとされた例。
5200 除斥期間
昇進が継続する行為に当たらないとしても、本件申立ては、申立日より前1年以内の昇進時点において、現に存する差別ないし不
利益な取扱いの是正を求める趣旨と解するのが相当であるとされた例。
|
業種・規模 |
金融業、保険業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集95集883頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 平成 4年11月10日
850号 16頁
|