事件名 |
芝信用金庫 |
事件番号 |
東京地裁平成 4年(行ウ)第238号
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原告 |
X1外22名 |
原告 |
芝信用金庫従業員組合 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
芝信用金庫 |
判決年月日 |
平成10年10月 7日 |
判決区分 |
救済命令の一部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、金庫が、(1)施設の利用について別組合と差別したこと、
(2)組合員の永年勤続表彰を他の職員と別個に行ったこと、(3)職員慰安旅行などの行事に組合員を参加させなかったこと、
(4)平和条項締結を条件に傷病扶助制度等に関する協定締結の申入れを拒否したこと、(5)組合員21名を昇進、昇格させな
かったことが、それぞれ不当労働行為であるとして争われた事件である。
初審東京地労委は、(1)については、別組合との差別取扱いの禁止を、(2)については、他職員と同一条件での実施を、
(3)については、組合員の参加できる職場環境の整備を、(4)については、平和条項締結を条件とすることの禁止を、(5)
については、組合員21名の昇進・昇格の実施、バックペイを、併せて、これらに係るポスト・ノーティスを命じた。
これを不服として、金庫からの再審査の申立てがなされ、中労委は、初審命令のうち申立期間を徒過した部分を却下し、その他
命令の一部を変更して組合の救済申立て(X2外3名の副参事昇格、店舗長代理への昇進等)を棄却したほかは、初審命令を維持
した。
これに対して、組合は行政訴訟を提起したところ、東京地裁は、組合の請求を一部容認し、中労委命令の一部を取り消した(組
合員21名の昇進・昇格に関して、X2外3名の副参事昇格を認容、X3ら19名の店舗長代理等への昇進時期を昭和62年4月
1日に変更すべきであるとしている)。 |
判決主文 |
1 原告X1外22名の各訴えをいずれも却下する。
2 被告が中労委平成元年(不再)第66号事件(初審東京地労委昭和62年(不)第45号事件)について平成4年8月5日付
けで発した命令主文のうち、Ⅲ項、Ⅳ項、Ⅴ項、Ⅵ項及びⅧ項を取り消す。
3 原告芝信用金庫従業員組合のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は、原告芝信用金庫従業員組合を除く原告らと被告との間においては、被告に生じた費用の10分の1を原告芝信用
金庫従業員組合を除く原告らの負担とし、その余は各自の負担とし、原告芝信用金庫従業員組合と被告との間においては、原告芝
信用金庫従業員組合に生じた費用の5分の4を被告の負担とし、その余は各自の負担とし、補助参加によって生じた訴訟費用は、
原告芝信用金庫従業員組合を除く原告らと補助参加人との間においては、補助参加人に生じた費用の10分の1を原告芝信用金庫
従業員組合を除く原告らの負担とし、その余は各自の負担とし、原告芝信用金庫従業員組合と補助参加人との間においては、原告
芝信用金庫従業員組合に生じた費用の5分の4を補助参加人の負担とし、その余は各自の負担とする。 |
判決の要旨 |
6150 当事者能力・当事者適格
労働委員会の手続きにおいて申立人とならなかった労働者の労委命令取消訴訟における原告適格について、労働者個人は、組合申
立てが初審・再審査で棄却、又は使用者の再審査申立てが認容されても救済を受ける権利を侵害されず、救済命令履行利益も事実
上の利益なので所属組合の取消訴訟の請求棄却判決の既判力も受けないから、本件初審の審査手続き及び再審査手続きにおて申立
人とならなかった労働者は労委命令取消しを求める「法律上の利益(行政事件訴訟法九条)」を有しないので原告適格は肯定でき
ないとして、原告労働者20名の本件訴えを却下した例。
1601 福利厚生上の差別
歓送迎会等に組合員を参加させないことについて、成果を上げた店舗の報償金からの費用支弁、店舗管理者の参加、会社刊行物へ
の記事掲載、本件和解協定案での組合員を区別せず参加させる旨の会社誓約の各事実の外に、会社が同会等を主催している裏付け
事実の証拠はないから、会社の不当労働行為であるということはできないとされた例。
5200 除斥期間
5201 継続する行為
6341 事実認定の誤り
組合員らを係長及び係長待遇の推進役に昭和61年6月18日付けで昇進したものとして取り扱う旨命じた中労委命令について、
会社の4月1日付け職位昇進決定は年度毎の一個の行為で次期昇進まで継続するから、62年7月18日に本件救済申立てがなさ
れた時点では、61年4月1日に昇進させない旨の決定行為が昭和62年3月31日まで一個の行為として継続し、その終了から
1年以内であるから適法であり、昇進したものとして取り扱うべき時期は61年4月1日とするのが相当であるとして、本件命令
の関連部分を取り消した例。
1200 降格・不昇格
組合員X1ら16名に付与されるべき職位を店舗長代理に限定せず、店舗長代理待遇の推進役をも揚げた中労委命令は職位につい
て不明確であるとの組合主張について、会社の人事権を考慮しての措置であり、同職位に店舗長代理と異なり部下はおらず、責任
加給も店舗長代理より低い推進役まで含む趣旨でないことが明らかなので、本件命令に不明確な点はなく、組合の主張は理由がな
いとされた例。
1200 降格・不昇格
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
申立人X2外3名を副参事に昇格させないことについて、会社が同人らを係長に昇進させず、学科論文試験で顕著な高得点を得な
い限り副参事昇格試験に合格できないようにして試験の公正を自ら損なう運用を行っていたから、試験の成績不振の原因が本人の
努力不足にあることを考慮しても運用の重大性は看過できず、不当労働行為意思に基づく人事考課による差別的な低査定と昇格試
験不合格の結果との間に相当因果関係を認めるのが相当であり、これを不当労働行為に該当するとした初審救済命令の一部を変更
した中労委命令主文を取消した例。
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業種・規模 |
金融業、保険業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集33集631頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 1999年2月 947号 50頁
労働判例 1999年1月1、15日 748号 37頁
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