労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  芝信用金庫 
事件番号  東京地労委昭和62年(不)第45号 
申立人  芝信用金庫従業員組合 
被申立人  芝信用金庫 
命令年月日  平成 1年 5月23日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  金庫が、(1)金庫施設利用の別組合優先(2)永年勤続表彰を他の 職員と別個に表彰(3)職員慰安旅行等の参加拒否(4)傷病扶助制度等に関する協定締結の拒否(5)組合員21名を昇格、昇 進させなかったことが争われた事件で、(1)金庫施設利用の差別取扱いの禁止(2)永年勤続表彰の他の職員と同一条件での実 施(3)職員慰安旅行等に参加できるような職場環境の整備(4)協定締結拒否の禁止(5)副参事、店舗長代理等への昇格、昇 進及びバック・ペイ並びに(1)ないし(5)についての文書掲示、社内報掲載を命じた。 
命令主文  1 被申立人芝信用金庫は、申立人芝信用金庫従業員組合から金庫施 設の利用申入れを受けた 場合、申立外芝信用金庫労働組合と差別する取扱いをしてはならない。
2 被申立人は、申立人組合員の永年勤続表彰は他の職員と区別することなく、すべて同一条 件で行わなくてはならない。
3 被申立人は、職員慰安旅行、歓送迎会、新年会および忘年会に申立人組合員が参加できる よう積極的に職場環境整備に努め なければならない。
4 被申立人は、申立人組合からの傷病扶助制度および人間ドック制度に関する協定締結申入 れに対して、「平和条項」締結を 条件にこれを拒否してはならない。
5 被申立人は、申立人組合員X1を昭和57年4月1日付で、同X2を昭和57年10月14日付  で、同X3を昭和56年 10月1日付でそれぞれ店舗長代理の職位を付与したものとして取扱わ なければならない。
6 被申立人は、申立人組合員X4他13名を昭和59年10月15日付でそれぞれ係長もしくは推進 役の職位を付与したもの として取扱い、さらに昭和61年4月1日付でそれぞれ店舗長代理の 職位を付与したものとして取扱わなければならない。
  但し、X5に対する取扱いは昭和62年7月4日までとし、X6に対する取扱いは同年7月 20日までとする。
7 被申立人は、申立人組合員X7および同X8を昭和58年度昇格試験に合格したものとし  て、昭和59年4月1日付で副 参事に昇格させ、同日付で係長もしくは推進役の職位を付与し たものとして取扱い、さらに昭和62年4月1日付で店舗長代理 の職位を付与したものとして 取扱わなければならない。
8 被申立人は、申立人組合員X9およびX10を昭和59年度昇格試験に合格したものとして、 昭和60年4月1日付で副参 事に昇格させ、同日付で係長もしくは推進役の職位を付与したも のとして取扱い、さらに昭和63年4月1日付で店舗長代理の 職位を付与したものとして取扱 わなければならない。
9 被申立人は、第5項、第6項、第7項および第8項によって生ずる増額支給額を各支払日 の翌日から支払済まで、年5分の 割合による金員を付加して支払わなければならない。
10 被申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記の文書を55cm×80cm(新聞紙2頁 大)の白紙に明瞭に墨 書して、金庫本店食堂の見易い場所に10日間掲示するとともに同文を 本命令書受領後直近発行の社内格「しば」の第一面に掲 載しなければならない。
                     記
                                    年 月 日
   芝信用金庫従業員組合
    執行委員長 X2 殿
                        芝 信 用 金 庫
                         理事長 Y1
  当金庫が、貴組合から申入れのあった施設利用を拒否したことおよび傷病扶助制度、人間 ドック制度についての協定締結申 入れを「平和条項」締結を条件に拒否したことおよび永年 勤続表彰を他の職員と別個に行ったことおよび職員慰安旅行、歓送迎 会、新年会、忘年会等 に貴組合員が参加できるよう講じなかったことならびに男子組合員の昇格、昇進を行わなか ったことは 不当労働行為であると東京都地方労働委員会において認定されました。 
  今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
11 被申立人は、前記第 5項ないし第10項を履行したときは、すみやかに当委員会に文書をも って報告しなければならない。 
判定の要旨  1200 降格・不昇格
組合員ら53名の職能資格についての昇進、昇格差別が不当労働行為であるとされた例。

1200 降格・不昇格
組合員X4ら14名を店舗長代理の職位を付与しないことが不利益取扱いであるとされた例。

1200 降格・不昇格
組合員X9ら4名を副参事に昇格させないことが不当労働行為であるとされた例。

1601 福利厚生上の差別
2901 組合無視
金庫が、永年勤続表彰について、従組員と別組合員とを場所、時間、表彰内容を別個に扱ったことが不当労働行為であるとされた 例。

1601 福利厚生上の差別
組合が、慰安旅行への参加を求め金庫にその是正を要求したのに対して、これに応える行動をとらなかったことが労々間の争いに 藉口して別組合に加担し、組合員を差別したものとされた例。

1601 福利厚生上の差別
金庫が、歓送迎会、新年会、忘年会等について、組合員のみが排除されている状況を積極的に改善しないことは組合間の差別に等 しく、その責めを免れないとされた例。

1601 福利厚生上の差別
いわゆる平和条項の締結を前提条件として、組合と傷病扶助制度及び人間ドック制度に関する協定の締結を拒否したことが不利益 取扱いであるとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
2901 組合無視
金庫が、申立人組合から申入れのあった和解協定の確認事項に伴う金庫施設の利用を拒否したことが組合間の差別取扱いであると された例。

4415 賃金是正を命じた例
組合員X9ら4名を副参事に昇格させ、職位についてもx9の給与年齢以下X10の給与年齢の中で、職位を付与されていない者 が1名にすぎない状況等を考慮して何らかの職位を付与することが相当であるとされた例。

4422 その他
現在の労々間の関係は、金庫が懸念する不測の事態の発生が危惧されるので、一日も早く金庫が環境の整備を行うことを命じた 例。

5004 管理職への登用の請求
職位付与の申立ては、労委の発し得る命令の限界を逸脱するとの主張が斥けられた例。

5201 継続する行為
本件においては、57年4月以降申立人組合員らを毎年の昇格、昇進時期において昇格・昇進させていないという一連の行為は継 続する行為に当たるとされた例。

業種・規模  金融業、保険業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集86集488頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成 1年(不再)第66号 一部変更(初審命令を一部取消し)  平成 4年 8月 5日 決定 
東京地裁平成 4年(行ウ)第238号 救済命令の一部取消し  平成10年10月 7日 判決 
東京高裁平成10年(行コ)第186号 一審判決の一部取消し  平成12年 4月19日 判決 
 
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