概要情報
事件名 |
岡山電気軌道 |
事件番号 |
岡山地労委平成1年(不)第1号
|
申立人 |
日本私鉄労働組合総連合会私鉄中国地方労働組合岡山電軌支部 |
被申立人 |
岡山電気軌道 株式会社 |
命令年月日 |
平成 3年12月20日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
|
事件概要 |
会社が、(1)ストによる不就労を理由に組合員の精勤手当、臨時給与等を減額して支払ったこと、(2)組合費のチェック・オフを一方的に廃止したこと、(3)組合員に組合からの脱退を勧奨したことが争われた事件で、(1)については、減額分の支払いを、(2)については、過半数代表者との賃金控除協定を締結した上でチェック・オフの再開を、(3)については、脱退勧奨等支配介入の禁止を命じ、併せてこれら事項に関する文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1.被申立人岡山電気軌道株式会社は、別紙1の控除金額目録氏名欄記載のX1ら204名(X2 及びX3については、各その相続人)に対し、同目録控除金額欄記載の、(1)昭和63年7月分 給与中の精勤手当からの控除額、(2)昭和63年7月分給与中の住宅手当からの控除額、(3)昭 和63年臨時給与夏季分からの控除額、(4)昭和63年住宅(第二)手当夏季分からの控除額、 (5)昭和63年臨時給与冬季分からの控除額、(6)昭和63年住宅(第二)手当冬季分からの控除 額を合計した、合計控除金額欄記載の各金額を、本件命令後速やかに、支払わなければなら ない。 2.被申立人岡山電気軌道株式会社は、本件命令後速やかに、組合費等の賃金控除に関し、会 社従業員の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結した上で、申立人日本私鉄 労働組合総連合会私鉄中国地方労働組合岡山電軌支部にかかわる組合費及び闘争積立金のチ ェック・オフを再開しなければならない。 3.被申立人岡山電気軌道株式会社は、会社の職制らをして、申立人日本私鉄労働組合総連合 会私鉄中国地方労働組合岡山電軌支部の組合員に対し、同組合からの脱退勧奨を行わせるこ とにより、同組合の運営に支配介入してはならない。 4.被申立人岡山電気軌道株式会社は、申立人日本私鉄労働組合総連合会私鉄中国地方労働組 合岡山電軌支部に対し、本件命令後速やかに、次の文書を手交しなければならない。 記 平成 年 月 日 日本私鉄労働組合総連合会 私鉄中国地方労働組合岡山電軌支部 執行委員長 X4 殿 岡山電気軌道株式会社 代表取締役社長 Y1 当社が、貴組合に対して行った次の行為は、岡山県地方労働委員会によって労働組合法第 7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されましたので、今後このよう な行為を繰り返さないようにいたします。 記 1.貴組合が昭和63年春闘で実施した9波23日間のストライキによる不就労を理由に、参加 組合員に係る、(1)昭和63年7月分給与中の精勤手当、(2)同住宅手当、(3)昭和63年臨時給 与夏季分、(4)同年住宅(第二)手当夏季分、(5)同年臨時給与冬季分、(6)同年住宅(第 二)手当冬季分の支払額からいわゆるストライキカットを行ったこと。 2.貴組合にかかわる組合費及び闘争積立金のチェック・オフを昭和63年11月から廃止した こと。 3.昭和63年秋ごろから平成元年中ごろまでの間、貴組合の組合員に対し、組合からの脱退 勧奨を行ったこと。 |
判定の要旨 |
1204 スト・カット
ストに係る賃金カットが許される範囲いかんは、本来労使間で自由に処分し得る事柄であり、労働協約や労働契約に定めがなされている場合はその定めに従い、定めがないか解釈に疑義がある場合には、当該賃金が交換的賃金であるか生活保障的賃金であるか留意すべきであるとされた例。
1204 スト・カット
賃金カットについての長期間にわたった運用に対して協議を行うことなく、説得の努力もせず、ストによる不就労を理由に参加組合員に係る精勤手当、住宅手当、臨給等から賃金カットを行ったことが不当労働行為であるとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社の営業所長Y2の発言は、会話のなされた日時、場所、話題の推移等を総合すると許される限度を逸脱しており、営業所次長Y3はY2の指示を受けて一体となって脱退を働きかけようとしたもので、これら職制らの組合からの脱退勧奨は支配介入に当たるとされた例。
2611 その他の従業員の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3411 その他の従業員の言動
組合脱退者2名の組合員に対する言動は、営業所長Y2らとの協議や指図を窺わせ、又は会社の意を体する等して組合からの脱退を働きかけたもので、会社の責に帰すべき不当労働行為であるとされた例。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
使用者が労基法24条1項に藉口して、専ら労働組合に不利益を与える目的で既に慣行化していたチェック・オフの継続・再開を拒否することは不当労働行為に当たるとされた例。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会社の組合費及び闘争積立金のチェック・オフの廃止は、専ら組合に不利益を与える目的で行われたものである等として、これが支配介入に当たるとされた例。
4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
本件ストが実施された当時組合に所属し、その後退職ないし死亡によって組合員資格を喪失した者らから不利益の回復を放棄する旨の意思が表明されていないので、組合はこれらの者の不利益についても、なお、その申立てを維持できるとされた例。
4407 バックペイの支払い方法
ストによる不就労を理由に不当に控除した金額については、同組合員に対してその控除額分の支払いを命じることが相当とされた例。
4407 バックペイの支払い方法
本件申立後に死亡した組合員2名にはそれぞれ相続人が存在するので、両名に係る控除金額については当該相続人に支払うよう命じるのが相当とされた例。
4603 その他
チェック・オフ廃止の救済については、組合の組合員数が従業員の過半数に達していない現状にあることから、会社に労働者の過半数を代表する者との間で所要の措置を構じさせた上で、組合との間のチェック・オフの再開を命じるのが相当とされた例。
|
業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集93集619頁 |
評釈等情報 |
 
|