労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  亮正会高津中央病院 
事件番号  神奈川地労委昭和57年(不)第48号 
神奈川地労委昭和58年(不)第2号 
申立人  川崎地域労働組合 
申立人  川崎地域労働組合高津中央病院支部 
申立人  X1 
被申立人  医療法人 社団亮正会 
命令年月日  昭和58年 9月16日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  冬期一時金に関する団交応諾を求めて指名ストを実施したのに対し、支部組合及びスト参加組合員に警告並びに通告書を交付したこと、同一時金の団交において、新たな条件を提案するなど不誠実な団交態度をとって、同一時金の妥結を遅延させたこと、支部組合員X1に対し、定年退職後嘱託として採用しなかったこと及び管理職らの支部組合員に対する言動が争われた事件で、警告並びに通告書による意思表示を撤回する旨の文書を交付すること、X1を嘱託として採用し、助産婦として原職復帰させ、バックペイ(年5分加算)を行うこと、組合脱退慫慂などによる支配介入の禁止並びにポスト・ノーティスを命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員らに交付した昭和57年12月7日付「警告並びに通告書」による意思表示を撤回する旨の下記文書を同人らにそれぞれ交付しなければならない。
              記
 当社団が昭和57年12月7日貴殿に交付した「警告並びに通告書」は正当な争議行為を違法視するきわめて不当なものでした。ここに上記通知を撤回します。これにより貴殿を驚かせ、不安にさせ、多大な精神的苦痛を与えたことは誠に申し訳ありません。
 昭和 年 月 日
                医療法人社団 亮正会
                 理事長 Y1
       殿
2 被申立人は、申立人X1を昭和57年12月16日付で嘱託として採用し、助産婦としての原職に復帰させるとともに、同日から原職復帰するまでの間支給されるはずであった諸給与相当額に年5分の相当額を加算して支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人組合を中傷、誹謗したり、申立人組合の実施した正当なストライキを違法だなどと宣伝したり、また、申立人組合に加入していると将来不利益になるなどと申立人組合員に向かって言い申立人組合を脱退させようとするなどの支配介入行為をしてはならない。
4 被申立人は、本命令受領後速やかに下記文書を縦1メートル、横2メートルの白色木板に楷書で明瞭に墨書し、2号館入口付近の従業員の見易い場所に1週間掲示しなければならない。
           誓 約 書
 当社団が行った次の行為はいずれも不当労働行為である旨神奈川県地方労働委員会により認定されました。当社団は、ここに深く反省するとともに、今後再びかかる行為をくり返さないことを誓約します。
(1) 昭和57年11月15日から同年12月7日までの間、当社団は、貴組合から昭和57年冬期一時金の要求がないなどとして貴組合が申し入れた団体交渉に応じないで、一時金の交渉、妥結を遅延させたこと。
(2) 当社団が、昭和57年12月7日貴組合のストライキに参加した組合員に対し、重大な職場規律違反行為として取扱う旨の「警告並びに通告書」を交付したこと。
(3) 当社団が、昭和57年12月6日から貴組合が実施したストライキは違法なストライキだとして貴組合を中傷、誹謗する宣伝をしたり、貴組合に加入していると将来不利益になるなどと言って、貴組合員の切崩しを図ったこと。
(4) 当社団が、貴組合員X1の停年退職に際し、昭和57年12月16日付で同人を嘱託として採用しなかったこと。
(5) 当社団が、昭和57年12月14日の団体交渉で、貴組合が既に冬期一時金闘争の収拾を機関決定したことを承知のうえで、再度支給対象者の問題及び三六協定即日調印の問題を提案するなど不誠実な団体交渉態度をとって、冬期一時金の妥結を遅延させたこと。
(6) 当社団が、昭和57年12月18日従業員に同意書を配布し、同意書を提出した非組合員に冬期一時金を支給し、貴組合の動揺を図ったこと。
 昭和 年 月 日
                医療法人社団 亮正会
                 理事長 Y1
 川崎地域労働組合
  執行委員長 X2 殿
 川崎地域労働組合高津中央病院支部
  執行委員長 X3 殿 
判定の要旨  0413 ストライキ(含部分・指名スト)
本件指名ストは(1)病院側の冬期一時金交渉に関する態度に抗議して回答を求めて行われたものであり、(2)事前通告についての争議協定もない以上抜き打ちストであるとの非難は当たらず、(3)看護婦等病院従業員が争議行為として業務放棄を行うことが労調法36条に違反しないことは判例上も認められており、しかも、病院の施設が停廃するおそれもなかったのであるから、これを違法ストとする主張は失当であるとされた例。

1500 不採用
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
支部組合員X1に対し、停年退職後、助産婦に余剰があること等を理由に嘱託として採用しなかったことが不当労働行為であるとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
2901 組合無視
病院側の提示した内容に同意した非組合員に対し冬期一時金を支給しながら、支部組合には新たな条件を提示して、同一時金の妥結を遅延させたことが不当労働行為とされた例。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
冬期一時金に関する団交応諾を求めて指名ストライキを実施したのに対し、目的のない抜き打ちストであり、病院施設の停廃は許されないという労調法36条に関するいわゆる病院通牒に抵触する違法ストであるとして、支部組合及びスト参加組合員に警告並びに通告書を交付したことについて、病院側は、団交に応ぜず、文書を往復させるだけであったこと、事前通告に関する争議協定もなく、労調法36条にいう施設には病院の従業員は含まれないことが判例上明らかであることなどからみて、本件指名ストを違法であるということはできず、このような病院側の行為は、組合員に精神的ショックを与え、不利益取扱いを暗示して支部組合の弱体化を図るものであるされた例。

2244 特定条件の固執
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
冬期一時金に関する団交において、同一時金の妥結につき支部組合が収拾を決定したところ、これを知った病院側が新たな条件を提示し、同条件により妥結調印する団交なら応ずるという態度に出たことが、不誠実団交であり、支配介入であるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
副院長が組合員X1らに対して、組合批判や、別組合の結成を勧奨する発言などを行ったことが、支配介入にあたるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
副院長が組合員X4に対して、組合を中傷・非難したほか、脱退を勧奨する発言を行ったことが、支配介入にあたるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
支部組合のあり方及びストライキを非難し、違法ストだなどと言っている総婦長と婦長との会話が、病院側が組合をストライキにまで追い込んだような労使事情において支配介入にあたるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
婦長及び主任が看護婦らに対し、申立人組合を中傷、誹謗する趣旨の発言を行ったことが、病院側の意を体してなされた支配介入にあたるとされた例。

3106 その他の行為
冬期一時金の団交申入れから同一時金が支給されるまでの、支部組合員に対する精神的、経済的不利益取扱い、団交拒否と不誠実な交渉態度、支配介入行為、管理職者の言動及び支部組合員X1の嘱託不採用の問題は、個別的にみれば支部組合の対応に未熟さの認められるものもあるが、全体としてみれば、病院側が同一時金交渉を利用して不当な理由を主張して支部組合の団交機能を翻弄し、支部組合と組合員の離反を図る一貫した不当労働行為の意図のもとに計画的に無用の紛争を起こして、支部の弱体化ないし潰滅を意図したものであり、全体として支配介入行為に該当するとされた例。

業種・規模  医療業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集74集263頁 
評釈等情報  労働判例 昭和59年2月1日  419号 66頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委昭和58年(不再)第41号 一部変更(初審命令を一部取消し)  昭和62年 4月 1日 決定 
東京地裁昭和62年(行ウ)第62号 請求の棄却  平成 2年 9月27日 判決 
東京高裁平成 2年(行コ)第145号 控訴の棄却  平成 3年 7月15日 判決 
 
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