概要情報
		
			
				| 事件名 | 亮正会高津中央病院 | 
			
				| 事件番号 | 東京高裁平成 2年(行コ)第145号 
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				| 控訴人 | 医療法人 社団亮正会 | 
		
			
				| 被控訴人 | 中央労働委員会 | 
		
			
				| 被控訴人参加人 | 総評全国一般労働組合神奈川地方連合川崎地域支部 | 
		
			
				| 被控訴人参加人 | 総評全国一般労働組合神奈川地方連合川崎地域支部高津中央病院分会 | 
			
				| 判決年月日 | 平成 3年 7月15日 | 
			
				| 判決区分 | 控訴の棄却 | 
			
				| 重要度 |  | 
			
				| 事件概要 | 本件は、病院が(1)57年冬季一時の団体交渉で新たな条件を提示するなどして妥結を遅延させたこと、(2)組合が行った指名ストは違法であるとして組合及びスト参加者に警告書を交付したこと、(3)組合員に対する管理者の言動、(4)申立人X1の停年退職後、嘱託として採用しなかったことが不当労働行為であるとして申立てがあった事件で、初審神奈川地労委は、いずれも不当労働行為であるとした救済命令に対し、病院から再審査の申立てがなされ、中労委は、X1の申立取下げに伴い初審命令の主文を削り、ポスト・ノーティスを一部変更したほかは再審査申立を棄却したところ、これを不服として、病院は、東京地裁に行政訴訟を提起、同地裁が請求棄却したため、さらに東京高裁に控訴していたが、同高裁は病院の控訴を棄却した。 | 
			
				| 判決主文 | 本件控訴を棄却する。 控訴費用は、補助参加によって生じたものを含め、すべて控訴人の負担とする。
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				| 判決の要旨 | 2249 その他使用者の態度 病院が、冬期一時金について、分会の要求がないとか、要求が不明確であることを理由として同分会との団交に応じなかったことは、正当な理由なく団交の開催を拒否したものであって労組法7条2号の不当労働行為に該当するとした原判決は相当である。
 
 2245 引き延ばし
 病院が分会との団交を拒否したことは、そのことによって、冬期一時金の妥結を遅延させて、組合員の心理的不安や動揺を誘い、ひいては同分会の内部的混乱や弱体化を招くことを意図した労組法7条3号の不当労働行為に該当するとした原判決は相当である。
 
 2245 引き延ばし
 病院の交渉態度は、分会には受け入れ難い協定策を提示するなど、同分会との冬期一時金問題の妥結を不当に遅延させることを意図したものであり、誠意をもって団交に臨んだとは認め難く、労組法7条2号の不当労働行為に該当するとした原判決は相当である。
 
 2250 未妥結・打切り・決裂
 病院の不誠実な交渉態度は、冬期一時金の問題を妥結しないように追い込んで、同一時金の支給を不当に遅延させるという事態を招来させて、組合員の心理的動揺や不安を誘い、ひいては同分会の組織的混乱や弱体化を招くことを意図した、労組法7条3号の不当労働行為に該当するとした原判決は相当である。
 
 1201 支払い遅延・給付差別
 2900 非組合員の優遇
 病院の不誠実な交渉態度により冬期一時金の支給を不当に遅延させる事態を招来させ、その一方で同意書を提出した非組合員に対してのみ冬期一時金を支給するという措置は、組合員を差別扱いするものであるとともに、同分会の組織的混乱や弱体化を招くことを意図した、労組法7条1、3号の不当労働行為に該当するとした原判決は相当である。
 
 0411 怠業
 医師、薬剤師、看護婦なども争議行為をなし得るところであるが、病院の使命に対する管理者側の努力にもかかわらず、客観的危険性が現れた場合は、善後措置の協力義務があり、これに違反した場合は争議行為の正当性の範囲を逸脱するものと解されるとした原判決は相当である。
 
 0414 ピケッティング
 分会は、本件指名ストに当たって、予め患者の生命・身体の安全確保に充分な配慮をしており、しかも、本件指名ストにより患者の容体に著しい支障や混乱は生じていないのであるから、争議行為としての正当性の範囲を逸脱していないとした原判決は相当である。
 
 2620 反組合的言動
 病院が本件指名ストを違法と決め付けたうえ、組合員に対して警告書を交付したことは、これによって組合員を威嚇してその心理的動揺や不安を誘い、ひいては争議行為の抑制や同分会の弱体化を意図した、労組法7条3号の不当労働行為に該当するとした原判決は相当である。
 
 5008 その他
 6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
 病院が本件指名スト参加組合員に警告書を交付したことが不当労働行為に該当し、これがなかったと同様の状態を回復させるための救済措置を命じることは、本件事実関係の下では、労委に委ねられた裁量権を逸脱し、過剰な救済を命じる違法なものとはいえないとした原判決は相当である。
 
 5007 謝罪・陳謝・誓約文の手交・掲示
 労委が陳謝文の交付を命じたのは同種行為の再発を抑制しようとしたもので、その中に「申し訳ありません」との文言が用いられていても、謝罪等の意思表明を要求することを本旨としたものではなく、憲法19条に違反するとはいえないとした原判決は相当である。
 
 2610 職制上の地位にある者の言動
 2620 反組合的言動
 3410 職制上の地位にある者の言動
 Y1副院長は、病院管理の最高責任者である院長の業務を補佐する立場にあるのであるから、同人の分会の在り方の非難、脱退の勧奨等の言動は、病院の意を体して行ったものといえ、Y1副院長の言動の内容は、同分会の組織的混乱や弱体化を招来することを意図した労組法7条3号の不当労働行為に該当するとした原判決は相当である。
 
 1500 不採用
 3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
 組合員X1を嘱託に再採用しなかったことは、X1を先例として組合員であるが故の不利益取扱いを暗示することにより、組合員の動揺を誘い、ひいては同分会の内部混乱や弱体化を招来することを意図した労組法7条3号の不当労働行為に該当するとした原判決は相当である。
 
 4102 承認・合意
 5007 謝罪・陳謝・誓約文の手交・掲示
 X1は同人に係る救済申立てを取り下げる旨の書面を提出しているが、支部及び分会は固有の救済利益を有しており、なお救済申立てを維持しているから、X1を再採用しなかったことの救済措置としてポスト・ノーティスを命じたことに違法はないとした原判決は相当である。
 
 
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				| 業種・規模 | 医療業 | 
			
				| 掲載文献 | 労働委員会関係裁判例集26集322頁 | 
			
				| 評釈等情報 | 労働関係民事裁判例集 42巻4号  571頁  中央労働時報  839号 47頁 
 
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