概要情報
事件名 |
亮正会高津中央病院 |
事件番号 |
東京地裁昭和62年(行ウ)第62号
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原告 |
医療法人社団 亮正会 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
総評全国一般労働組合神奈川地方連合川崎地域支部 |
被告参加人 |
総評全国一般労働組合神奈川地方連合川崎地域支部高津中央病院分会 |
判決年月日 |
平成 2年 9月27日 |
判決区分 |
請求の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、病院が、(1)昭和57年冬期一時金に関する団体交渉において、新たな条件を提示するなどして同一時金の妥協を遅延させたこと、(2)組合が行った指名ストは違法なものであるとして組合及びストに参加した組合員に警告書を交付したこと、(3)組合員に対する管理者の言動、(4)申立人X1を同人の定年退職後、嘱託として採用しなかったことが不当労働行為であるとして申立てがあった事件で、初審神奈川地労委は、これらの行為をいずれも不当労働行為であるとして、(1)X1の嘱託としての採用及びバックペイ、(2)ポスト・ノーティス及び文書手交を命じ、中労委は、初審命令のうち、(1)X1が救済利益を放棄したことに伴い、当該部分を削り、(2)管理者の言動の一部を不当労働行為にあたらないとして取り消し、その余の申立てを棄却したところ、これを不服として、病院が東京地裁に訴えを提起したが、同地裁は、病院の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、補助参加人によって生じたものを含めすべて原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
2245 引き延ばし
分会の要求がないとか、要求が不明確であることを理由として、同分会との団体交渉に応じなかったことは、正当な理由なく団体交渉の開催を拒否したものであって、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
病院が分会との団体交渉を拒否したことは、そのことによって、冬期一時金の妥結を遅延せしめて、組合員の心理的不安や動揺を誘い、ひいては同分会の内部的混乱や弱体化を招くことを意図した、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。
2245 引き延ばし
病院の交渉態度は、分会には受け容れ難い協提案を提示するなど、同分会をして冬期一時金問題の妥結を不当に遅延させることを意図したものであり、誠意をもって団体交渉に臨んだとは認め難く、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
病院の不誠実な交渉態度は、冬期一時金の支給を不当に遅延させるという事態を招来させて、組合員の心理的動揺や不安を誘い、ひいては同分会の組織的混乱や弱体化を招くことを意図した、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。
1201 支払い遅延・給付差別
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
病院の不誠実な交渉態度により、冬期一時金の支給を不当に遅延させる事態を招来させたことは、組合員を差別扱いするものであるとともに、同分会の組織的混乱や弱体化を招くことを意図した、労組法7条1、3号の不当労働行為に該当する。
0420 その他の争議行為
医師、看護婦も争議行為をなし得るところであるが、管理者側の努力にもかかわらず、客観的危険性が現れた場合は、善後措置の協力義務があり、これに違反した場合は争議行為の正当性の範囲を逸脱するものと解される。
0410 目的・手続き
0414 ピケッティング
分会は、本件指名ストに当たって、予め患者の生命・身体の安全確保に充分な配慮をしており、しかも、本件指名ストにより患者の容体に著しい支障や混乱は生じていないのであるから、争議行為としての正当性の範囲を逸脱していない。
2620 反組合的言動
病院が本件指名ストを違法と決め付けたうえ、組合員に警告書を交付したことは、これによって組合員を威嚇してその心理的動揺や不安を誘い、ひいては争議行為の抑制や分会の弱体化を意図した、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。
4610 P.Nに併せて文書手交を命じた例
5007 謝罪・陳謝・誓約文の手交・掲示
病院が本件指名スト参加組合員に警告書を交付したことが不当労働行為に該当し、これがなかったと同様の状態を回復させるため不作為命令等三つの救済措置を命じることは、本件事実関係の下では、裁量権を逸脱し、過剰な救済とはいえない。
5007 謝罪・陳謝・誓約文の手交・掲示
労委が陳謝文の交付を命じたのは同種行為の再発を抑制しようとしたもので、その中に「申し訳ありません」との文言が用いられていても、謝罪等の意思表明を要求することを本旨としたものでなく、憲法19条に違反するとの主張は当たらない。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
Y1副院長は、病院管理の最高責任者である院長の業務を補佐する立場にあるのであるから、同人の分会の在り方の非難、脱退の勧奨等の言動は、病院の意を体して行ったものといえる。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
Y1副院長の言動の内容は、分会の在り方を非難して第二組合の結成を促し、或いは、分会からの脱退を勧奨したものといえるから、同分会の組織的混乱や弱体化を招来することを意図した、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。
1500 不採用
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3104 別組合利用・別組合員宅訪問
組合員X1を再採用しなかったことは、X1を先例として組合員であるが故の不利益取扱いを暗示することにより、組合員の動揺を誘い、ひいては同分会の内部的混乱や弱体化を招来することを意図した、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。
4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
X1は同人に係る救済申立てを取り下げる旨の書面を提出しているが、支部及び分会は固有の救済利益を有しており、なお救済申立を維持しているから、X1を再採用しなかったことの救済措置としてポスト・ ノーティスを命じたことに違法はない。
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業種・規模 |
医療業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集25集478頁 |
評釈等情報 |
労働関係民事裁判例集 41巻5号 715頁 
労働判例 569号 6頁 
中央労働時報 821号 38頁 
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