労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  黒川乳業 
事件番号  中労委昭和53年(不再)第57号 
中労委昭和55年(不再)第4号 
中労委昭和55年(不再)第5号 
再審査申立人  黒川乳業 株式会社(55年第5号) 
再審査申立人  関西単一労働組合(53年第57号・55年第4号) 
再審査被申立人  関西単一労働組合(53年第57号・55年第4号) 
再審査被申立人  黒川乳業 株式会社(53年第57号・55年第4号) 
命令年月日  昭和57年12月 1日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)誠意ある団交を行わずに会社再建案を実施したこと、(2)52年度夏季一時金について妥結協定がないことを理由に支給しなかったこと、(3)52年度賃上げ・年末一時金、53年度賃上げ、同年夏季・年末一時金について誠意ある団交を行わず、賃上げ及び一時金の支給を行わなかったこと、(4)地労委の審問等に出席した組合員の賃金カットを行ったことなどが争われた事件で、初審大阪地労委は、(イ) 52年夏季一時金を除く賃上げ、一時金について誠意団交を行うとともに仮実施、仮支給を行うこと、(ロ)賃金カット分を支払うこと、(ハ) 会社再建案の実施に関する誓約文を手交するなどを命じ、その余の申立てについては棄却した。労使双方から再審査の申立てがなされ、中労委は、初審命令の一部を変更し、52年夏季一時金についても誠意団交及び仮支給を命じる一方、賃上げの仮実施、53年夏季・年末一時金、地労委の出席に伴う賃金カットに係る救済を取り消し、その余の再審査申立てを棄却した。 
命令主文  1 中労委昭和53年(不再)第57号事件初審命令主文並びに中労委昭和55年(不再)第4号・第5号事件初審命令主文を次のとおり変更する。
(1)黒川乳業株式会社は、関西単一労働組合との間で、昭和52年度賃上げ、同年夏季一時金、同年年末一時金、昭和53年度賃上げ問題等組合が要求した事項に関して、速やかに誠意をもって団体交渉を行わなければならない。
(2)黒川乳業株式会社は、昭和52年夏季一時金および同年年末一時金について、関西単一労働組合と妥結するまでの間、黒川乳業分会員及びX1に対して、昭和55年12月19日に関西単一労働組合と妥結した昭和53年夏季一時金及び同年年末一時金の仮支給の例に準ずる方法により速やかに仮に支給しなければならない。
(3)黒川乳業株式会社は、関西単一労働組合に対して、速やかに下記の文書を手交しなければならない。
             記
                   年 月 日
  関西単一労働組合
  執行委員長 X1 殿
                黒川乳業株式会社
                代表取締役 Y1
 当社が行った下記の行為は、労働組合法第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると中央委員会によって認定されました。よって、今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
                記
 イ 貴組合と誠意ある団体交渉を行わずに、昭和52年5月11日以降、会社再建案を一方的に実施したこと。
 ロ 昭和52年度賃上げ、同年年末一時金及び昭和53年度賃上げ等に関する貴組合の要求に対して誠意ある回答を行わず、団体交渉を拒否したこと。
 (注:年月日は手交の日付を記入すること。)
(4)その余の申立てを棄却する。
2 中労委昭和55年(不再)第4号・第5号事件に係るその余の再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  1203 その他給与決定上の取扱い
労働委員会の審問等に出席した組合員に係る賃金について、従来3名についてまで保障していたところ、1名についてのみ支給する旨変更し、他の2名について賃金カットしたことにつき、従来の賃金保障が労使慣行であったとまでは認められないこと等から不当労働行為とは言えないとして、賃金カットを不当労働行為として賃金相当額の支払いを命じた初審命令を取り消した。

1203 その他給与決定上の取扱い
生理休暇中の組合活動を理由に賃金カットしたことにつき、不当労働行為ではないとした初審判断を支持し、再審査申立てを棄却した。

1201 支払い遅延・給付差別
2400 その他
2901 組合無視
会社回答中、夏期一時金に関する部分についてのみ受諾したからといって夏期一時金に関する交渉が妥結したとはいえず、夏期一時金を支給しないからといって不当労働行為とはいえないとした初審命令について、夏期一時金を支給していないことは、正当な理由なく団交を拒否した結果であり、第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして初審判断を変更した。

1201 支払い遅延・給付差別
2244 特定条件の固執
3102 争議対抗手段
労働条件の切下げを内容とする会社再建案との一括妥結提案に固執し、団交中の組合の行き過ぎた行為を口実に、賃上げ、一時金に関する団交を拒否し、さらには賃上げの仮実施及び一時金の仮支給を求める組合の要求に応じなかったことが、1号、2号、3号に該当する不当労働行為とされた。

2400 その他
2901 組合無視
組合と誠意ある団交を行わないまま会社再建案を実施したことが、組合の存在を無視し、団交権を否定した不当労働行為であるとした初審判断が支持された。

3106 その他の行為
執行委員長らがY1取締役に対し暴行をはたらき、また、Y2課長に対し謝罪文を書くことを強要したとして警察官に通報し、告訴したことが、当時の事情からみて組合破壊をねらった不当労働行為とはいえないとした初審命令を支持した。

3106 その他の行為
組合旗及び立看板が盗まれたことや組合旗掲揚ポールが折られたことは会社による組合活動妨害行為であるとする主張につき、疎明がないとして組合主張を斥けた。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
初審申立て後に会社を退職し組合員資格を喪失した者に係る救済について、同人が事件に関する手続を組合に委任し、救済を求める意思があることを明らかにしている以上救済することが相当であるとして、同人に対する救済申立てを棄却した初審命令を変更した。

4413 給与上の不利益の場合
4500 交渉拒否理由または交渉条件に関する指示に触れた例
団交を拒否し、交渉が妥結していないことを理由に、組合員に対してのみ賃上げを実施しないことに対する救済措置に関して、会社再建案を拒否している組合員と他の従業員とでは、週休日や労働時間など労働条件面に差異があり、賃上げの未実施を経済的不利益と断定しがたいとして、賃上げの仮実施を命じた初審命令を変更し、誠意ある団交応諾を命じた。

4413 給与上の不利益の場合
4500 交渉拒否理由または交渉条件に関する指示に触れた例
同上の理由から、途中において退職した組合員の退職金について賃上げが実施されたものとして退職金の精算を仮りに行うよう命じた初審命令を変更し、誠意ある団交応諾を命じた。

4413 給与上の不利益の場合
労働条件の切下げを内容とする会社再建案との一括妥結案に固執し、団交中の組合の行き過ぎた行為を口実にそれ以降の団交を拒否し、交渉が妥結していないことを理由に賃上げの実施や一時金の支給を行っていないことに対する救済措置に関して、一時金については全く支給されていないのであり、組合員と他の従業員との間で労働条件に差異があることを考慮しても、不利益な取扱いを受けていると認められるので、団交に決着をみるまでの間仮支給を命ずるのが相当であるとされた。

4413 給与上の不利益の場合
4603 その他
会社再建案との一括受諾に固執し、一時金を支給しないことの救済に関し、組合が夏期一時金に関する部分についてのみ受諾した旨通告したことをもって夏期一時金に関する交渉が妥結したとはいえず、その内容によって支給を命ずることは相当ではないが、夏期一時金の未妥結・不支給は会社の不当労働行為の結果であり、組合員らが現に受けている不利益取扱いの限度において仮支給を命ずることが相当であるとされた。

4505 その他
4601 「抽象的不作為命令」を命じた例
誠意ある団交を行わないまま会社再建案を実施したことに対する救済措置として、会社再建案自体は組合の壊滅を企図したものではないこと等から、会社再建案の実施の撤回を命ずるのは相当でなく、「今後、このような行為を繰り返さない」旨の文書手交を命ずることで足りるとされた。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
営業所長等が、機構改革が職場交渉を経ずに実施されたものであることを理由に新しい事務の処理を拒否している組合員X3を別室に呼び入れ、「仕事がいやなら会社をやめてしまえ」とどなったことにつき、これらの行為は職務上の注意であり不当労働行為には当らないとした初審命令を支持し、再審査申立てを棄却した。

業種・規模  飲料・たばこ・飼料製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集72集659頁 
評釈等情報  労働判例 1983年4月15日  402号 67頁 
労働経済判例速報 昭和58年4月20日 1148号(34巻11号) 13頁 
中央労働時報 1983年7月10日  696号 13頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
大阪地労委昭和52年(不)第87号 棄却(命令主文が棄却のみ又は棄却と却下)  昭和53年10月30日 決定 
大阪地労委昭和52年(不)第40号
大阪地労委昭和52年(不)第76号
大阪地労委昭和52年(不)第105号
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  昭和54年12月27日 決定 
東京地裁昭和58年(行ウ)第32号
東京地裁昭和58年(行ウ)第79号
救済命令の一部取消し   平成 1年12月20日 決定 
 
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