労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  アルメヘーネ・バンク・ネーデルランド 
事件番号  中労委昭和49年(不再)第18号 
中労委昭和50年(不再)第64号 
再審査申立人  アルメヘーネ・バンク・ネーダランド・エヌ・ブイ大阪営業所 
再審査被申立人  外国銀行外国商社労働組合大阪支部第三分会 
命令年月日  昭和51年12月22日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  協定未成立を理由に賃金仮払いの慣行を一方的に破棄し、分会員に対してのみ48年冬期一時金の支払いを拒否し、また、非組合員には賃上げを実施しながら、分会員に対しては、銀行の回答に同意すれば新賃金を支払う旨通告したこと、組合掲示物を撤去して返還せず、これに関する団交を拒否したこと、非分会員のみを集めた会合で分会を非難したこと、年休・特休に関する団交を拒否したこと、職業病に関する団交を拒否し、個人との間で解決しようとしたこと等をめぐる事件で、48年冬期一時金の支払い、団交応諾、撤去物の返還、陳謝文の手交を命じた初審命令のうち、組合掲示物の撤去については支配介入とは認められないとして初審判断を変更して陳謝文中当該部分を削除し、冬期一時金についてはすでに確定支給されていること、職業病に関しては当該組合員が退職したことからこれらの部分を取消した。 
命令主文  1 中労委昭和49年(不再)第18号事件初審命令主文第1項を取り消し、第2項記の「今日にいたるまで行っておりません。この行為は、」を「しなかったことは、」に改める。
2 中労委昭和50年(不再)第64号事件初審命令主文第1項の(2)中の「、X1」及び第3項記の記(3)中の「撤去し、」を削る。
3 その余の本件再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  3020 組合活動への制約
会社施設を利用して行われる組合活動は、業務遂行上あるいは、施設管理上の必要性など合理的根拠に基づくものであれば、使用者から規制を受けることはやむをえないところであり、本件の場合、緊迫した労使関係にあったとはいえ4カ月にわたり掲示物が掲示されていたこと、銀行業の特殊性と建物が共用物であること、他企業と共用の場所にも掲示してあったこと、貸主から掲示物撤去の督促があったことなどを考慮すると使用者が、分会の掲示物の貼付等に対し、再三にわたり警告し、その撤去を求めたことに合理性がないとはいえず、さらに使用者自ら撤去する旨通告した後に撤去したものであるから、これをもって、直ちに分会の組合活動を妨害するために行ったものとは認められない。

1201 支払い遅延・給付差別
銀行側が一方的に賃金仮払い廃止を表明したこと、交渉における傍聴人らの言動に不穏当な点があったが、その原因は銀行側の不誠意な交渉態度にあったこと、統一交渉開催の前提として交渉ルール覚書の調印に固執したこと、分会加入を理由として賃上げ前の額を支給したことを総合的に勘案すると、分会を弱体化し、統一交渉を行わずして、銀行提案の協定に調印させるために行ったものと認めざるをえない。

1201 支払い遅延・給付差別
従前の慣行を無視して、非分会員に対してのみ賃上げを実施したこと、前年協定による金額で非分会員に対しては冬期一時金を支給しながら、分会員には仮払をしなかったこと、分会に加入したX2に対し、銀行は仮払する意志はない旨通告し、他の分会員と同様賃上げ前の金額を支給したこと、などは、分会の存在を嫌悪して分会員を不利益に取扱、分会組織の弱体化を意図して行ったものと認めざるをえない。

2131 支社等の出先機関
分会の会社支店あて年休等に関する団交申入れを各店共通の問題であり、在日代表と交渉する慣行であるとしてこれを拒否したが、このような慣行の事実も認められず、仮りに慣行があったとしても、分会の団交申入れ当初にその旨を分会に説明するなりの措置をとるべきところ、当初申し入れから約2年数カ月後に文書回答し、以後固執しているのであるから会社の主張は採用できない。

2242 回答なし
2302 労務管理・労使関係
団交の経緯をみると20回にわたって、協議が続けられたことからして、協議の結果並行線になったとしても、協議を打切るには、それ相応の理由と手続が必要であるにもかかわらず、会社支店が交渉で再検討することに同意してたのに、同意を無視し一方的に文書回答しただけで団交に応じなかったのは正当な理由があるとは認められない。

2242 回答なし
2302 労務管理・労使関係
会社は、分会の行ったビラ・ステッカー等の貼付あるいは掲示は違法であるから、今後かかる行為をしないことを確約すれば、撤去した掲示物を返還すると言明している。撤去した掲示物を違法行為を理由に返還しないことに正当な理由はなく施設利用の組合活動に会社支店が、どの程度の便宜を供与するか、あるいは容認するかは、団交によって決められるべきことがらである。

2900 非組合員の優遇
大阪支店が従来の慣行を無視して分会の賃金仮払い要求を拒否しながら、非分会員に対してのみ賃上げを実施したことは、分会員に動揺を与えることにより、交渉を行わずして支店提案の賃金協定に調印させるために行ったものと認めざるをえない。

2901 組合無視
賃上げ交渉中に分会に対して、昇給について妥結がない賃金を仮払いすることはできないこと、と分会員であっても銀行回答に同意する者には銀行回答による新賃金を支給する旨通告したことが支配介入にあたる。

2610 職制上の地位にある者の言動
3106 その他の行為
非分会員のみを社外に集め集会を催したことが、集会における人事部長の発言内容等からみて支配介入とされた例。

2901 組合無視
人事部長が分会員の業務上疾病問題を本人と個別的に解決しようとしたことが支配介入とされた例。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
賃金協定の締結に伴い、賃金等の仮払いの措置を行う必要がなくなったとしても、賃金仮払い慣行の維持についての被救済利益は失われない。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
一時金不支給について、再審査申立て後、賃金協定を締結して確定支給されたことから、この部分の初審命令主文が取り消された。

5124 その他の審査手続
使用者が再審査申立て後、労委の求めに応じて申立書を補正したので、本件再審査申立ては要件を欠くものとはいえないとされた。

業種・規模  金融業、保険業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集60集499頁 
評釈等情報  中央労働時報 1977年 4月10日  601号 34頁 
労働経済判例速報 昭和52年 4月10日  942号(28巻 9号) 13頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪地労委昭和49年(不)第5号 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  昭和49年 4月13日 決定 
大阪地労委昭和48年(不)第69号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  昭和50年 9月12日 決定 
東京地裁昭和52年(行ク)第59号 一部認容  昭和52年 8月10日 決定