労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  アルヘメーネ・バンク・ネーデルランド 
事件番号  大阪地労委昭和48年(不)第69号 
申立人  外国銀行外国商社労働組合大阪支部第三分会 
被申立人  アルヘメーネ・バンク・ネーデルランド・エヌ・ブイ大阪営業所 
命令年月日  昭和50年 9月12日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  賃金協定成立までの間の賃金仮払の慣行を破棄し、銀行回答に同意した分会員には新賃金を支払う旨回答したこと、分会ステッカーを撤去して返還せず、これについての団交を拒否したこと、非分会員のみを集めた会合で分会を非難したこと、職業病に関する団交を拒否し、個人との間で解決しようとしたこと、年休・特休に関する団交を拒否した事件で、団交応諾、撤去物の返還、陳謝文の手交を命じ、将来における賃金仮払いの実施等、あるいは、掲示物撤去の禁止等など7項目の請求については棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、下記の事項について、申立人と速やかに団体交渉を行わなければならない。
 (1) 外国銀行外国商社労働組合が、被申立人に提出した昭和45年11月2日付要求書2通の、  それぞれの記載事項
 (2) X1、X2及びX3の業務上疾病に関する事項
2 被申立人は、昭和47年10月14日以降に撤去した申立人の分会旗、布製横幕、四角柱、ステ ッカーなどを、速やかに申立人に返還しなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し下記の文書を速やかに手交しなければならない。
              記
                      年 月 日
  申立人代表者あて
                   被申立人代表者名
 当社、下記の行為を行いましたが、これらの行為は労働組合法第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為であることを認め、ここに陳謝し、今後このような行為を繰り返さないことを誓約いたします。              記
 (1) 従前の慣行を無視して、非分会員に対してのみ賃上げを実施し、貴分会の賃金仮払い要  求に応じなかったこと
 (2) 昭和48年7月26日、貴分会に「貴組合に所属する従業員であっても銀行の回答に同意さ  れる方には銀行回答による新賃金等を支給致します」と通告したこと
 (3) 貴分会の貼付したステッカーなどを撤去し、返還しなかったこと
 (4) ステッカーなどの返還要求に関する貴分会の団体交渉申入れに応じなかったこと
 (5) 昭和47年10月17日、非分会員のみを集めて、酒食を供し、貴分会を暗に非難したこと
 (6) 昭和47年12月19日及び同月29日、人事部長Y1が貴分会員X2氏の自宅を訪れ、同氏に  退職を勧めるなどしたこと
4 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  0200 宣伝活動
組合ステッカーの貼付等が、その方法、枚数、掲示場所などから大阪支店及びビル所有者の施設管理上特段の支障があったとは認められないこと、銀行が団交ルールに固報して統一交渉が開催されず、他方、非分会員にのみ賃上げが実施された状況の下で、分会が主として統一交渉の実現と賃金要求の実現を目指して行ったことが認められ、分会の行為は客認されるべき正当な組合活動である。

1203 その他給与決定上の取扱い
2900 非組合員の優遇
本件労使間の慣行となっている賃金の仮払いを拒否したことは、大阪支店がその一方的廃止を言明し、統一交渉開催の前提条件として交渉ルール覚書調印に固執して団交拒否し、分会の賃金仮払い要求を拒否しながら非分会員に対してのみ新基本賃金等を支給していること等から見て不当労働行為である。

2131 支社等の出先機関
年休が3支店共通の労働条件であり大阪支店独自で決定できるか否かは、企業内部の問題であって、大阪支店が分会員の使用者である以上、本件団交応諾業務を否定し得ず、更に東京・神戸支店が、それぞれの従組との賃金協定に関する団交に応じていることから、大阪支店が年休要求について分会との団交に応じられない特別な理由が在するとは認められない。

2249 その他使用者の態度
職業病に関する団交は、21回にわたって重ねられてはいるが、協議を尽した結果不調に終ったものとは認められず、かえって大阪支店は、現実の取扱いに基づく協定書の作成に向けて、引き続き交渉することに同意していたのに、これらの交渉経緯を無視し、職業病に関する団交に応じないことには正当な理由は認められず、大阪支店の態度は、不当労働行為である。

2307 その他
大阪支店が掲示物等を撤去し、これを返還しないことが不当労働行為である以上、その分会の掲示物を一方的に保管し、団交の対象とならないとして返還要求に関する団交に応じないことには正当な理由は認められない。

2306 便宜供与
分会が、上部団体の大会等への出席、交渉員としての団交出席に要する日数を特別有給休暇とすることにつき団交を要求したのに対し、大阪支店は、統一交渉に出席の場合は従前どおり取扱い、その他の就業時間中の組合活動については労組法上の経費援助に当るので全く考慮する余地はない旨言明して団交に応じなかったが、仮に要求を受諾し、これを実施したとしても、この程度のことが労組法2条但書2号に該当するとは認められず、本件団交拒否は不当労働行為にあたる。

2901 組合無視
統一交渉で締結された賃金協定の適用範囲は全従業員と定められ、かつ賃金協定成立までの間に賃金仮払いについても分会員と非分会員を同一に扱う慣行があったのに、分会からの賃金仮払い要求を拒否し、非分会員に対してのみ賃上げを実施したことは、専ら分会を嫌悪し、その弱体化を意図した支配介入である。

2901 組合無視
銀行回答に同意した分会員には新賃金を支払う旨回答したことは、分会員の基本給等は統一交渉で決定すべきであるにかかわらずこれを無視し、大阪支店が事実上個々の分会員と取り引きし、もって、共闘会議と分会の存在意義を減殺しようとした支配介入である。

3020 組合活動への制約
一般に、組合が行う使用者の施設へのステッカー貼付などが、正当な組合活動と容認される場合、使用者は、当然これを受忍すべきものであって、撤去することは許されないものというべきところ、本件ステッカー貼付などが正当な組合活動であると認められる以上、その掲示物を撤去し、その返還に応じなかった大阪支店の行為は支配介入にあたる。

2900 非組合員の優遇
大阪支店が非分会員を社外に集めて開催した集会の内容についてみると、組合上部団体及び分会の活動等を非難し、分会員の出席希望を容れず、非分会員に酒食を供したことなどが認められるので、分会の非分会員に対する影響力を減殺し、非分会員を分会と対立させることにより、分会組織を弱体化することを意図した支配介入である。

2901 組合無視
人事部長Y1が頸腕症候群で長期欠勤中の分会員X2を訪問し、団交で職業病問題は解決しない旨述べ、退職を勧め、その条件を示すよう求めたことは、単なる実情調査とは認められず、団交と分会組織を無視し、同人の業務上疾病に関する問題を本人と直接取引きして解決しようとしたもので、支配介入である。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
48年賃金協定の成立によって仮払いの対象は消滅しており被救済利益は存在せず、また、47年以降仮払いは行なわれていないと主張するが、本件では仮払い慣行の存否が争われているので、本件申立てが不適法でないことは明らかであり、また、分会が将来における賃金仮払いの実施と陳謝文の掲示を求めている以上、被救済利益が存することは明らかである。

4421 文書掲示等を命じた例
非分会員X3が分会に加入して以降、分会員と同様に賃上げ前の額を支給したことは、不当労働行為であるが、申立人組合に対する陳謝文の手交に加えてこれを別個に救済する必要は認められない。

業種・規模  金融業、保険業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集56集327頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪地労委昭和49年(不)第5号 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  昭和49年 4月13日 決定 
中労委昭和49年(不再)第18号/他 一部変更(初審命令を一部取消し)  昭和51年12月22日 決定 
中労委昭和50年(不再)第64号/他 一部変更(初審命令を一部取消し)  昭和51年12月22日 決定 
東京地裁昭和52年(行ク)第59号 一部認容  昭和52年 8月10日 決定