労働委員会命令データベース

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  星ケ丘厚生年金病院 
事件番号  大阪地労委昭和44年(不)第39号 
申立人  健康保険星ヶ丘病院労働組合 
被申立人  社団法人全国社会保険協会連合会 
命令年月日  昭和46年12月27日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  夏期一時金についての団交、抗議行動および48時間スト、夜勤ストにおいて組合および組合員のとった行為を理由に委員長および書記長を6ケ月間の昇給停止処分に、副委員長2名および組合員3名を戒告処分に付した事件で、昇給停止処分の取消、バックペイ、戒告処分の取消しおよび陳謝文の手交を命じ、夏期一時金の支給、ポスト・ノーティスは棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、X1およびX2に対し、次の措置を含め、昭和44年7月25日づけの各昇給停止6ケ月の処分がなされなかったと同様の状態に回復させなければならない。
(1) 上記処分の日以降、処分がなければ同人らが受けるはずであった賃金相当額を支払うこと。
2 被申立人は、X3、X4、X5およびX6に対し、昭和44年7月25日づけの各戒告処分がなされなかったと同様の状態に回復させなければならない。
3 被申立人は、申立人組合に対して、下記の陳謝文をすみやかに手交しなければならない。
                記
                     年  月  日
健康保険星ヶ丘病院労働組合
 委員長 X7殿
             社団法人全国社会保険協会連合会
                会 長  Y1
 当連合会は、昭和44年7月25日づけでX8氏を含む7氏に対して懲戒処分に付したことおよび同年夏期一時金ストライキ中、2回にわたって業務命令を発し、組合員に就労を命じたことは、労働組合法第7条第1号および同条第3号に該当する不当労働行為であったことを認め、ここに陳謝するとともに、今後このような行為を繰り返さないことを誓約いたします。
4 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  0204 団交・争議に付随する行為
3700 使用者の認識・嫌悪
一時金交渉に多数の組合員が傍聴し、交渉が喧噪、長時間にわたったとしても、多数の傍聴者が参加する交渉が慣行化していること、組合の行き過ぎ行為が使用者の硬直的態度に起因するものと認められるので、これをもって組合活動の正当性の範囲を逸脱したものとは認められない。

0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
組合員が勤務に支障がないような方法で職場を離脱して団交を傍聴することが慣行化していること、使用者が慣行是正について格別の努力を払うことなく、一方的に慣行破棄の態度に出たこと、具体的な業務上の支障が生じていないこと等からみて、本件職場離脱は正当な組合活動と認められる。

0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
0420 その他の争議行為
一時金交渉時における組合の抗議行動は、使用者の一方的な硬直した態度に起因したものであり、かつ格別暴力脅迫に類する行為を伴ったことも認められないので、本件行動は、正当な組合活動の範囲を逸脱したものとは認められない。

0204 団交・争議に付随する行為
1400 制裁処分
組合員X8の問責事由である副院長あるいは次長の退去阻止行為をみると、副院長側に手落ちが認められ、あるいは一時金交渉の早期解決を図るための交渉続行を求める意思表示と認められるので、正当な組合活動というべく、これを理由とする戒告処分は不利益扱いである。

0413 ストライキ(含部分・指名スト)
0421 幹部責任
1201 支払い遅延・給付差別
1400 制裁処分
保安要員を提供せずに行なったストライキが、正当性の範囲を逸脱したものとは認められない以上、スト中の業務命令違反を理由とする組合幹部に対する昇給停止処分は不当労働行為といわざるをえない。

0410 目的・手続き
0421 幹部責任
組合のスト中における保安業務は、病院の手配によっておおむね維持され、患者の生命、身体の安全に危険な状態を招来したとの事実は認められず、また、組合もスト突入の前後を通じて、これらの点について十分配慮していたことが認められるので、組合が保安要員の提供を拒否したことのみをもって、本件ストが正当性の範囲を逸脱したものとはいえない。

0420 その他の争議行為
スト突入と同時に、組合員が病院の許可なく病棟内に立入り、患者にビラを配布した目的が、患者の支援を得ることや、スト破り対策のためと認められ、しかも、患者の病状や病院業務に格別の悪影響を与えていないことから見て、本件行為は、正当な組合活動と認められる。

0202 会社施設の利用
玄関ロビーにおける集会で、マイクを用いて演説や労働歌を合唱したことが多少喧騒にわたったとしても、入院患者に影響を与えたり、外来患者との間にトラブルが発生しなかったことなどからみて、本件行為が組合活動の正当性の範囲を逸脱したものとはいえない。

0410 目的・手続き
組合が夜勤スト中における患者の生命・身体の安全保持について十分配慮していたことが認められ、しかも、この間の保安業務は、病院が手配した代替要員らによって維持され、かつ、患者の生命・身体の安全に危険が生じた事実もないので、本件ストが適法の限界を越えたものとは認められない。

0410 目的・手続き
組合員X5が病棟内に立入った目的が、ストからの脱落を防止するための説得にあったこと、同人が有形力を行使した事実もなく、患者の療養に支障を与えたとも認められないので、単に病院の許可なく病棟に立ち入ったことのみをもって、組合活動の正当性の範囲を逸脱したものとはいえない。

1400 制裁処分
3600 処分の差別
組合員らの大衆団交出席のための職場離脱が正当な組合活動と認められるのみならず、当日の団交に参加した組合員については何ら問責しなかったにもかかわらずことさらに同人のみと戒告処分に付したことは、不利益扱いといわざるを得ない。

2900 非組合員の優遇
43年末一時金の支給時に、病院が組合に提出した一時金の支給に関する誓約書が、44年夏期一時金支給についてまで約束したものとは認められず、その支給額が給与規程所定の支給額のみであったことからみて、組合との妥結前に非組合員に対して一時金を支給したとしても、支配介入とはいえない。

3102 争議対抗手段
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
病院がすでに代替要員を手配済みであったにもかかわらず、25名におよぶ多数の組合員に業務命令を発したことは、保安協定に関する団交の前日になされているうえ、組合員に大きな影響を与えていることなどからみて、組合員のスト脱落を意図した支配介入行為といわざるを得ない。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
組合は、X8に対する戒告処分の取消しを求めているが、同人が、すでに定年退職し、組合を脱退しているので、同人に関する部分の救済は、陳謝文の手交にとどめるものである。

業種・規模  医療業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集45集606頁 
評釈等情報  労働経済判例速報 昭和47年6月10日  781号( 23巻16号)  10頁 

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委昭和47年(不再)第3号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  昭和48年 6月 6日 決定 
東京地裁昭和48年(行ウ)第110号 請求棄却・訴えの却下  昭和50年10月24日 判決 
東京高裁昭和50年(行コ)第64号 控訴の棄却  昭和53年 5月17日 判決