概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
東京高裁令和7年(行コ)第332号
旭生コン各労働委員会救済命令取消請求控訴事件
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| 控訴人兼被控訴人補助参加人 |
X1会社(「会社」)
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| 控訴人兼被控訴人補助参加人 |
X2労組(「組合」)
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| 被控訴人 |
国(処分行政庁 中央労働委員会(「中労委」))
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| 判決年月日 |
令和8年5月13日 |
| 判決区分 |
棄却 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
1 会社は、生コンクリート(「生コン」)の製造、販売等を目的とする株式会社である。組合は、職業安定法45条に基づく許可を受けて労働者供給事業を運営しており、その事業運営のため、A1事業所等を設置している。
本件は、組合のA1事業所から日々雇用労働者の供給を受けていた会社が、①労働者供給の依頼を打ち切ったこと(「本件供給依頼停止」)、②供給依頼の回復等に関する団体交渉申入れ(「本件団交申入れ」)に応じなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てをした事案である。
2 初審大阪府労働委員会は、会社の上記1①の行為は労働組合法(「労組法」)7条3号の不当労働行為に該当し、上記1②の行為は同条2号の不当労働行為に該当すると判断し、会社に文書交付を命じ、組合のその他の申立てを棄却した(「本件初審命令」)。
3 組合及び会社は、それぞれ再審査を申し立てたところ、中労委は、(1)会社の再審査申立てに対し、本件初審命令を上記1②に関する文書交付に変更、その余を棄却し、(2)組合の再審査申立てを棄却した(「本件再審査命令」)。
4 会社及び組合は、それぞれ東京地裁に対し、行政訴訟を提起したところ、同地裁は両者の請求を棄却した。
5 会社及び組合は、それぞれ東京高裁に控訴したところ、同高裁は、両者の控訴を棄却した。
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| 判決主文 |
1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 本件各控訴に係る控訴費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は、いずれも当該各控訴の各控訴人らの負担とする。
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| 判決の要旨 |
1 当裁判所も、原判決同様、会社は労組法上の使用者に該当し、会社が本件団交申入れに応じなかったことは労組法7条2号の不当労働行為に該当するというべきであり、また、本件供給依頼停止は経営上の判断として相応の合理性があり、労組法7条1号及び同条3号の不当労働行為には該当しないことから、本件再審査命令は適法であると認められ、控訴人らの各請求は理由がないものと判断する。その理由は、後記2のとおり控訴人らの各控訴理由に対する判断を付加するほか、原判決第3の1及び2に記載するとおりであるから、これを引用する。
2 控訴人らの各控訴理由に対する判断
(1) 会社の控訴理由(会社が、A1事業所から供給されていた労供組合員との関係で、労組法7条の「使用者」に当たるか(争点1))について
ア 控訴理由の要旨
会社は、①会社と組合間に契約関係がなく、双方に義務がない以上、いずれか一方の判断で労働者供給の依頼又は供給が途絶える可能性が常に存在しており、本件供給依頼停止はこの可能性が現実化したものであることや、②C3支部が平成29年12月12日から実施し、A1事業所が協力したストライキ(「本件ゼネスト」)時のA1事業所による労働者供給の停止、本件ゼネスト後のA1事業所のA2代表の説明や行動、A1事業所においては会社での経験豊富な組合員が大量に脱退し本件団交申入れ時点では1年に数回程度会社に供給されたことがあった5名が残っていただけであったことなど、労働者供給の継続にとって支障となるべき客観的事情の変化があったことを考慮すれば、会社とA1事業所の労供組合員ら(上記5名を含む。)との間で「継続して労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性があった」とはいえず、会社の使用者性は否定される旨を主張する。
イ 検討
(ア)原判決が認定説示するとおり、平成5年以降少なくとも約25年間にわたって、A1事業所が労供組合員を供給し、会社がこれを受け入れることが絶えず継続して行われてきており、平成29年4月からの1年間も月平均約55人の供給がされていたこと、これに加え、会社は原則としてA1事業所による人選を受け入れ、供給された労供組合員との間では平成5年の労働者供給が開始された時点に組合員の意向を踏まえて決められた賃金額が基本的な労働条件とされていたのであって、これらの長期間にわたる労働者供給の実態を考慮すれば、会社及び組合(A1事業所)において、労働者供給を安定的、継続的に行っていく意思を有していたと認めることができ、仮に本件ゼネストを契機とした本件供給依頼停止という事態に至らなければ、A1事業所から会社への労働者供給が引き続いて行われることは相当に高い確実性をもって予定されていたということができる。したがって、会社とA1事業所の労供組合員らとの間では、近い将来においても、継続して労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性があったといえ、会社は、A1事業所の労供組合員との関係で、労組法7条の「使用者」に当たると認めることができる。
(イ)会社が指摘する前記①の点は、上記実態を重視しないで、契約がないことを前提として抽象的な可能性を指摘するものにすぎない。また、前記②の点のうち、本件団交申入れ時点の客観的状況の変化を考慮すべきであると指摘する点については、本件供給依頼停止は上記のような継続的な労働者供給関係を解消する措置であり、組合はそれに対する説明や供給依頼の再開を求めて本件団交申入れをしているのであって、本件供給依頼停止に至る前の時点での状況に基づきその使用者性を判断することが相当であるから、会社の上記指摘は失当であるといわざるを得ず、そのほかに指摘する各事情も、上記のとおりの長期間にわたる労働者供給の実態を考慮すれば、上記認定判断を左右するものではない。
(ウ)以上から、会社の前記①及び②の各主張を採用することはできない。
そのほか、会社は、労働者の労働条件に関して現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にあることを理由として使用者性を肯定することができるのは、別の雇用主との間の既存の労働契約(労働条件等)が存在する場合であるから、本件では、この観点から使用者性は肯定されない旨も主張する。しかしながら、原判決が認定するとおり、前記認定のとおりの会社と組合との間の労働条件の決定の実態に照らし、会社が、労供組合員の労働条件に関し、現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったと認められ、これは使用者性を基礎付ける事実であるということができるのであって、この判断に当たって、別の雇用主との間の既存の労働契約の存在を前提とする必要はないことからすれば、会社の上記主張は当たらない。
(2) 組合の控訴理由(本件供給依頼停止が労組法7条1号又は同条3号の不当労働行為に当たるか(争点2))について
ア 控訴理由の要旨
組合は、主に次の①及び②を理由として、本件供給依頼停止が労組法7条1号又は同条3号の不当労働行為に当たる旨を主張する。
① 本件供給依頼停止が不当労働行為に当たらないとする判断は、労働組合が行う争議行為であった本件ゼネストが違法なものであることを前提としないと成り立たないものであって、不当である。本件ゼネストにおいて起訴されたC3支部組合員ら13人が無罪とされており、有罪判決が確定したものは組合員がいない企業に対する活動も適法であることを見落とした誤判であるから、本件ゼネストは適法な争議活動であった。仮に、本件ゼネストを違法とするものでないとすれば、本件供給依頼停止は、労働組合が行う適法な争議行為を理由として、労働者を不利益に扱う不当労働行為であることは明らかである。
② 本件では、A1事業所による労働者の安定供給が阻害されるおそれが具体的に存在することを基礎付ける事情がなかったにもかかわらず、本件供給依頼停止がされたものである。C1協同組合は、本件ゼネストを契機とし、平成30年1月9日、その理事会において、C4労組との接触面談禁止等を決議し、同年2月6日、加入企業に対し、「C4労組の諸活動につきましては、・・・全面的に立ち向かうと全会一致で決議されており」、「当面の間、C4労組系の業者の使用を極力差し控えるようお願い申し上げます」という通知をしており、会社はこのC1協同組合のC4労組系業者排除の方針に従って、本件ゼネストに協力したA1事業所をC4労組系とみなし、本件供給依頼停止を行ったものとみるほかない。したがって、会社において組合の弱体化を目的とする不当労働行為意思が認められ、本件供給依頼停止が不当労働行為に該当することは明らかである。
イ 検討
(ア)原判決が認定説示するとおり、製造後短時間で固まるなどの生コンの特質からすれば、生コンの製造事業者である会社にとってミキサー車を運転する労供組合員の安定的な供給を確保することはその経営に直結する極めて重要な要素であって、本件ゼネストという会社が制御できない事情によってその供給が2日間とはいえ全面的に停止した事実は、会社にとって、A1事業所による安定的な労働者供給に重大な不安を抱かせるもので、再度、同様の事態が発生して生コンの出荷量の低下等の打撃を受けることがないよう、安定的に労働者供給を受け得る供給先への依頼の変更を検酎することは、経営上の判断として合理性を有する。そして、会社のB1社長において、再度のC3支部によるストライキの可能性を認識し、組合を脱退し、C6とは別に労働者供給事業を立ち上げるとするA1事業所のA2代表の説明やその行動に不信感を抱いた上、会社に供給されることが多かった元組合員3名がC6に移籍することを聞いた結果、C6への依頼先の変更を本格的に決断したと認められる。このようなB1社長の判断は、労供組合員の供給について相手方への信頼の有無や程度に応じ取引先を選択、変更するという合理的な判断というべきものであると認められ、これらの事情を総合して考慮すれば、本件供給依頼停止について、組合の支配に介入し弱体化させるなどの不当労働行為意思に基づくものと認めることはできず、また、労供組合員らが労働組合の組合員であることの故をもってされた不利益取扱いであることを認めるに足る証拠もないといわざるを得ない。A1事業所の労供組合員はC3支部の組合員ではなく、特にA1事業所と会社との間で争議行為により解決すべき問題があったことも証拠上認められないことからすれば、A1事業所の本件ゼネスト時の労供組合員の供給停止は単にC3支部の行う本件ゼネストに協力する目的で行われたものにすぎず、会社に対する争議行為に当たると評価することもできないのであるから、会社において、安定的に労働者供給を受け得る供給先への依頼の変更を検討するに当たって、A1事業所の本件ゼネスト時の労供組合員の供給停止を一事情として考慮することは何ら批判されるべきものではない。
(イ)上記の認定判断のとおり、本件ゼネストが適法であるか否かにかかわらず、諸事情を考慮して本件供給依頼停止について不当労働行為に当たらないと判断するのであるから、本件ゼネストの存在のみ考慮して判断しているとの前提に立つ組合指摘の前記①の点は、前提を異にするものである。また、上記の各事情を踏まえれば、A1事業所による労働者の安定供給が阻害されるおそれが具体的に存在することを基礎付ける事情があったということができ、本件供給依頼停止について上記のとおり会社による経営上の判断として相応の合理性があると認められるのであって、組合が指摘するC1協同組合からの通知がされた事実等を踏まえても、会社がこのC1協同組合のC4労組系業者排除の方針に従って本件供給依頼停止を行ったことを認めるに足る証拠はないといわざるを得ないから、組合指摘の前記②の点も当たらない。
(ウ)以上からすれば、組合の前記①及び②の主張は採用することができない。
3 結論
よって、原判決は相当であり、本件各控訴は理由がないからいずれも棄却することとする。
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