労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁令和7年(行コ)第168号
明海大学救済命令取消請求控訴事件
 
控訴人  X法人(「法人」)
 
被控訴人  国 (処分行政庁 中央労働委員会(「中労委」)) 
被控訴人補助参加人  Z1組合(「組合」) Z2連合(「連合」) (併せて「組合ら」) 
判決年月日  令和7年11月10日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、法人が、①組合が平成28年1月14日付け以降合計7回の団交申入れ(「本件団交申入れ」)により申し入れた東京事務所での団交開催に応じなかったこと、②平成28年3月3日に組合から浦安キャンパスの非組合員を含む教職員宛てに郵送された組合ニュースを入れた封書を教職員に配付せず、配付済みの封書を回収し(「本件配付中止等」)、3月10日付けで組合執行委員長らに対し厳重注意(「本件厳重注意」)を行ったことが、労働組合法(「労組法」)第7条各号の不当労働行為に該当するとして、組合らより救済申立てがあった事案である。

2 初審東京都労働委員会は、上記1①は労組法第7条第2号及び第3号の、上記1②は同条第3号の不当労働行為に該当するとして、誠実団体交渉応諾、支配介入の禁止、文書掲示及びその履行報告を命じたところ、法人は、これを不服として、再審査を申し立てた。

3 中労委は、上記1①に係る初審命令を取消し、救済申立てを棄却した。上記1②については、初審命令を一部変更し、参加人組合が教職員宛に組合ニュースを郵送した場合の取扱いに関する協議の実施、文書掲示を命じた。

4 法人はこれを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は法人の請求を棄却した。

5 法人は、これを不服として、東京高裁に控訴したところ、同高裁は、法人の控訴を棄却した。
 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は、補助参加によって生じた費用を含め、控訴人の負担とする。
 
判決の要旨  1 当裁判所も、原審と同じく、法人の請求は理由がないものと判断する。その理由は、後記2のとおり補正し(略)、後記3のとおり当審における法人の補充主張に対する判断を付加するほか、原判決の「第3 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。

2 原判決の補正(略)

3 当審における法人の補充主張に対する判断
⑴ 本件厳重注意に係る適用法条の誤りについて
ア 法人は、本件厳重注意については労組法7条1号(不利益取扱い)の問題であるにもかかわらず、原審が同条3号(支配介入)を適用して判断したことは適用法条を誤っている旨、そして、労組法7条1号は同条3号が規定する不当労働行為の特殊形式であり、同条1号が適用される限り、同条3号は適用されない旨主張し、この点に関し、原審もその争点整理の過程で、本件厳重注意が労組法7条1号の問題であると認識した上で求釈明を行っており、原判決は自ら行った求釈明を無視したものであると指摘する。

イ しかしながら、労組法7条1号と3号との関係を法人が主張するように解釈しなければならない理由はない。そして、一件記録上、本件訴訟においては、本件厳重注意を含む本件各行為が労組法7条3号の支配介入に該当するか否かが争点とされてきたことは明らかである。
 したがって、法人の前記主張は採用することができない。

⑵ 本件各行為が不当労働行為に該当しないことについて
ア 法人は、(a)1月14日団交において法人は郵便によるメールボックスの使用を黙認・許可したことはなく、本件配布中止等は就業規則に反する違法状態を排除したものにすぎないから、支配介入には該当せず、また、本件厳重注意を行ったことは「労働組合の正当な行為をしたことの故をもって」に該当せず、不当労働行為意思を欠いている旨、(b)仮に、上記の黙認・許可した外形的事実が認定されるとしても、法人は黙認・許可していないと誤信していたから、本件各行為については、やはり不当労働行為意思を欠いている旨主張する。

イ この点、当審が補正の上引用した原判決第3の2⑵で認定したところによれば、法人は、1月14日団交において、組合が法人の大学の住所にその教職員を宛先として組合ニュースを郵送することを黙認又は許可する発言をしたとまではいえないものの、上記の態様による郵送に伴って生じるメールボックスの使用を認めない旨の明示的な発言もしておらず、組合は、このような法人の発言を受けて、本件組合ニュースを上記の態様で郵送したと認められる。したがって、法人の上記(a)及び(b)の主張は、いずれもその前提を欠くものといわざるを得ない。

 上記の点を措くとしても、組合ニュースの配布に関する法人の従前の取扱い等(原判決第3の1⑴)を踏まえれば、1月14日団交における法人の上記発言は、大学外からの郵送に伴って生じるメールボックスの使用に関して組合活動を理由とする不利益な取扱いをする可能性があることを暗示するものであって、その背後には、明言を避けつつも組合活動への支配介入の意思を否定しない態度がうかがわれるから、その後になされた本件各行為にっいて、不当労働行為意思に欠けるが故に労組法7条3号に該当しないことを裏付ける事情ということはできない。そして、本件各行為が、いずれも組合の弱体化を意図して行われたものと推認することが相当であることは、前記引用に係る原判決第3の2⑸及び⑹において認定判断したとおりである。

4 よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成29年(不)第3号 全部救済 令和元年7月4日
中労委令和元年(不再)第37号 一部変更 令和4年8月3日
東京地裁令和5年(行ウ)第18号 棄却 令和7年3月24日
 
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