労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和元年(不再)第37号
明海大学不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y法人(「法人」) 
再審査被申立人  X1組合連合及びX2組合(「組合」) 
命令年月日  令和4年8月3日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、法人が、①組合が平成28年1月14日付け、3月7日付け、6月7日付け、同月17日付け、7月13日付け、9月12日付け及び11月11日付けの団交申入れ(「本件団交申入れ」)により申し入れた東京事務所での団交開催に応じなかったこと、②平成28年3月3日に組合から浦安キャンパスの非組合員を含む教職員宛てに郵送された組合ニュースを入れた封書(「本件封書」)を教職員に配付せず、配付済みの封書を回収し(「本件封書の配付の中止、回収」)、3月10日付けで組合執行委員長らに対し厳重注意(「本件厳重注意」)を行ったことが、労働組合法(「労組法」)第7条各号の不当労働行為に該当するとして、組合より救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労働委員会(「東京都労委」)は、上記1①は労組法第7条第2号及び第3号の、上記1②は同条第3号の不当労働行為に該当するとして、誠実団体交渉応諾、支配介入の禁止、文書掲示及びその履行報告を命じたところ、法人は、これを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文要旨  1 初審命令主文第1項を取り消し、上記事件概要1①に係る救済申立てを棄却する。
2 初審命令主文第2項ないし第4項を変更し、上記事件概要1②について、組合が教職員宛てに組合ニュースを郵送した場合の取扱いに関する協議の実施、文書掲示を命じる。
3 その余の本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 法人が、本件団交申入れに対して、開催場所を浦安キャンパス又は坂戸キャンパス(「キャンパス」)に限定することにより、東京事務所での開催に応じなかったことは、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるか。
ア 一般に、団交開催場所は、本来労使双方の合意によって決められるべきものであり、団交開催場所にかかる協議が労使間で整わない場合には、組合員の就業場所等、当該組合と使用者の労使関係が現に展開している場所が基本となり、使用者が就業場所を指定することには合理的理由があるというべきである。本件において、キャンパスは、団交に出席する組合員全員の就業場所である。
イ また、執行委員が全員揃って団交時間の全部に出席しなければ、団交の実施に具体的な支障が生じるような事情があったとは認められない。したがって、キャンパスで団交することが、組合や組合員に格別の不利益をもたらすとまではいえない。
ウ 法人が、本件団交申入れに対して、開催場所をキャンパスに限定することにより、東京事務所での団交開催に応じなかったことは、正当な理由なく団交を拒否したものとはいえないから、労組法第7条第2号の不当労働行為には当たらず、また、組合の運営に対する支配介入であるともいえないから、同条第3号の不当労働行為にも当たらない。
(2) 法人が、本件封書の配付の中止、回収を行ったこと、及び本件厳重注意を行ったことは、それぞれ労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか。
ア 組合が勤務時間外に法人施設外からキャンパスの教職員宛てに郵便物を送付する行為が、直ちに就業規則に違反するともいい難く、加えて、浦安キャンパスでは、個人的な郵便物も教職員に配付されていた。法人は、組合ニュースの郵送を許可することによって法人の業務に生じることになる具体的な支障について一切説明しておらず、また、法人が個人的な郵便物を教職員に配付していたことからすれば、組合ニュースを教職員に配付したとしても、法人の業務に具体的な支障が生ずるおそれがあったとは考え難い。
イ 法人は、個人的な郵便物を配付している中で、本件封書が組合郵便物であったことから教職員への配付を中止し、配付済みの本件封書を執拗に回収しようとしたことからすると、本件封書の配付の中止、回収といった法人の一連の対応は、法人が組合活動を嫌悪していることをすべての教職員に示すことにより、組合の弱体化を図ったものといえる。
ウ 法人は、組合から事情を聴取することもなく、一方的に、本件封書の郵送を就業規則違反であるとして、本件厳重注意に及んだものである。そもそも、組合員が勤務時間外に法人の施設外から法人に投函した行為が、就業規則の規定に反していることは文理上明らかではないし、法人は、団交において、就業規則に違反するとの説明もしていない。加えて、本件厳重注意は、就業規則に違反したとする行為をした者を特定することなく、組合及び組合の執行委員全員を本件厳重注意の対象にしており、組合活動を萎縮させるものである。本件厳重注意は、その根拠を欠いたまま性急になされたもので、組合を弱体化しようとした行為である。
エ 法人が、本件封書の配付を中止し、各教職員に配付せず、また、既に配付された封書を回収したこと、及び本件厳重注意を行ったことは、組合を弱体化することを意図した行為であるから、組合の運営に対する支配介入であり、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成29年(不)第3号 全部救済 令和元年7月2日
 
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