概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
東京地裁令和6年(行ク)第131号 日本港運協会緊急命令申立事件 |
| 申立人 |
中央労働委員会(「中労委」) |
| 申立人補助参加人 |
Z1組合、Z2組合 |
| 被申立人 |
Y法人(「法人」) |
| 決定年月日 |
令和7年9月16日 |
| 決定区分 |
緊急命令申立認容 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
1 本件は、法人が、平成28年度以降、Z1組合、Z2組合との産業別最低賃金(法人と組合との労働協約に基づき、法人に加盟する使用者と同使用者に雇用され、組合に加入する港湾労働者との間に適用される最低賃金のこと。「産別最低賃金」)に関する団体交渉において、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に抵触するおそれがあるとして、組合の要求に回答しないことについて、救済申立て(「本件救済申立て」)があった事案である。
2 初審東京都労働委員会(「都労委」)は、本件救済申立てのうち、平成31年2月9日以前の団体交渉に係る申立ては却下するとともに、同年2月19日付けの団体交渉申入れ(「本件団交申入れ」)にかかる団体交渉において、法人が産別最低賃金に関する組合の要求に回答しないことは労組法7条2号の不当労働行為に該当するとして、誠実団体交渉応諾、文書交付及びそれらの履行報告を命じた。(「初審命令」)
3 法人は、これを不服として、再審査を申し立てたところ、中労委は、申立てを棄却した。(「本件命令」)
4 法人は、これを不服として、行政訴訟を提起した。
5 中労委は、法人が、本件命令書の写しの交付を受けた後も同命令主文を任意に履行する態度を示しておらず、仮に本案行政訴訟事件において被申立人の請求が棄却され、その判決が確定したとしても、その確定までの間、当該命令が履行されない状態が継続することになれば、法人の団体交渉拒否によって生じた組合の団結権及び団体交渉権に対する著しい侵害が継続し、その回復をより困難なものとし、労働組合法の趣旨、目的に反する結果となるとして、団体交渉応諾を求めて緊急命令を申し立てた。
6 東京地裁は、中労委の申立てを認容した。なお、同地裁は、本決定と同日、本案事件について会社の請求を棄却している。 |
| 決定主文 |
1 被申立人は、被申立人を原告、国を被告(申立人を処分行政庁)とする当庁令和6年(行ウ)第65号労働委員会命令取消請求事件の判決の確定に至るまで、申立人が中労委令和3年(不再)第30号事件について発した命令によって維持するものとした、都労委令和2年(不)第25号事件について都労委がした令和3年7月20日付け命令の主文第1項に従い、申立人補助参加人Z1組合及びZ2組合が平成31年2月19日付けで申し入れた産業別最低賃金に関する団体交渉について、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に抵触するおそれがあるとの理由で回答を拒否してはならず、誠実に応じなければならない。
2 申立費用は、補助参加によって生じた費用も含め、被申立人の負担とする。 |
| 決定の要旨 |
中労委が初審命令を維持するものとした本件命令は、その認定及び判断において正当であり、適法であると認められる。
そして、法人は、今日に至るまで、初審命令の主文第1項を履行しておらず、本件命令の取消請求事件の判決が確定するまで不履行の状態が継続した場合、組合の団結権及び団体交渉権の侵害が進行し、重大な損害を生ずるおそれがあると認められるから、緊急命令の必要性があるというべきである。
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| その他 |
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