概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京都労委令和2年(不)第25号
日本港運協会不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X1組合・X2組合 |
被申立人 |
Y法人(法人) |
命令年月日 |
令和3年7月20日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、法人が、労働協約に基づく産業別最低賃金に関する団体交渉について、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独禁法)に抵触するおそれがあるとして組合の要求に回答しないことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
東京都労働員会は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、(i)組合らが平成31年2月19日付けで申し入れた産業別最低賃金に関する団体交渉について、独禁法に抵触するおそれがあるとの理由で拒否してはならず、誠実に応じなければならないこと、(ⅱ)文書交付等を命じるとともに、(ⅲ)平成31年2月9日以前の団体交渉に係る申立てを却下した。 |
命令主文 |
1 法人は、X1組合及びX2組合が平成31年2月19日付で申し入れた産業別最低賃金に関する団体交渉について、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に抵触するおそれがあるとの理由で回答を拒否してはならず、誠実に応じなければならない。
2 法人は、本命令書受領の日から一週間以内に、下記内容の文書を各組合らに交付しなければならない。
記 年 月 日
X1組合
中央執行委員長 A1殿
X2組合
会長A2殿
Y法人
代表理事 B
貴組合らが、平成31年2月19日付けで申し入れた産業別最低賃金に関する団体交渉において、当法人が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に抵触するおそれがあるとの理由で回答を拒否したことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注.年月日は文書を交付した日を記載すること。)
3 法人は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 平成31年2月9日以前の団体交渉に係る申立てを却下する。 |
判断の要旨 |
1 本件申立てより1年以上前の団体交渉に係る申立てについて
団体交渉の申入れや団体交渉は、その都度別個の行為であり、同様の行為が続いているからといって、全体を一つの継続する行為とみることはできない。
したがって、本件申立てより1年以上前の31年2月9日以前の団体交渉に係る申立ては、却下せざるを得ない。
2 法人が産業別最低賃金に関する団体交渉を拒否したことに正当な理由があるかについて
(1)組合は、長年にわたり、ほぼ毎年度、産業別最低賃金にかかる労働協約を締結してきた経緯があることに加え、公取委事務局の見解や、「人材と競争政策に関する検討会報告書」を踏まえた中労委のあっせん案をも根拠として、法人に対し、産業別最低賃金の要求に係る回答を求めたのであるから、組合の要求には相応の理由があるということができる。
これに対し、法人が、独禁法に抵触するおそれがあるとして回答を拒否した根拠は、産業別最低賃金の要求に直ちに該当するとはいい難いホームヘルパーの事例に係る公取委の見解や、港湾運送料金の算定基礎、モデル原価計算等に係る発言者や発言内容の明らかでない国交省の指摘、及び立場や氏名が具体的に明らかでない弁護士の見解だけであり、これら以外に独禁法に抵触する可能性について、官公庁から指摘を受けたことも、公取委が調査を開始した等の事情も認められない。
(2)そうすると、法人が産業別の要求に係る回答を拒否し、ひいては、産業別最低賃金に関する団体交渉を拒否したことに、正当な理由があったということはできない。
以上の次第であるから、組合31年2月19日付けで申し入れた産業別最低賃金に関する団体交渉について、法人が独禁法に抵触するおそれがあるとして組合の要求に回答しなかったことは、労働組合法第7条第2号に該当する。 |
掲載文献 |
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