労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁令和5年(行コ)第24号
労働委員会命令取消請求控訴事件 
控訴人  Xユニオン(「組合」) 
被控訴人  国(処分行政庁 中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  Z株式会社(「会社」) 
判決年月日  令和5年7月26日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、組合が平成30年3月3日付けで会社に対し、開催場所を組合事務所会議室又は大阪支店会議室として団体交渉(以下「団交」という。)を申し入れた(以下「30.3.3団交申入れ」という。)ところ、会社が、先行する中労委の別事件(以下「前件」という。)における同年2月27日付け和解での合意内容を反故にして、会社が提案する貸会議室での団交開催に固執し、よって団交が開催できなかったことが、労組法7条2号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立てがされた事件である。
2 初審大阪府労委は、救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、組合の再審査申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として東京地裁に行政訴訟を提起した。
4 東京地裁は、組合の請求を棄却したところ、組合は、これを不服として東京高裁に控訴した。
5 東京高裁は、組合の控訴を棄却した。
 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
 
判決の要旨  1 当裁判所の判断は、原判決の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。

2(1)組合は、会社の補佐人として平成30年2月15日の前件第2回調査期日に立会していたB係長の、使用者側参与委員に対して組合との団交を組合事務所で行っても良い旨を述べた本件発言は、それが発せられた時点では、検討過程における発言でしかなかったとしても、その後の検討を経て、「口頭確認で」との条件まで付されるに至ったのであるから、その時点で、確定した会社の意思表示となっていたと解することができる上、使用者側参与委員が会社出席者のうちの1人だけの個人的意見でしかないものを、労働者側参与委員を通じて組合側に伝えるなどあり得ないと主張する。
 しかし、同月27日の前件第3回調査期日における期日調書の「調査の概要」欄には「審査委員は、労使に対し(中略)団体交渉の開催場所の件については、労使双方に対し、両参与委員から説明があったとおりであることを述べた。」と記載されたにとどまっている上、B係長自身も、大阪府労委の審問において、本件発言をしたことは認めるものの、本件合意の成立については否認しているのであって、以上のほかに本件発言の内容について、口頭確認の形であれ合意に至ったことを認めるに足りる的確な証拠はない。
 また、一方の参与委員が他方の参与委員に対して、和解交渉中に一方当事者の出席者の個人的意見を伝えることもままあり得るところといえ、結局本件合意の成立を認めるには至らないから、組合の上記主張は採用できない。

(2)組合は、団交の開催場所は内容に関係のない手続事項にすぎないから、団交の出席者が決定すべき事柄であり、代表権を有する者が決定しなければならない問題ではないと主張する。
 しかし、団交の開催場所を団交の出席者が決定すべきであるというルールが一般的に存在すると認めるには足りないし、当事者にとっては、開催場所いかんの問題も今後の労使関係を展望したときに重大な関心事になり得ることを考慮すると、開催場所に関する決定権限が当然に団交の出席者にあるということはできない。
 そして、団交の開催場所等の開催条件に関して、各当事者の意思決定方法は、同当事者内部における一般的な意思決定のあり方や、団交の出席者に対する具体的な権限付与の程度によって異なり得るところである。
 原審認定のとおり、平成30年2月10日に開催された本件第2回団交においては、それ以降の団交の開催場所をめぐって両当事者が対立し、本来予定されていた交渉議題についての協議がされなかった上、同月15日に実施された前件第2回調査期日においても、会社側が、決裁者と連絡が取れないため、その場で中労委による和解勧告の諾否について即答できないとして、調査期日の続行を求めたという経緯があることからしても、和解の内容だけでなく、団交の開催場所についても、会社側の出席者の1人にすぎないB係長が決定権限を有していたとは認め難い。
 以上によると、団交を行う場所は、その出席者が決定すべき手続事項にすぎず、B係長の本件発言によってこれが決定されたとの組合の上記主張を採用することはできない。


3 結論
 以上のとおり、組合の請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却する。
 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成30年(不)第48号 棄却 令和元年11月1日
中労委令和元年(不再)第60号 棄却 令和3年10月1日
東京地裁令和4年(行ウ)第93号 棄却 令和4年12月26日
 
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