労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  福岡高裁令和4年(行ス)第8号
ワーカーズコープタクシー福岡緊急命令申立却下決定に対する抗告事件
 
抗告人(原審申立人)  福岡県労働委員会 
相手方  有限会社Y(「会社)」 
決定年月日  令和4年9月30日 
決定区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 会社が、C1労働組合のA1及びA2に対し、平成31年2月以降、残業指示について他の乗務員と異なる取扱いを行い、A1及びA2の給与を減少させたことが、労組法7条1号及び3号に該当するとして、A1らが救済を申し立てたものである。
2 福岡県労委は、会社に対し、労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であるとして、不利益取扱いの禁止及びバックペイとともに、文書の交付・掲示を命じた。
3 会社は、福岡県労委の救済命令(以下「本件救済命令」という。)を不服として、福岡地裁に、その主文第2項及び第3項(A1らへのバックペイ)の取消しを求める行政訴訟を提起したが、同地裁は会社の請求を棄却した。
4 福岡県労委は、福岡地裁に、A1らへのバックペイの履行を求める緊急命令の申立てを行ったが、同地裁は、申立てを却下した。
5 福岡県労委は、会社が福岡地裁の判決を不服として福岡高裁に控訴したため、本件救済命令が未だ確定しないとして、福岡高裁に原決定の取消しを求めて抗告を提起したが、同高裁は、本件抗告を棄却した。
 
決定主文  1 本件抗告を棄却する。
2 抗告費用は、抗告人の負担とする。
 
決定の要旨   福岡県労委は、会社がA1らに対してした時間外労働を禁止する命令(本件措置)は、C1組合(本件労組)への加入を契機として、本件労組及び同労組に加入したA1らに対する悪感情と、A1らの本件労組からの脱退とC2組合への復帰とを目的として行われたものであり、不当労働行為に該当する本件措置によりA1らが受けた不利益はなおも生じたままであることからすれば、緊急命令の必要性が認められるべきである旨主張する。
 しかし、本件記録によれば、令和2年4月20日以降、会社において、A1らを含む全従業員に対して時短勤務が指示され、これにより本件措置による差別的状態が解消されたことが認められる。福岡県労委は、これは新型コロナウイルスの感染拡大によるものであり、労使関係とは無関係であるというが、前記指示によりA1らの差別的状態が解消されたことには変わりがない。
 また、現時点で、A1らに対する差別的な取扱いが継続していると認めるに足りる資料は見当たらず、A1らは、他の従業員と同様の就労が可能な状態にあるものと推認される。
 そして、基本事件において、会社が取消しを求めているのは福岡県労委が令和2年12月11日付けで会社に対してした救済命令のうち、本件措置によりAらが現に被った損害の回復として、本件措置がなければ支給を受けられたであろう給与相当額の支払を会社に命じた部分であり、これは過去の賃金差額の精算というべきものである。
 会社は、前記感染拡大により売上が大きく減少しており、本件救済命令の即時の履行を命じた場合、会社の経営状況にも相応の影響を及ぼすおそれがあることを併せ考慮すれば、本件救済命令につき、その確定を待たずに履行の強制を図る必要があるとまでは認められない。
 以上のとおり、本件救済命令につき緊急命令の必要性があると認めることはできない。
 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡県労委令和元年(不)第7号 全部救済 令和2年12月11日
福岡地裁令和3年(行ウ)第3号 棄却 令和4年2月25日
福岡高裁令和4年(行コ)第22号 棄却 令和4年9月30日
最高裁令和5年(行ヒ)第24号 上告不受理 令和5年3月15日
 
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