概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京地裁令和3年(行ク)第220号
京王バス小金井外2社文書提出命令申立事件 |
申立人(第1事件被告参加人兼第2事件原告) |
X1組合、X2支部(以下「X3労組」という。)(「組合」) |
相手方(第1事件原告兼第2事件被告参加人兼Y1会社訴訟承継人) |
Y2会社(「会社」) |
第1事件・第2事件被告 |
国(処分行政庁 中央労働委員会) |
決定年月日 |
令和4年9月13日 |
決定区分 |
却下 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、組合員に対し、①平成14年以降の賃金格付並びに同17年以降の賞与及び報奨金等の支払、②雇用延長制度等の運用において、それぞれ他組合と同等に取り扱っていないことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、定年後の再雇用に係る任用社員制度に関するY2会社及びY1会社の対応は労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとして、他組合との間の協定と同内容の提案をすることを命じ、その余の申立てを却下ないし棄却したところ、組合及び会社は、それぞれ中労委に再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、会社に対して文書交付を命じる等初審命令の一部を変更し、その余の再審査申立てを棄却(以下「本件救済命令」という。)したところ、組合及び会社は、それぞれ本件救済命令の取消を求めて東京地裁に行政訴訟を提起した。
4 組合は、会社に対し、平成18年から平成23年までに在籍したC2組合所属バス乗務員の職能等級等が記録された文書等(以下「文書等1」という。)及び同すべてのバス乗務員の評点等が記録された文書等(以下「文書等2」という。)が民訴法220条4号柱書に該当するとして、東京地裁に文書提出命令の申立てを行ったところ、東京地裁は、本件申立をいずれも却下した。
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決定主文 |
本件申立てをいずれも却下する。 |
決定の要旨 |
1 文書提出命令の申立ては、書証の申出方法の一つであるから(民訴法219条)、文書提出命令を発令するためには、文書提出命令の対象となる文書を取り調べる必要性があることが要件となる。
2 文書等1について
組合は、文書等1により、C2の組合員の職能給昇給号数の加算及び職能等級の昇進が実態として年功的に運用され、号数が本件救済命令別紙2の職能給昇給表の太線の号数に達した段階で上位の職能等級に昇進する扱いがされている事実を証明すると主張する。
しかしながら、新賃金制度が一部年功的な制度設計になっていることや新賃金制度のもとでC2の組合員がおおむね昇進モデルと同等又はそれより早く昇給・昇進がされていることは、当事者間に争いがないし、これに加えて、会社が開示した、平成21年4月16日現在の勤続年数ごとの職能等級・職能給昇給号数の分布状況並びに平成22年4月16日現在及び平成23年4月16日現在の勤続年数ごとの職能等級・職能給昇給号数の分布状況を併せてみれば、組合が主張する事実は概ね明らかとなっているといえるのであって、組合が証明すべき事実を明らかにするために、C2の組合員個々人の勤続年数ごとの職能等級・職能給昇給号数を明らかにしなければならない必要性があるとは認められない。
よって、文書等1を取り調べる必要性は認められない。
3 文書等2について
組合は、文書等2により、①X3の組合員の成績査定がC2の組合員と比べて恣意的に低い評点とされている事実及び②成績査定について各営業所ごとにA1が10%、A2が20%、B1が40%、B2が20%、Cが10%に制限する比率制眼が、K営業所のみ適用されなかった事実を立証するものとしている。
本件救済命令の別紙等によれば、成績査定において、X3の組合員の「接遇向上実績」、「勤怠実績」及び「行動能力評価」の各項目の評点がC2の組合員の評点に比べて低いことが認められるところ、X3の組合員が上記の接遇、増務への協力等をしていなかったことは争いがない。
そうすると、本件においては、当該X3の組合員の行動によっても、C2の組合員とX3の組合員との間の評点の差異が生じることが不合理であるか否かが争点というべきであるが、文書等2により会社の全てのバス乗務員の評点等が明らかになったとしても、それをもって、X3の組合員の勤務実態にそぐわない不当に低い恣意的な評価がされたと推認されるものではない。
また、文書等2により、成績査定について営業所ごとに制限する比率制限が、K営業所のみ適用されなかった事実が証明されたとしても、K営業所にはX3の組合員の比率が多く、X3の組合員の評点はC2の組合員の評点に比して低いのであるから、K営業所以外で勤務する従業員との間で不公平とならないようにK営業所のみ比率制限を適用しないという取扱いをすることも直ちに不合理とは考えられないものであり、比率制限を適用しないことから、会社がX3の組合員に対して恣意的に低い評価をするなどして不当労働行為をしたものと推認されるものでもない。
以上によれば、文書等2を取り調べる必要性は認められない。
4 結論
よって、その余の点を判断するまでもなく、本件申立てはいずれも理由がないからこれらを却下する。
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その他 |
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