労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁令和3年(行コ)第279号
エクソンモービル(TR団交拒否)再審査申立棄却命令取消請求事件
控訴人  X組合(「組合」) 
被控訴人  国(処分行政庁 中央労働委員会) 
参加人  Z株式会社(「会社」) 
判決年月日  令和4年3月15日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、C1(会社は、C1の承継人である)が、平成17年度及び18年度賃上げ・一時金についての団体交渉において、賃上げ額及び一時金支給月率を算定するための前提となる比較対象企業の従業員に支払われる総報酬についての調査(以下「TRサーベイ」という。)における情報の開示や説明を誠実に行わなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。
2  初審東京都労委は、C1は、組合の要求に対応するため、TRサーベイを実施し、その提供データについて守秘義務を課している米国法人であるC1の親会社C4の一部門である第三者的機関(以下「COE」という。)と協議するなどして一定の努力をしていることが窺え、また、C1の対応も制約がある中で一定の工夫をしつつ回答している面もみられることから、不誠実な団体交渉であったとはいえないとして本件申立てを棄却した。
3 組合は、これを不服として、再審査を申し立てたが、中労委は、申立てを棄却した。
4 組合は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は組合の請求を棄却した。
5 組合は、これを不服として、東京高裁に控訴したが、同高裁は組合の控訴を棄却した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用(参加によって生じた費用を含む。)は、控訴人の負担とする。
 
判決の要旨  1 当裁判所も、組合の請求は理由がないものと判断する。その理由は、当審における組合の補足的主張に対する判断を後記2に加えるほかは、原判決「事実及び理由」第3に記載のとおりであるから、これを引用する。

2 当審における組合の補足的主張に鑑み補足する。
(1)控訴人は、憲法28条で保障されている団体交渉権は企業の私的利益に優先するから、本件守秘義務の遵守をTRサーベイの実施の不可欠な前提とし、それを理由にして比較対象企業の企業名及び賃金情報を開示しないことは、誠実交渉義務違反であると主張する。
 団体交渉その他の団体行動をする権利が憲法28条で保障されていることを考慮したとしても、引用に係る原判決「事実及び理由」(以下「原判決」という。)第3に判示のとおり、C1にとって、比較対象企業の企業名及び賃金情報について本件守秘義務を遵守することは、TRサーベイの実施に伴い必要不可欠な前提であり、誠実交渉義務が、C1に、比較対象企業の企業名及び賃金情報の開示について労働組合の要求に当然に応じることを求めるものとは解されないこと、一方で、C1は、本件守秘義務の制約の下で、組合の理解を得るべく、一定の情報を開示して説明を行ったものと評価できる事情が認められることからすれば、C1が、TRサーベイに関し、比較対象企業名及び賃金情報を組合に開示しなかったことをもって誠実交渉義務に違反するとはいえない。

(2)組合は、組合とC1との間では、専門職と事務・技能職に同率の一時金支給月率を適用することが労使慣行になっていたから、C1は、TRサーベイの結果が信用に値するものであるか否か判断できる程度に資料を提供する義務を負っていたと主張する。
 しかし、原判決第3に判示のとおり、組合、C2及びC3又はC1のいずれにおいても、一時金支給月率について専門職と事務・技能職とで同一にするとの取扱いを拘束力のある準則とする規範意識を有していたことを認めるには足りず、また、上記のとおり、交渉における対立当事者である組合による検証の可能性を基準として、C1の誠実交渉義務として開示すべき情報の水準を決定することは困難というほかないから、C1が、控訴人においてTRサーベイの結果が信用に値するものであるか否か判断できる程度に資料を提供する義務を負っていたとは認められない。

(3)組合は、C1において組合が個別に開示を求めた項目を明らかにしなかったことが誠実交渉義務に違反すると主張する。
 しかし、組合が個別に開示を求めた項目を明らかにしなかったことが誠実交渉義務に違反したとは認められないことは、原判決第3に判示したとおりである。

(4)以上のとおりであるから、組合の主張はいずれも採用することができない。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成17年(不)第69号・平成18年(不)第66号 棄却 平成19年11月6日
中労委平成19年(不再)第73号 棄却 平成30年12月19日
東京地裁令和元年(行ウ)第402号 棄却 令和3年10月29日
最高裁令和4年(行ツ)第223号、令和4年(行ヒ)第243号 上告棄却・上告不受理 令和4年11月11日
 
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