概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京地裁令和元年(行ク)第207号
祐愛会(その2)緊急命令申立事件 |
申立人 |
中央労働委員会(「中労委」) |
申立人補助参加人 |
Z1労働組合(「組合」)
A2労働組合Z2本部 |
被申立人 |
社会福祉法人Y(「法人」) |
決定年月日 |
令和元年11月28日 |
決定区分 |
緊急命令申立ての認容 |
重要度 |
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事件概要 |
1 老人ホームを運営する法人が、組合の執行委員長かつ法人唯一の
組合員であるAに対し、平成27年4月7日付けで減給の懲戒処分をしたこと(「本件懲戒処分」)及び平成27年6月賞与を支
給しなかったこと(「本件賞与不支給」)が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった。
2 初審沖縄県労委は、不当労働行為に当たるとして、法人に対し、Aに対する懲戒処分の取消し、減給及び賞与に関するバック
ペイ並びに文書掲示を命じた(本件初審命令)ところ、法人は、これを不服として再審査を申し立てたが、中労委は、法人の申立
を棄却する命令(本件命令)をした。
3 本件は、法人が、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起(基本事件)したところ、中労委が、Aの経済状況に鑑みれ
ば、行政訴訟事件が確定するまで命令が履行されない場合、Aが法人の対応に耐えられず、組合活動が継続できなくなるおそれが
あるとして、懲戒処分の取消し、減給及び賞与に関するバックペイの履行を求めて緊急命令を申し立てた事件である。
4 東京地裁は、中労委の申し立てを認容した。なお、同地裁は、本決定の日と同日、基本事件について法人の請求を棄却してい
る。 |
決定主文 |
1 被申立人は,被申立人を原告,国を被告とする当庁平成30年
(行ウ)第566号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決の確定に至るまで,申立人が中労委平成29年(不再)第23号事
件について発した命令によって維持するものとした,沖縄県労委平成28年(不)第1号事件について沖縄県労働委員会がした平
成29年3月9日付け命令の主文第1項及び第2項に従い,
(1)被申立人は,本件組合の組合員であるAに対して行った平成27年4月7日付け懲戒処分を取り消すとともに,同人に対
し,同懲戒処分によって減額された給与相当額を支払わなければならない。
(2)被申立人は,平成27年6月の上記Aに対する賞与について,被申立人の賞与の計算式により,掛率を1.1,支給率及び
査定率を100パーセントとして算出した額を,行事不参加の回数に応じた減額を行うことなく,同人に対して支払わなければな
らない。
2 申立費用は,補助参加によって生じたものを含め,被申立人の負担とする。 |
決定の要旨 |
1 一件記録によれば,中労委が本件初審命令を維持するものとした
本件命令は,その認定及び判断において正当であり,適法であると認められる。
2 一件記録によれば,現在,組合の組合員は,Aのみであるが,法人は,現在まで,本件命令が事実誤認及び不当な判断を含む
違法なものであるとして,本件初審命令の主文第1項及び第2項を履行しておらず,本件初審命令及び本件命令において不当労働
行為であるとされた平成27年4月7日付け懲戒処分(減給)及び同年6月の賞与不支給の後も,Aに対し,同年8月31日付け
懲戒処分(出勤停止3か月),同年9月の賃下げ,同年12月及び平成28年6月の賞与不支給,同年9月の賃下げ,平成29年
12月28日付け懲戒処分(減給)等を行い,これらの不当労働行為該当性について,中労委又は沖縄県労委において審理中であ
ることが認められる。これらの事情からうかがわれるAの現在の経済状況等によれば,本件命令の取消請求事件の判決の確定に至
るまで法人が本件初審命令の主文第1項及び第2項を履行しない状態が継続した場合,Aに相応の損害が生じる状況が更に継続す
ることになるのみならず,Aが組合の活動を躊躇したり,法人における就労を継続することが困難となったりして,組合の活動や
その存続自体が困難となるおそれも否定できないから,緊急命令を発する必要性があるというべきである。
法人は,緊急命令を発する必要性がない旨を主張するが,これまで2年以上にわたり,本件初審命令が事実誤認及び不当な判断
を含む違法なものであるとして,本件初審命令の主文第1項及び第2項を履行してこなかったものであり,今後,本件命令の取消
請求事件の判決の確定に至るまで,上記各項を履行するかは不明であるといわざるを得ない。さらに,これまで判示したところに
よれば,現在までに法人と組合との緊張関係が解消されたとか,Aが疲弊していないなどということもできず,その他,法人が
種々指摘する点を考慮しても,緊急命令を発する必要性を認めるのが相当である。 |
その他 |
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