労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁平成31年(行コ)第84号
文際学園再審査棄却命令取消請求控訴事件 
控訴人  学校法人X1(「法人」) 
被控訴人   国(処分行政庁 中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  Z1ユニオン、Z1ユニオンZ2支部(「組合」) 
判決年月日  令和元年8月8日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、法人が、その運営する専門学校において非常勤講師とし て勤務していた組合員を雇止めしたこと、専門学校の校舎正門前において組合らにより2回にわたり行われたビラの配布を妨害し たことが不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。
2 東京都労委は、法人によるビラ配布の妨害が不当労働行為であると認定した上で、組合らが行うビラの配布を妨げてはならな いこと、ビラ配布の妨害が不当労働行為であると認定された旨及び今後繰り返さない旨を記載した文書の交付とともに同一の内容 の文書の掲示等を命じ、その余の申立てを棄却したところ、法人及び組合はこれを不服として、それぞれ再審査を申し立てたが、 中労委は、いずれの再審査申立ても棄却した。
3 法人は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は法人の請求を棄却した。
4 法人は、これを不服として、東京高裁に控訴したところ、同高裁は控訴を棄却した。  
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 
判決の要旨  1 当裁判所も,法人の本件請求は理由がないと判断する。その理由 は,次のとおり補正し(注:補正部分(略)),次項に当審における法人の補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決の 「事実及び理由」第3に記載のとおりであるから,これを引用する。

2 当審における法人の補充主張について
(1) 正門前におけるビラ配布の危険性について
 本件各ビラ配布は,学校の非常勤講師である組合員らの勤務時間外に,学校の正門前の公道上で行われたものであり,特に配布 の方法や態様に不相当な点は見当たらず,ビラを受け取っても立ち止まる者はほとんどおらず,自動車を含めて道路の交通が大き く阻害されるなどの事態は生じなかったことなどの事実を総合すると,組合員らによる本件各ビラ配布の態様は,相当なものであ り,特に問題とすべき点は見当たらないこと,本件各ビラ配布全体の状況をみると,職員らは,車両が通過するときにも,特段の 注意の声がけ等を行っていないことの方が多いなど学生の安全確保が目的であったとの主張と整合しない行動であり,学生の安全 を確保する目的であるならば,学校関係者が組合員らから受け取ったビラを回収するなどする必要はないはずであり,これらの事 情を考慮すると,学生の安全確保が目的であったという法人の主張は採用することができない。
(2) B1校長の明示又は黙示の指示について
 第1回ビラ配布において,職員がB1校長との電話を終えた後,職員の呼びかけに応じ,その場にいた全職員がほぼ一斉に妨害 行為を開始したこと,第2回ビラ配布において,B1校長は職員らと共にビラ配布の現場に立ち会い,組合員らによるビラ配布を 妨げようと試みる職員らの行動を黙認していただけでなく,自らもビラを受け取った学校関係者からビラを回収しようとするよう な行動をしていたことなどを総合すると,第2回ビラ配布はもとより,第1回ビラ配布における職員らの行動も,職員ら各自の判 断で行ったものとは考え難く,B1校長による指示か少なくともその関与の下で行われたことが認められる。
(3) 職員らの行為が本件各ビラ配布へ与えた影響について
 職員らは,本件各ビラ配布のいずれにおいても,一斉に組合員らと歩行者との間に立ちふさがり,登校してくる学生らに向かっ て両手を広げてビラを受け取らずに登校を促すような動作を繰り返したり,組合員らが学生にビラを渡そうとすると受け取らない よう呼びかけるなどしたこと,第2回ビラ配布においては,これに加えて,職員らが組合員らのビラ配布場所の移動に合わせて移 動などし,組合員らの前に立ちふさがり,組合員らがビラを差し出すことができないことが度々生じたこと,ビラを受け取った学 校関係者からビラの回収を行おうとしたり,実際に回収を行ったこと,ビラ配布終了後,組合員らを追跡するような行動をとった ことが認められ,第1回ビラ配布と比較して,より積極的な態様の妨害行為がされたことが認められること,職員らのこれらの一 連の行為は,組合員らに対し,組合活動としてのビラ配布への参加に対する萎縮効果を及ぼすおそれが大きいものと認められ,ま た,職員を含む学校関係者らに対しても,本件各ビラ配布が違法な行為であるかのような印象を与え,ビラを受け取ることや組合 加入への萎縮効果を及ぼすおそれがあると認められる。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成25年(不)第61号 一部救済 平成27年12月15日
中労委平成28年(不再)第8・10号 棄却 平成30年2月21日
東京地裁平成30年(行ウ)第165号 棄却 平成31年2月28日
 
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